くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナイトスイム「チャレンジャーズ」

「ナイトスイム」

ホラー映画の割にはおとなしい作りの作品で、ショッキングなホラー色を前に出すのか、謎解きの面白さを出すのか、あるいは家族の再生のドラマを前面にするのかという中心が見えづらく、結局、どれもこれもに手をつけたせいでキレのない展開になったように思います。プールの恐怖に昼のシーンを多用したのも、緊張感が緩んでよくなかったかもしれません。監督はブライス・マクガイア。

 

夜、ある邸宅の庭にある巨大なプール、小さなボートのおもちゃが突然浮かぶ場面から映画は幕を開ける。それを二階の部屋から見ていた一人の少女レベッカは、そのおもちゃをとるために夜のプールに降りてくる。そして、棒を伸ばして引き寄せようとするが上手くいかず、プールに落ちてしまう。なんとかもがいてプールサイドへ行き着く。プールサイドに母親の姿を見かけるが、よく見ると誰もいない。すると、突然プールの底から何かが迫ってきてレベッカを捕まえて引き摺り込んで場面が現代へ移る。

 

元有名な野球選手のレイは、怪我で一時リハビリのための部屋を探していた。たまたま通りかかったプールのある売り家を見つけたレイは、家族を説得してその家に住むようになる。レイの妻イブは、あちこち転居してきた生活に嫌気がさして、できればここで落ち着きたいと話す。息子のエリオットは情緒不安定で、友達もいず、野球チームに入っているものの地味な存在だった。ある日、コインを拾うゲームをしようと父親に声をかけるが、先にプールに追いやられ、エリオットが一人プールで泳いでいるとプールサイドの排水口から声が聞こえてきて、近づくと黒髪の何者かがエリオットを引っ張り込もうとする。しかし、なんとかエリオットは逃げる。

 

レイはここのプールに入るようになってから体の具合が急速に回復している実感があった。両親の留守の夜に恋人とプールに入っていた長女のイジーは、何者かがプールの底から現れたのを目撃し必死で逃げて助かる。翌朝、イジーはエリオットからプールの中の何者かを見たことを聞かされる。レイの提案でプールパーティを開き、近所の友人などを呼んでプールサイドで楽しく過ごすが、イブはこの家を紹介した女性から、過去の少女溺死事件を教えられる。そんな時、レイが、友人の子供と遊んでいて危うく溺れさせそうになる出来事が起こる。

 

イブは、過去にこの家に住んだレベッカの母の家を訪ね、そこでこのプールの謎を知る。かつて、泉がわいていたこの地を昔、プールにしたのだという。そして、何かの犠牲の見返りに家族に良いことが起こるのだと聞かされる。かつてレベッカが犠牲になったおかげで病弱だったレベッカの弟の体が回復して、今は立派な仕事をしているというのだ。

 

イブは恐怖を覚え、家を手放す事を決めて帰宅を急ぐが、レイは完全に異常になっていて、エリオットを犠牲にして自分が選手復帰するべく狂い始めていた。イジーが必死で抵抗する中、エリオットはプールの底に閉じ込められてしまう。駆けつけたイブがプールに飛び込みエリオットを助けるが、その途中でレベッカが現れイブを水上へ誘う。

 

プールサイドに出たイブ達の前に狂ったレイが襲いかかる。イジーがバットで応戦し、レイは正気に戻るが、プールの魔物は何かの犠牲を望んで迫ってくる。レイは自らプールへ入っていき犠牲になり、イブ、エリオット、イジーを助ける。引っ越しを決めたイブ達がプールを埋める工事を始めて映画は終わる。

 

とにかく、やりすぎなくらい地味なホラー映画で、刺激に慣れてしまったのかもしれないが、もうちょっとメリハリと緩急のある展開を見たかった気がします。

 

「チャレンジャーズ」

映像と音楽、時間軸を自由に操ってコラボレーションした上で映画作品として昇華させた相当に面白い映画だった。物語の奥の深さとかそういうものではなくて、上滑りに絵作りを感性だけでまとめ上げて行く映画で、結局、そういうことかと、ある意味ハッピーエンドなのがいい。こういう作りもあるものだと充実したひとときを楽しみました。監督はルカ・グァダニーノ

 

アトランタでのテニスの試合、二人のプレイヤーパトリックとアートのアップからタイトルの後試合会場へカメラが移って映画は始まる。カメラがネット上を観客席にズームインすると一人の女性タシが試合を見ている。彼女をじっと睨みつける二人のプレイヤー。そしてハイスピードでボールが飛び交うのをカメラが真正面に捉えて物語は二週間前に遡る。

