くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「沈黙の艦隊」「BAD LANDS バッド・ランズ」

沈黙の艦隊

稚拙な仕上がりでがっかりするかと思ったけれど、原作がいいということもあるが、程よくまとめて、粗を最小限にした海洋エンターテイメントとして面白かった。まだ連載途中なので、どこで締めくくるかと思ったけれど、原作もテーマをちゃんと提示した上のエンディングは見事でした。監督は吉野耕平。

 

通常潜水艦やまなみが突然米軍の原潜に接触して海溝に沈む。艦長は海江田四郎だった。しかし、かつて彼の部下であり、その冷酷な判断で一人の同僚を見捨てた事を今も納得しない深町はこの事件に不信を抱き、調査を始める。そして海江田ら乗組員が全て脱出の後やまなみが沈んだという事実を知る。

 

その頃、日米で極秘裏に建造が進められていた原子力潜水艦シーバットが間も無く進水予定だった。米軍の要請で艦長に選ばれたのは海江田四郎だった。防衛省も最後まで首相官邸に報告しなかった今回の極秘作戦はついに日本政府を巻き込む。ところが、シーバットは、目的地の佐世保に向かわず、米軍第七艦隊の潜水艦を威嚇した上、日米の思惑から離脱してしまう。アメリカ第七艦隊は威信をかけてシーバットを追うが、核ミサイル搭載の可能性があるシーバットを迂闊に攻撃もできなかった。

 

日本政府は、海江田の行動の真意を把握するべく閣僚会議を始めるものの、日米関係も絡んできて結論は見えてこなかった。防衛省は深町にシーバット捕獲の要請を依頼する。深町の乗る通常潜水艦たつなみがシーバット捕獲へ出航する。防衛省は、シーバットを捕獲し核武装の第一段階にしようとしていた。

 

徐々にシーバットに迫って来る第七艦隊だが、海江田はマリファナ海溝へ移動して、第七艦隊の潜水艦を手玉に取るように操縦不能にしていく。やがてたつなみも到着するが、海江田は、シーバット一隻で独立国ヤマトの建国を宣言する。単身シーバットに乗り込んだ深町だが、海江田は、世界を一つの国家にするという理想を実現する為には、武力が必要であると解く。核の恐怖からお互いに攻撃ができない現在の状況こそが今の世界の縮図だと説明、反論する深町を一括する。

 

間も無く、第七艦隊は次々とシーバットを攻撃し始めるが、海江田の的確な判断で全て無に期してしまう。そして海江田は進路を北に向ける。深町がその真意を問うと、日本と軍事同盟を結ぶ為だと説明する。今の世界を一つにするためには日本が動く必要があると説く。こうして映画は終わる。

 

第七艦隊との知略を駆使した丁々発止の戦闘シーンは実に面白い。海江田の存在感もしっかりしていて、頼りない日本政府の描き方も程よく流し、アメリカ大統領の行動も、現実離れする事なく冷静に演出されている。CGを使った派手なエンタメ映画にせずに、あくまでドラマティックな展開を重視したのが功を奏した感です。素直に面白かったし、可能なら続編も見てみたい気がします。

 

「BAD LANDS バッド・ランズ」

めちゃくちゃに面白かった。痛快なピカレスクエンターテインメントの傑作。とにかく主人公が妙なピンチになって間延びする場面が少しもないのが一番いい。さらに脇役が次々と物語に生きて来る展開も爽快感満載。少々お話を込み入らせた感がないわけではないけれど、近ごろ出色の見事な娯楽映画でした。監督は原田眞人

 

カフェバッドランズに、一人の女ネリが佇んでいる。月曜日、彼女は大阪の特殊詐欺グループの一員で、この日、オレオレ詐欺の金の受け渡しの日だった。受け子の教授と落合い、ターゲットの女が金を下ろして来るのを確認して、受け渡し場所へ誘導する中、怪しい人物をチェックして、最後の判断をする役目が彼女だった。しかし、すんでのところで刑事らしい人物を見かけたネリは計画中止を合図して解散する。

