くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クワイエット・プレイス:DAY1」「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」

クワイエット・プレイス DAY1」

クワイエット・プレイス」というブランドがなかったら、何のことはない平凡そのもののモンスターパニック映画だった。前日譚という舞台設定ながら、無駄に大袈裟な映像の割にドラマは至って貧弱というのは何とも言えない。結局、エイリアンがなぜ音に敏感なのかなどなどは、いきなりの展開で公然と事実になるというのはちょっと雑すぎる気がしました。退屈はしないけど、その程度の映画だった。監督はマイケル・サルノスキ。

 

ホスピスで暮らすサムは、どうやら余命いくばくもないらしく、全身の激痛を抑えるために薬を体に張って愛猫フロドと暮らしている。この日、マンハッタン島へマリオネットのショーを見にいくイベントがあり、介護施設の職員の勧めで、イヤイヤながら参加した。彼女の本当の目的は、幼い頃ピアノ演奏家の父に連れて行ってもらったピザ店に最後のピザを食べにいくことだった。

 

ショーが終わり、ピザ店へ向かおうとしたサムは職員に突然帰ることになったと告げられる。パトカーが疾走し、ヘリコプターが飛び交う異様な景色が広がっていた。空から何やら化け物が降ってきて、叫んだ人間を次々と殺している風景が見え始める。サムは職員と地下に逃げ込むが、自動で作動した発電機を止めに行った職員が音を立ててしまい化け物に殺されサムはひとりぼっちになる。外ではハーレムから大勢の人たちが歩いていて、サムはそこに混じってハーレムにある自宅を目指すが、途中、騒ぎになり、雑踏に押しつぶされ気を失ってしまう。

 

気がつくと建物の中で、音を出さないように言われる。マンハッタン島の橋は全て破壊され、化け物が泳げないので船で脱出船が出るというアナウンスが聞こえていた。サムは、最後のピザを食べようと、港と反対に歩き始めるが、そこでエリックという気の弱い青年と出会う。二人でサムの実家に戻り、ピザ店にやって来るがすでに店は破壊されていた。エリックがサムの薬を探し出し、サムの父は演奏していた店に行き、宅配ピザを食べて最後の時間を過ごす。

 

二人は脱出船が来る港に来たが、港ではバケモノがうようよしていた。サムはフロドをエリックに預け、自分が囮になって、その間にエリックは港をを目指す。船は出航したばかりだったが、岸壁の様子から一時停止し、エリックを救出する。サムはエリックが脱出したことを確認して街に戻り、誰もいない通りで音楽プレイヤーのスピーカーを鳴らして映画は終わる。

 

何のことはない、ただのパニック映画だった。もうちょっと工夫があってもよかろうにという一本でした。

 

「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」

女性らしい繊細なエピソードを散りばめ紡いでいくとっても素敵な青春ストーリーでした。思春期の少女たちの、危うい初恋、初潮の日、髪の毛、口紅、憧れ、口づけ、さまざまなエピソードを決して無駄にしない丁寧な演出もドキドキするほどに切なくて、透明感が全編を覆っていきます。決して湿っぽくならない爽やかさも見事で、映画って、まだまだ表現方法が多彩にあるもんだなぁと感動してしまいました。ちょっとした秀作でした。監督はワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット。

 

ファミリーレストランでしょうか、一人の少女が食べ放題で二人前を頼んでいる。どうみても一人だけなので店員か怪訝な顔で注文を取るところから映画は幕を開ける。頼んでいたのは双子の姉妹のユーだった。しこたま食べてトイレに行き、待っていた姉のミーと入れ替わる。二人の違いは頬にあるホクロだけで、ある方がミーでない方がユーである。

 