 

全米オープンや名だたる試合で優勝してきたアートだが、このところスランプ気味で、先日もたわいない相手に負けて落胆していた。妻でコーチでもあるタシは、アトランタでのチャレンジャーズの試合に出て、沢山の試合をこなすのが今は一番だと提案する。そして時間は13年前に遡る。

 

ジュニアテニスで、ダブルスの人気プレイヤーだったアートとパトリックはこの日も見事な試合で勝利を掴んでいた。翌日にadidasのパーティに誘われていたが気乗りしていなかった。しかし、そのパーティに、今女子ジュニアで大人気のタシ・ダンカンも来るのを知り、出かけることにする。adidasのイメージスター選手でもあるタシは、すでにセレブの域の人気プレーヤーだった。アートらはなんとか彼女と親しくなろうと画策する。そして、パーティの後海岸で話す機会を得た上、夜、自分たちのホテルの部屋に誘う。

 

まさかくることはないと思っていたが、タシはアートとパトリックの部屋にやってくる。そして二人とキスした後、まるでアートとパトリックを手玉に取るかのように、明日の試合で勝った方に連絡先を教えると約束して去る。実はアートはパトリックに、祖母がテレビで見ているので試合に負けて欲しいと依頼していた。しかし、パトリックは反故にしてマジに試合を始める。

 

アートとタシは大学に進学してテニスを続けるが、パトリックはひと足先にプロになってツアーに出るようになる。パトリックはあれ依頼タシと付き合っていたが、女好きなパトリックはツアー先で浮気をしているのではないかとタシは気が気でなかった。久しぶりにタシとアートに会いに大学にやってきたパトリックだが、タシと大喧嘩してしまう。その翌日の試合でタシは足を負傷し、テニス生命をたたれることになる。パトリックが病院へ駆けつけたがタシはパトリックを追い返す。

 

アートはタシを支え続ける。アートはテニスの世界にはまって行くが、ある日、今やコーチの仕事についたタシがアートのところにやってくる。そんなタシに、アートはコーチについて欲しいと頼む。やがて二人は付き合うようになり、アートはタシのアドバイスでみるみるテニスプレイヤーとして成長していき、二人は婚約する。アートの試合についてホテルにいたタシのところにパトリックが現れる。今でもパトリックのことを忘れられないタシは、体を合わせてしまう。

 

アートとタシは結婚して、リリーという娘も生まれていた。タシがアトランタでのチャレンジャーズの試合を勧めたのは、かつての思い出でパトリックに会えるのではないかという無意識な望みもあった。そして、ホテルの金にも困っているパトリックはチャレンジャーズの試合にやってきたのだ。決勝戦まで勝ち進んだパトリックはアートと試合をすることになる。その前夜、もしアートが負けたら別れようとタシはアートにホテルで告げる。アートが寝てから、タシは、昼にパトリックに手渡された連絡先のメモでパトリックに連絡をする。

 

パトリックが横柄な態度でタシに接してくるのをタシはとうとう唾を吐きかけるが、結局パトリックの事が好きで、キスをし、車の中で抱き合い、決勝ではアートに負けて欲しいと頼む。ホテルに戻ったタシは、リリーのベッドで眠るアートを見る。そして試合、ポイントは互角で、パトリックのサーブ、かつて、パトリックがタシと寝た時はアートのサーブの癖を真似するという合図をここでも繰り返す。アートはパトリックのサーブを見過ごして、最終のタイブレークになる。

 

タイブレークの最後の試合、延々とラリーをし、ボレー戦をする。まるでハラハラと見つめるタシを嘲笑うかのように、そして、出会った頃の三人の気持ちを取り戻すかのような時間が延々と続いた末、上がったボールをアートがスマッシュした瞬間、アートの体はパトリックに被さって抱き合い、呆気にとられたタシが次の瞬間ガッツポーズをして映画は終わる。

 

テニスのボールが飛び交う様を真正面に構えたカメラが捉えたり、縦横無尽にボールに合わせたかのようなカメラワークを見せたり、会話の中でドラマチックな流れになるとテンポのいい曲が流れ始めたりと、あくまで人間ドラマとして描いているのではなく映像を操っているのだと言わんばかりの演出がとにかく面白い。ある意味コメディなのではないかとさえ思える映像の妙味を堪能できる一本だった。。