くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「異動辞令は音楽隊!」「ブレット・トレイン」「さかなのこ」

「異動辞令は音楽隊!」

よくあるゆるゆるの話なのですが、画面が映画になっているのと、細かいエピソードを丁寧に紡いでいく脚本の緻密さ、演技演出に手を抜いていないこだわりと役者の真摯な役作りで、とっても好感な映画に仕上がっていました。良質のいい映画でした。監督は内田英治

 

一人の老婦人がテレビを見ていると電話がかかる。現金の保管場所を聞いてくるといういかにもな電話のあと宅急便が来て、実はその宅急便は強盗集団で、老婦人はガムテープで口を塞がれる。最近この地域で起こっているアポ電強盗だった。こうして映画は始まる。

 

刑事課三十年のベテラン成瀬は相棒で後輩の坂本と容疑者につながる若者のもとに踏み込み、強引な捜査をする。そんな成瀬を疎ましく思う同僚や上司たち。ある時本部長に呼ばれた成瀬は、パワハラの訴えがあったからと音楽隊への異動を命令する。

 

成瀬が行ってみると、いかにもやる気のない楽隊メンバーたちが待っていた。最初は全く入り込む気はなかったが、ある夜、楽隊の春子と食事をとる機会があり、警察証を入れた上着を忘れる失態をしたことがきっかけで吹っ切れ、成瀬は任されたドラムを真剣に練習し始める。高校でバンドをしている娘にも音楽をきっかけに溝が埋まり始め、認知症の母との三人暮らしも安定してくる。

 

そんな頃、いつも音楽隊の演奏を見にきていた老婦人がアポ電強盗に襲われ命を失う事件が起こる。坂本は成瀬が目星をつけていた青年のところへ行きそこでついに証拠を掴み、ミュージックフェスティバルに強盗リーダーを呼び出すことに成功。音楽隊にはピエロになって協力してもらい、刑事たちが張り込むなか、成瀬が指し示した犯人を発見、音楽隊メンバーの活躍もあり取り押さえる。

 

定期演奏会を最後に音楽隊を解散すると言っていた本部長だが、知事がミュージックフェスティバルでの活躍を見て、結局、音楽隊存続となる。

 

普通の映画といえばそれまでですが、細かいエピソードを丁寧に押さえて演出されているので、映画が深みを持っているし、よくあるゆるゆるの話しながら作品が適当に見えない。大傑作とはいえないまでも、ちょっとした秀作だったように思います。

 

「ブレット・トレイン」

はちゃめちゃな大作映画という感じ。面白いのだが、ストーリーの整理ができていないので、登場人物が混乱してしまい、せっかくの伊坂幸太郎の世界が微妙にずれてしまった。それでも、ジャパンテイストをあちこちに散りばめて、一生懸命奇妙な不条理劇を作ろうという熱意が見られて楽しかった。監督はデビッド・リーチ。

 

一人の少年が病院のベッドにいて、父の木村が顔を覗き込んでいる。そこへ木村の父という一人の老人エルダーが現れる。孫を屋上から突き落とした犯人を殺せと命ずる。

 

そんな頃、運び屋のレディバグは、新幹線で京都へある品物を運んで欲しいとマリアという女性から依頼される。実はカーバーという男に頼むはずがいなかったため、代理として、駅のロッカーから道具を手にして新幹線に乗り込む。列車の名前が“ひかり”ではなく“ゆかり”という乗りの良さで映画は始まる。

 

列車に乗ったレディバグ難なくブリーフケースを見つけて、それを持ち出す。そのブリーフケースをホワイト・デスに届けるように言われたみかんとレモンの二人の殺し屋は、ホワイト・デスの息子を見つけて目的地を目指すのだが、ホワイト・デスの息子は何者かに殺されてしまう。それを隠しながら目的地を目指す。

 

