くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「天国は待ってくれる」「青髭八人目の妻」

kurawan2015-12-23

「天使は待ってくれる」
今では、この手のパターンの映画はあまり作られなくなったけれど、やっぱりこれが映画の一つの楽しさじゃないかと思います。エルンスト・ルビッチ監督の晩年の傑作の一本。一人の男の女遍歴の半生を、笑いと心温まる物語で紡いだヒューマンドラマです。

主人公ヘンリーが地獄の入口閻魔大王の元にやってくるところから映画が始まります。そして、閻魔大王に、自分の人生を振り返りながら、地獄に落ちるのが当然という説明を始めるのです。

若き日、妻となる女性との恋、子供の誕生から、女遍歴を重ねながらも、妻との25年の結婚生活、やがて息子も成人し、妻の死、自らの老い、そして、死。波乱万丈でもなく、ある意味、誰もがたどってもおかしくない、人生の物語が、軽妙なセリフの応酬と、ほのぼのした笑の中で描かれていく。

例によって、一瞬も途切れることのない、見事な会話劇のうまさは絶品で、しかも、テクニカラーの色彩も美しい。

そして、最後の最後、ヘンリーの半生を聞き終えた閻魔大王は、地獄ではなく、天国へ行くようにとエレベーターに乗せる。もちろん、天国にすぐにはいけないかもしれないが、少なくとも、関係した女性を幸せにし、あなたも女性に幸せにしてもらった。別室で待つ間に、顔見知りの人々に会うことも楽しいと説明するラストは、とにかく胸があったかくなってしまいます。

何気ないドラマなのに、ここまで深みを帯びさせる演出の面白さ。何気ないエピソードの積み重ねが生み出す絶妙の話芸。これが、エルンスト・ルビッチのうまさというか魅力でしょうね。良い映画でした。


青髭八人目の妻」
とにかく、洒落たセリフとストーリー展開を楽しむというラブコメディ。エルンスト・ルビッチらしい一本で、脚本にビリー・ワイルダーが参加している。

銀行家で大富豪のブランドンがリヴィエラに旅行にやってきて、パジャマを買うために店に入ってきたところから映画が始まる。パジャマの上着だけしかいらないと店員にだだをこねる場面から、ニコラが入って、下は私が買うというくだりまでの軽快な導入部は見事。

実はニコラは没落貴族の娘で、お金がない。

ブランドンは一目でニコラに恋をし、猛烈なアタックで結婚式へ。ところがそこで、ブランドンは過去に七人の妻があったことを知る。しかも、全てに莫大な慰謝料を払っていると聞いて、ニコラの愛は冷め、割り切りで離婚して、慰謝料をもらうために結婚する。

物語は、ことあるごとにブランドンに嫌われようとするニコラの行動とそれに翻弄されるブランドンのあたふたした姿がメインになる。

ヤラセの浮気をでっち上げ、ブランドンが嫌いなネギをほうばってキスしてみたりと、コミカルな行動が機関銃のようなセリフと重なって次々展開する。

やがて、離婚が成立、しかし、ニコラを失い、事業も傾いたブランドンは精神病院へ。お金目当てのつもりが、ブランドンを愛していたニコラは病院まで彼に会いに行き、再び抱き合ってハッピーエンドエンディング。

若干、支離滅裂な構成に見えなくもないのですが、駆け抜けるようなストーリー展開の面白さは、やはり、エルンスト・ルビッチの映画だと思う。軽いタッチのラブコメディとして、楽しめる一本でした。