くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「未来世紀ブラジル」「リスペクト」

未来世紀ブラジル

三十年ぶりくらいの再見。最初見た時同様にシュールな空気感に圧倒されていくが、初めて見た時よりも、映画の良さというか、クオリティが理解できた気がしました。徹底的に管理された情報社会の恐怖を独特のイメージで描いていく手腕はさすがです。監督はテリー・ギリアム

 

20世紀のどこかの国というテロップ、突然の爆発でテロが起こる。一人の男が何やら作業をしている。虫が室内を飛び回っていて、天井に止まったのを叩き潰すが、その虫が落ちてきて機械の印字をタトルからバトルに打ち変えてしまう。タトルという名は情報省が把握しているテロリストの名前だった。カットが変わると、突然天井に穴が空いて大勢の兵士が雪崩れ込み、一人の男バトルを逮捕して連行してしまう。それを見ていた階上の住人ジルは誤認逮捕だと訴えるがたらい回しにされてしまう。

 

母のコネで情報省に入ったサムは、夢の中で見る美女と瓜二つのジルを職場で見かけてしまう。サムはジルの身元を探ろうと、母のコネで昇進し、端末で彼女の身元を探り始める。そんなサムは、バトルが誤認逮捕である事実を知り、悪夢を見るようになる。巨大な鎧武者が襲いかかってきたり、金属の羽をつけて空を飛び回ったりと、テリー・ギリアムらしい映像が展開する。間も無く、獄中でバトルが死んだことがわかるが、どうやら隠蔽のために殺したようだ。しかも殺したのは同僚のジャックらしいとわかる。

 

そんな頃、サムの家のダクトが詰まるので修理を依頼すると非合法の修理屋タトルが現れる。サムはてっきりジルがテロリストだと勘違いし、何かにつけ彼女を逃がそうと奔走するが、かえって彼女を追い込んでしまう。そんな中でも次々と爆破事件が続く。サムの母は整形で若返り手術を繰り返し、次第に若々しくなってくる。そんな彼女のパーティに出かけたサムは、突然兵士に逮捕されテロリストとして収監される。そして、ジャックに拷問をされそうになるが、そこへ突然タトルたちが乱入しサムを助け出す。

 

サムはようやくジルとの恋が成就し車で走り去るが、実は目の前にジャックと上司のヘルプマンが覗き込んでいる。どうやらジャックの手術で、サムが幻覚を見ていたのだ。ゆっくりとカメラが引いて、巨大な空間に一人残されるサムの場面で映画は終わる。まるで、「時計じかけのオレンジ」のようなエンディングである。

 

次々と騒がしいほどに人々が出入りし入り乱れ、機関銃のような会話が連続するあたりは、テリー・ギリアムが言うようにフェリーニの「81/2」の如しで、全体が一つの映像表現としてまとまっている。名作という言葉で表現する作品というより、怪作という感じのSF作品でした。

 

「リスペクト」

これは良かった。普通の映画のように見えるのに、アレサ・フランクリンを演じたジェニファー・ハドソンが抜群に良くてどんどん彼女に引き込まれていくし、父親役のフォレスト・ウィテガーもいい味で締めています。エンドクレジットの晩年の本人のステージにも魅せられてしまいました。期待通りの一本でした。監督はリーズル・トミー。

 

1951年デトロイト、幼い頃のアレサがベッドで寝ていると牧師をしている父親がやってきて、歌うように促す。階下ではパーティが開かれていてそこに降りてきたアレサは、みんなの期待を背負って歌声を披露しまたベッドに戻る。招かれている客はアレサの歌声を教会で聴いていて誰もが認めていた。アレサの両親は別居していたが、アレサは母のことが大好きだった。しかしまもなくして母は急死する。言葉を発せなくなったアレサだが、父の友人の牧師に諭されまた歌い始める。

 

しかし、そんな彼女に一人の青年が近づき、間も無く彼女は幼くして妊娠する。やがて成人となったアレサは相変わらず教会でゴスペルソングを歌っていたが、彼女の才能を知る父はあちこちのレコード会社を周り、ニューヨークのコロンビアレコードとの契約にこじつける。しかし、なかなかヒットに恵まれなかった。

 

そんな頃、アレサは、遊び人のテッドと知り合う。かつて、父から出入り禁止と言われていた青年だったが、まじめにアレサを愛していて間もなく結婚。テッドが、マネージャーとなって、少し小さいがアレサを認めてくれるプロデューサーと組み、アラバマ州のスタジオで、無名のミュージシャンと組んで曲を発表する。アレサが自由にアレンジした曲はみるみるヒットし、アレサはツアーを繰り返し、どんどん有名になっていく。しかし、テッドとの確執が生まれとうとう離婚する。

 

それでもアレサの勢いは止まらず、アレサの体力が限界に近づきアレサは酒に溺れるようになる。どん底に落ちていったアレサだが、ある夜母が現れ、その姿を見てアレサは立ち直る。父の友人のジェームズ牧師の勧めもあり、教会でレコーディングすることを提案、プロデューサーの反対はあったが、その場面を記録映画に撮ることで実現となる。先日見たシドニー・ポラックが監督したドキュメンタリーである。そしてそこで歌う彼女の場面で映画は終わる。

 

とにかく、全編ジェニファー・ハドソンの歌声が素晴らしく、いつの間にかどんどん引き込まれて画面を見入ってしまいました。いい映画を見ました。