 

彼女がついている元締めは高木という男で、実はネリの父親だった。しかし実父に性暴力を受け東京へ行き、胡屋という男の会社の秘書となるも、胡屋は彼女を性奴隷のように扱い暴力を振るった為逃亡し、大阪の高木のところに戻って来た。高木はネリに詐欺の仕事を教え、片腕になるまでに育てたが、ネリとネリの母は高木に売り飛ばされた過去があり、ネリの母は高木を恨んで自殺していた。

 

ネリには腹違いの弟矢代がいて、彼を高木の元に紹介、ネリと一緒に働くようになるが、矢代はネリを闇賭博の会場に誘う。いかにも怪しい風の賭場だったが、矢代は勝ちに勝っていく。そんな時、ネリに電話が入る。西成のドヤ街で、親しくしている曼荼羅というアル中の男が暴れているという。父親のように慕っていた男で、ネリは飛んで帰るが、ネリが帰ったあと矢代はどんどん負けが進んでいく。

 

闇賭博の元締めは矢代とその友達二人にある男の殺害を依頼していて、決行日を今夜だと告げられ急遽銃を持ってターゲットの判事の元へ向かう。しかし、事半ばで怪我をさせるだけにとどまり、友達と銃を持ったまま逃亡する。矢代は、ネリが高木にいいように使われていることが以前から不満で、銃を手にれたついでに高木の金を奪おうと画策、高木の会社へ向かう。

 

そんな頃、ネリはいつものように高木のところに来ていた。高木はいずれは自分の後継者にネリを考えていると打ち明けるが、そこへ矢代達が飛び込んでくる。高木は一旦金庫を開けたものの矢代と取っ組み合いになる。そこへネリが部屋に入って来る。矢代は高木の反撃で今にも刺されそうになっていた。矢代の助けを求める声にネリは高木をナイフで刺し殺す。矢代は、一緒に来た友人も殺し、ネリと二人で高木の死体を山に埋める。そして高木の金庫から預金通帳や実印、カード、証券会社の明細などを取り出す。総額三億近くあった。

 

カードの暗証番号が必要だったが、番号がわからない。その時、曼荼羅が七年前まで高木の金庫版として仕事をしていたのを思い出す。ネリは曼荼羅のところへ行き全てを話す。曼荼羅はネリの気持ちを察し、隠していた銃なども手渡す。そして、大金引き出しの手伝いをした。

 

そんな中、特殊詐欺を追っていた佐竹刑事らもネリの存在から周辺のメンバーへと辿り着きかけていた。高木は巨大組織をバックに詐欺を働いていたこともあり、一日連絡がないと仲間の一人新井ママが不審がって高木のところにやって来る。そしてネリの言い訳を見抜き手下にネリを責めさせるが、ネリは機転を効かせて反撃、見事優勢に立つ。

 

曼荼羅の助けで大金を手にしたネリは矢代ともども海外へ高跳びしようとするが、矢代が約束のカフェにやってこない。矢代は東京へ行き、胡屋を射殺し、警官との銃撃で射殺された。矢代はネリのことが好きだった。ネリは、闇賭場の元締めに大金を海外に持ち出す手助けをしてもらう。

 

矢代の死を知り、曼荼羅はネリを送った後命が尽きてしまう。佐竹刑事らの捜査もいよいよ高木に迫っていた。新井ママも逮捕され、高木の事務所に佐竹刑事らが踏み込んだが、ドヤ街で毎週月曜日に派手な姿で走る浮浪者に扮したネリは警察の包囲網を潜り抜け、見事街に飛び出して映画は終わる。

 

少々、雑なところもあるし、整理しきれていない脇役もないわけではないけれど、どんどん先に先に進むストーリーがそんな欠点を吹っ飛ばしてくれます。とにかく面白い、これが娯楽映画と言わんばかりの爽快そのものの作品でした。