くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コカイン・ベア」「ルー、パリで生まれた猫」

「コカイン・ベア」

実話をネタにしてやりたい放題に作ったB級ホラーアクション的な一本。適当な展開とグロテスク名シーンの連続はさすがに目を背けるところもあるが、親子の愛情友達との友情という一本筋の通ったストーリー作りは、意外に中身のある仕上がりの映画でした。監督はエリザベス・バンクス

 

一機の飛行機が飛んでくる。中ではいかにもハイな男が踊りながら何やら荷物を機外に放り出し、最後に自分はパラシュートをつけて飛び降りようとするが、出口で頭を打って卒倒してしまう。下は国立公園だった。ハイキングに来た仲良しカップルがいちゃつきながら楽しんでいると彼方に熊を見つける。木に頭を打ちつけたりしている異常なクマを双眼鏡で観察していたが、突然目に前に現れ、女性は襲われて足を食いちぎられる。男は必死で逃げる。

 

麻薬の運び屋が飛行機でコカインを運んでいる途中で落下して死亡し、警察は投げ捨てたコカインの行方を追っていた。そんな頃、仕事を依頼していた麻薬王シドは孫の世話を押し付けられ御機嫌斜めな上に、コカインが紛失したことでキレまくっていた。息子のエディとその友人のダヴィードに国立公園にばら撒かれたコカイン回収の命令をする。たまたまエディ達の会話を聞いた刑事のボブは元締めのシドを捕まえるチャンスだと愛犬を同僚に預け公園へ向かう。

 

看護師で勤務先の医師と恋仲のサリは娘ディーディーと滝の絵を描きにいく約束を反故にして出ていってしまう。ディーディーは、ボーイフレンドのヘンリーを誘って公園へ行くが、途中、コカインの包みを発見、そこにコカインを食べた熊が現れ、必死で逃げる。公園管理局のレンジャーリズは恋人がやって来るのを楽しみに化粧をしていたが、やって来たのは恋人だけでなく、コカインを食べてハイになった熊も現れる。恋人は襲われ、近くにやって来ていたチンピラも次々と熊の餌食になる。

 

自宅に帰ったサリは娘が公園に出かけたことが心配で公園へ向かう。そこで、ハイな熊がディーディー達を襲い、ヘンリーは木の上に逃れ、ディーディーは森の奥に逃げたことを知り後を追う。こうして、サリ、ヘンリーら、さらにエディとダヴィード、公園レンジャーのリズなどが入り乱れて、ハイな熊とのドタバタ劇が展開する。首が飛んだり、足を食われたりはあるものの、あくまでコカインのせいで、悪意で襲っていない熊が恐怖というよりコミカルでもあります。

 

さらにエディ達を追ってシドも登場、程なくボブも到着して、あちこちで熊との格闘シーンが展開。その中で、エディ達と対峙したボブはシドの銃弾に倒れ、ダヴィードは指を吹き飛ばされる。熊が拾ったバッグを追ってシド達は公園の奥へ向かう。その頃、サリとヘンリーはディーディーが滝のそばの洞窟に隠れているのを発見。そこにはコカインの袋と小熊がいた。そこへ、シド達も追って来る。滝の裏側に逃げたサリ達はシドに脅されるが、しばらくして母熊が戻って来る。格闘の中、サリたちは滝壺へ飛び込み、その後エディ達も滝の中へ。シドはバッグを持ち帰ろうとしたところ熊に襲われ、とうとう死んでしまう。

 

全てが終わり、サリ達は自転車で帰路へ。エディはボブの飼い犬を引き取り息子の元へ向かう。チンピラで友達を皆殺された金髪青年はヒッチハイクで彼方へいく。手にはコカインの入った赤いバッグがあった。こうして映画は終わる。

 

物語は、一見思いつきの如くあちこちに飛んでは展開するのですが、友人同士や親子の心温まる物語が根底にあって、それがブレない脚本なので、雑な感じは受けない。熊の登場も無理がある訳ではなく、登場するべくして登場して来るので、なかなか面白い。もちろん傑作とかいう映画ではないけれど、B級とはいえ、芯の通った楽しい作品でした。

 

「ルー、パリで生まれた猫」

カメラが抜群に良くて、猫を捉えている時だけでなく、人間を写している時も、構図といいカメラアングルといい、背景とのマッチングにセンスの良さを窺わせる映画。子猫と少女のひとときの成長の物語という感じのシンプルな作品ですが、写真集を見ているような画面の連続が心地よい一本でした。シンプル監督はギョーム・メダチェフスキ。

 

屋根裏にたくさんの子猫が屯している場面から映画は幕を開けます。それをドアの隙間からのぞいている一人の少女クレム。やがて一匹の猫を手にして両親の所へ行く。父と母の間には溝ができているらしい空気が漂っていますが、クレムの希望を叶えて猫を飼うことになる。クレムは猫にルーという名前をつける。

 

ある時、クレムと両親は別荘に行くことになる。別荘へ行く途中、ルーは車酔いをしてしまったりする。別荘のそばにはマドレーヌという中年女性が住んでいて、廃棄されたゴミなどからオブジェを作るいわば隠匿生活をする芸術家のようである。犬のランボーを連れて森を歩き回る彼女をクレムは苦手だった。

 

ルーは別荘の森で真っ白な野良猫に惹かれる。ルーは何かにつけ森に一匹で出かけるようになり、心配なクレムはルーを探しに森へ行くが、別荘から帰る日、ルーが見つからないので一人森に行ったクレムは猪の子供を見つけ、親猪に追いかけられて、マドレーヌに助けられる。結局ルーは見つからず、マドレーヌに頼んでクレム達はパリに戻る。

 

間も無くしてクレムの両親は離婚、クレムは母の元で暮らすようになる。冬が来て、森ではルーは様々な自然の危険の中で生き続けていた。餌が乏しくなりマドレーヌの家のそばの鶏小屋に忍び込んだりするも餌を得ることはできなかった。たまたまルーを見かけたマドレーヌは、ルーが野生的になって、今までと違うことをクレムの母に連絡したりする。みみずくに襲われたりしながらも生き抜いて来たルーだが、心無いハイカー達が捨てた粗大ゴミの有刺鉄線に絡まって動けなくなってしまう。

 

たまたまマドレーヌが通りかかり、ルーを助けるが、獣医に見せるとかなり危ない状況だと言われる。それを聞いたクレムと母がやって来る。三日しても回復しなければ安楽死させた方がいいというマドレーヌの言葉を受け入れ、クレムはマドレーヌの小屋でルーの世話をすることになる。

 

そして三日目、動かないルーにクレムは涙を浮かべるが、ランボーの吠える声にルーを見るとなんとルーは回復し元気になっていた。さらに窓の外には白い恋人猫が来ていた。ルーは家を出たいという態度を見せ、クレムもマドレーヌに説得されて、ルーを送り出すことを決意する。ルーは白い猫と森へ向かいそれを見送るクレムの姿で映画は終わる。

 

平凡な少女と猫の映画かと思っていたけれど、終盤にかけて、どんどん大人の映画になっていく様が見事で、一見の値打ちのある美しい映像も相まって、素敵な一時を過ごせる作品でした。