くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「神経衰弱ぎりぎりの女たち」「三度目の、正直」

「神経衰弱ぎりぎりの女たち」

女遊びの好きな一人の男イバンを巡っての女たちのドタバタ劇で、ペドロ・アルモドバル監督らしい赤と青の色彩を多用した画面作りと、ウィットの効いたセリフの数々、遊び心満載のストーリー展開が楽しい映画でした。

 

女好きのイバンが次々と女に電話している場面をワンシーンで歩く姿で描いて映画は幕を開ける。極端なクローズアップの口元で巧みに女をくどいていく彼の姿から、テレビの女優をしているペパの場面へ。彼女は、留守電だけで恋人イバンが行方不明になってショックを受け、必死で連絡を取ろうとするが連絡がつかない。

 

ペパが悪戦苦闘してイバンと連絡を取ろうとする場面から、テロリストと付き合って大変なことになっている友人が現れたり、手放そうとしているペパの部屋を借りにきた若者カルロスはイバンの息子だったり、さらにカリロスのフィアンセもやって来たかと思うと、とうとうイバンの妻まで現れる。

 

ペパは、感が閃き、イバンは別の女とストックホルムへ行くのではないかと突き止める。やってきた妻は拳銃を持って、空港へ向かう。このままではいけないとペパも後を追い、空港で妻の行動を阻止、イバンに感謝されるが、もうイバンに興味はないとイバンを送り出して自宅に帰る。

 

自宅では、ペパが作った、睡眠薬入りにジュースを飲んだカルロスたちや、テロリストの通報でやってきた刑事たちが眠っている。先に目が覚めたカルロスのフィアンセに、ペパはこの部屋を手放すのはやめたと言って二人でくつろいでいるカットでエンディング。

 

次々と現れるイバンの周囲の女たち、そして、その周りで起こるドタバタがなんともテンポよくて楽しい。しかも、青と赤を効果的に使った絵作りも美しく、センスの良い映像と演出のリズムを楽しめる作品でした。

 

「三度目の、正直」

しんどかった。決して駄作だとは言いませんが、棒読みでセリフを語らせるという演出は意図したものかもしれませんが、登場人物の心理が見えてこない。淡々と描かれる物語のドラマがドラマに見えてこないのは、生きた人間として見えないということでしょうか。監督は野原位、濱口竜介作品の脚本を書いていた人です。

 

一人の少女蘭が留学するということで、ランを育てている春と夫らが送別会を開いている。しかし、蘭は一向に感情を見せず、周りの大人は妙にギスギスしてくる。春は結局、家を出ていくことになり実家に帰ってくる。春の弟毅には、精神障害のある妻美香子がいるが、毅はラップ音楽で細々生活をしている。毅にラップシーンがなんとも酷い。

 

春は、ある時、河原で記憶を無くした青年を拾う。自宅に連れ帰り、とりあえずしばらく世話をすることになる。春はその青年に、かつて流産した子供につけるはずだった名前の生人と名づける。そんな春に、元夫は冷たく接するし、周囲の人物も、少し異常だと言う。

 

物語は二つの家族を描きながら、それぞれの心の浮き沈みを淡々と描いていく。ある時、生人の前に、父親だという男が現れ、一緒に暮らそうというが、生人は拒否する。そして春の元もさった生人は、浜辺に立って海を見つめるアップで映画は終わる。

 

とにかく、しんどい映画だった。登場人物の中で男どもは自分勝手でクソ野郎ばっかりだし、女どもはどこか狂った人間ばかりで、どの人物にも感情移入できず、物語も迫ってくる何かも見えず、ただラストを待ってしまった。作品としてはそれなりのクオリティはあるものの、どうにも入り込めない映画でした。