レディバグは、予定通りの駅で降りようとしたのだが、乗り込んできた一人の男に襲われ、列車に戻される。列車内では、レモンとみかん、さらに木村、プリンスという女殺し屋も交えてごちゃごちゃの入れ替わりの殺し合いが始まる。物語はそれぞれの殺し合いがタイミングと運命で次々と死んだり、助かったりを繰り返していく。そして、木村の父、エルダーも乗り込んでくる。実はエルダーはとあるヤクザ組織の幹部だったが、ホワイト・デスが組織に乗り込んで親分を殺し組織を乗っ取った。その時にエルダーの妻も死んでしまい、その恨みがあったのだ。やがて列車は最終駅の京都についてしまう。

 

京都で待っていたのはホワイト・デスとその子分たち。そこで、エルダーらと銃撃戦を繰り広げ、レモンが列車を発射させて、まだ未完成の線路へ突入していく。陸橋からレモンはホワイト・デスの子分とやりあって落ち、そして、列車は大脱線、ホワイト・デスらも死んでしまい、プリンスが再度現れるが、飛び込んできた車に轢かれ、レディバグは、仲介屋マリアに迎えられて映画は終わる。エンドクレジットで、陸橋から落ちたレモンは車でレディバグらのところにやってきて、最後にプリンスを引き殺した車はレモンの車というオチで映画は終わる。

 

全く、ぶったまげの映画だった。チープな特撮と、大混戦のストーリー展開をバイタリティだけで持っていくという勢いのみの映画ですが、伊坂幸太郎らしい交錯した物語の味は出ていたと思います。こういうエンタメもありです。

 

「さかなのこ」

監督が沖田修一なので、もうちょっと一工夫ある映画かと思っていましたが、いかにも普通すぎる上に、ありきたりのシーンとセリフに呆気に取られる映画でした。とても二時間ごえできる作品ではなかったと思います。脚本が悪いのか原作自体が弱いのかはともかく、主演ののんを始めキャスト全員に覇気がない作品だったのは残念。

 

ベッドで眠る主人公ミー坊が、目を覚まし、魚のスウェットスーツに身を包んで出かけるところから映画は始まる。船上で撮影が始まるが、船の下を泳ぐ魚を見ていて海に落ちてしまう。物語は幼い日のミー坊、閉館のメロディに中、水族館で魚を見つめるミー坊。そんな娘を暖かく見守る母。学校ではミー坊新聞などを作るほど魚が大好きなミー坊は、友達のヒヨ、モモコらと日々過ごしていたが、近所に魚好きのギョギョおじさんと知り合い、さらに魚にはまっていく。

 

高校生になったミー坊は相変わらずで、なぜか不良グループの総長らとも仲良くなる。学校を卒業し、仕事を探そうと点々とするが、根っからの魚好きもあってうまくいかず、なんとかペットショップに勤めるようになる。ある時、モモコとその娘が転がり込んでくる。ミー坊は三人で暮らせるように頑張ろうとするが気を遣ったモモコらはミー坊の家を出て行ってしまう。ショックを受け、お酒を飲んで、どこかの店のシャッターに魚の絵を書いたところを通りかかった総長に見られる。そして連れて行ってもらったのは、高校時代、総長らのグループと喧嘩をした相手籾山がこれから始めようとする寿司屋だった。

 

ミー坊は籾山に、店の壁に絵を描くように頼まれ、その絵から、雑誌の表紙を描くようになる。そんな頃、小さな局のテレビ番組を任されたヒヨと再会、ミー坊はテレビ出演を依頼される。ミー坊は子供の頃ギョギョおじさんがかぶっていたハコフグの帽子を被りテレビに出る。モモコは子供と水族館に行き、ミー坊は子供たちとはしゃいで映画は終わる。

 

本当になんの変哲もない上に、演出が実に雑で、折角ののんら役者陣を全く生かしていないし、周りのエキストラへの演技付も雑さが見られるのはさすがにもったいない。沖田修一監督どうしたのかという出来栄えだった。