くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「九十歳。何がめでたい」

「九十歳。何がめでたい」

脚本が悪いのか、今一つ盛り上がりにかける出来栄えなのはちょっと残念ですが、こういうほんのりほのぼのした作品というのは見ているだけで癒されるし、不思議なくらいに元気になるからおかしなものですね。これが映画の魔力なのかもしれません。監督は前田哲。

 

88歳の2年前に断筆宣言をした佐藤愛子は今や90歳、自宅でのんびりした日々を暮らしているが、娘の響子や孫の桃子はどこか悶々としている祖母の姿が少し心配だった。この日も新聞の人生相談で、夫のことが耐えられないのでどうしようかという記事に自分なりの辛辣なコメントを返していた。こうして、映画は始まる。

 

今どきのパワハラやセクハラなどに辟易としているかつてのモーレツ社員の吉川は、若手が佐藤愛子に新作エッセイを頼みに行ったものの、あっさり断られて素直に引き下がってきたことに愕然としてしまう。そんな吉川は人事部に呼び出され、パワハラまがいのことはやめるようにと責められ、閑職に追いやられてしまう。家に帰れば、妻も娘も出ていって離婚届だけが残されていた。佐藤愛子への取材を諦めるという編集部の方針に吉川は猛反発し、自ら佐藤愛子の家に乗り込む。

 

当然、最初はエッセイ執筆は断られるが、吉川は日参し、とうとう佐藤の心を動かす。歯に絹を着せない佐藤愛子のエッセイは大反響を呼び、やがて一冊のエッセイ集として出版されるとベストセラーとなる。エッセイを書き始めてから佐藤愛子の毎日も次第に活気を帯びてくる。吉川は娘のダンスの発表会に出かけて拍手し、ロビーで妻に謝罪したが、結局、やり直すことは能わず、一緒に観に来てくれた佐藤愛子と帰ることになる。そこへ、文化勲章受賞が決まった知らせが佐藤愛子に来る。

 

記者会見の場で佐藤愛子は、人生のこれからのきっかけをくれた編集者吉川への感謝を語り、独特の語りで記者たちを爆笑に包んで映画は終わっていく。

 

もう少し書き込んだ脚本ならもっと面白くなったかもしれないが、オープニングの演出や、エッセイ集を読みながら人々がさまざまな毎日を生きる姿は面白いのに、それ以上盛り上がらないし、吉川の同僚の今どき若者の社員の面白さも生かされず、吉川夫婦のドラマもあっさりと流してしまうあたりが少々雑で、せっかく草笛光子の身についた芸風が活かせていないのが実にもったいなかった。でも、ほのぼのと楽しめたからいいとしましょう。