映画館でも一枚のチケットを入れ替わりに使ったり、饅頭を食べ分けたり、アイスキャンディを二人で分けたりする。しかし家庭はそれほど裕福ではないようで、父が女性に貢いだらしく、母といつも夫婦喧嘩が絶えない。離婚するだろうなとミーとユーはいつも考えていた。ある日、試験が苦手なユーに代わってミーが替え玉で追試の会場に行くが鉛筆を忘れたことに気がつく。困っていると、一人のイケメンの青年が自分の鉛筆を折って分けてくれた。ミーは答案を見せてやってその青年を助ける。彼の名はマークと言った。

 

夏休み英語キャンプに行きたいとミーがいい出すが二人を行かせるほど余裕はないからと、ミーとユーは母の実家のおばあちゃんの家に泊まりで行くことになる。ユーがそこでピンという楽器の写真を見て習いたいと言い出すが、二人を習わせられないからユーだけが近所へ習いに行きミーはおばあちゃんの雑貨屋の手伝いのバイトをすることになる。ところがピンを習いに行った先でユーはマイクと会う。マイクはピンの師匠の手伝いに来ていた。学校は退学したのだという。マークはてっきり追試会場で会ったものだと話をするがユーは言い出せないままに話を合わせる。そして次第にユーはマイクに惹かれるようになる。

 

ある日、マークのバイクで送ってもらったユーは帰宅後初潮を迎える。マークにばかり夢中になるユーにミーは寂しさを感じ始める。そして、ユーとマークが遊ぶ時には自分も誘って欲しいと言う。そして、まずミーがユーと入れ替わってみようと言い出し、ミーがユーのふりをしてマークとボートに乗る。ところがボートが転覆し、駆けつけたユーを見たマークは二人が双子だと知る。そしてしばらくは三人で遊ぶようになるが、ユーはマークと二人きりの時間が欲しくなりミーを遠ざけるようになる。

 

次第に嫉妬か寂しさかわからないままになってくるミーは、マークに、気持ちが混乱しているなら一度デートしてみようと言い出す。マークもその申し出に応えるが、それをたまたまユーが聞いていた。そしてマークとの待ち合わせに出かける。ミーの髪型を真似て出かけたユーを見てマークはとうとう怒り出しその場を去ってしまう。時は1999年、ノストラダムスの大予言がブームになっていて2000年問題も起こっていた。流星雨がやってくる夜、三人は流星雨を見に行き、ミーは追試に行ったのは自分だったと告白してしまう。

 

ユーはマークに話をしたくて電話を取るが、たまたま母が父に電話をしている声を聞いてしまう。そして離婚後、どちらを引き取るかという父の声に、母はユーを父に預けると答えたのにショックを受ける。誰も彼も自分ではなくミーを選んでいると思ったユーはミーに手紙を残して一人深夜バスに乗る。

 

寂しさに暮れるミーの耳に、バスが事故にあったというニュースが飛び込んでくる。しかも犠牲者の中にユーの名前を見つけ、ミーは両親らに連絡がつかないまま、一人バス乗り場へ向かう。そして鏡に向かって涙ぐんでいると後ろの席にユーがいた。ユーがバスを待っている時に隣の女に水をもらいそれを飲んで寝てしまっていた。その女はユーを眠らせてカバンを盗んだのだった。駆けつけたマークも安堵する。

 

やがてミーとユーは仲直りし、その姿をマークが見て、手紙を託す。自分が結局邪魔者だったけれど、楽しかったという内容だった。夏休みが終わり、ミーとユーは両親の離婚を知り、ユーは父の元へ行くと言う。母が、ユーはしっかりものだから父の元に行って欲しいと思って言ったと聞いていたためだ。ユーとミーは海岸でカウントダウンを聞いていた。そして、いつでも会えるからと話し合って映画は終わる。

 

ピンの教室の悪ガキ少年のユーへの恋の歌を捧げる場面や、ミーにも捧げるシーン、マークが乗るバイクなどの小道具もとっても効果的に映画を盛り上げているし、とにかく全編、素朴な景色と物語が心地よくて素敵。いい映画だった。