くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」「生活の設計」

kurawan2015-12-03

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲
非常に奇抜で独創的な映画にみえるが、想像していたほどのオリジナリティはなかったような気がします。監督はコーネル・ムントルッツァです。

映画は一人の少女リリが、自転車に乗って、橋を渡る場面に始まる。スローモーション映像と背後に聞こえるトランペットの音 止まっているバスは、乗り捨てられたようにドアが開いたままという異常な景色。街に入っても人がいない。リリが路地から抜け出ると、たくさんの犬が飛び出してきて後を追いかけてくる。こうして映画は始まる。この場面は、いわゆる終盤の映像である。

画面が変わると、リリが、愛犬のハーゲンと戯れている。間もなく、彼女は父の元に預けられる。しかし、事あるごとに犬を嫌う父、夜も一緒に寝させてもらえないリリは、閉じ込められたハーゲンの傍で、トランペットを吹く。その音におとなしく眠るハーゲン。

ある日、巧みに、父に車に乗せられたリリ、ハーゲンを置き去りに走り出す車。やがてハーゲンは捨てられたと悟ってしまう。リリは、犬の収容所などを探すが見つからない。一方でハーゲンは野良犬となり、野良犬たちの溜まり場に入り、やがて、浮浪者に捕まり、犬闘家の男に売られてしまう。そこで犬闘の訓練をされたハーゲンは異常なほどに人間に敵意を持っていく。

そして、闘犬場から逃げ出したハーゲンは、収容所に一旦捕まるも、職員を殺して犬たちを解放。かつて自分たちを虐げた人間を殺して回る。

その犬の集団にハーゲンがいると感じたリリは、あえてその集団の中に身を置き、夜、リリの前にハーゲンが佇む。リリはトランペットを吹くと、ハーゲンは伏せをし、他の犬もそれに従う。それを見たリリもうつ伏せになり、対峙。父も傍に伏せてエンディング。

明らかに犬の集団は、牙をむく反乱者たちの象徴であり、最後は結局人間の前、つまり支配者に屈した形になるエンディングである。

もっと奇抜でファンタジックな映画かと思われたが、意外に、俗っぽさが表に出る作品で、オープニングの映像が際立っているものの、みるみる普通の物語に展開するのは、ちょっと期待はずれ。確かに、面白い一面もある映画ですが、大絶賛とまではいかなかった。

冒頭の屠殺場の場面が妙にグロテスクだったり、犬闘というエピソードも、ちょっと俗っぽい。しかし、最後までみおわれるほどストーリー展開はしっかりできていると思う。ただ、リリの父が瞬時に心変わりする心理描写は弱かった気がしました。


「生活の設計」
エルンスト・ルビッチ監督の恋愛コメディ。典型的なアメリカンコメディという感じで、無駄のないセリフの応酬が光る作品でした。

列車の中のシーンに始まり、売れない芸術家トムとジョージがジルダという一人の女性と知り合う。スケッチから始まる軽妙な導入部から、SEXなしの同棲生活、さらには、結婚したジルダの家庭に乗り込んで、トムとジョージの三人で、走り去るラストまで、妙なジメジメ感を排除して突っ走っていく。

これがエルンスト・ルビッチ風コメディと言われればこれはこれで楽しい。

例によって、映像のテンポは実にリズミカルだし、入れ替わり立ち替わりのカメラ演出もセリフの掛け合いも楽しい。

あとは、この手のコメディを受け入れるかどうかという好みの問題でしょうか。しかし、こうして見てみると、ビリー・ワイルダー的な色合いに共通するものがあるなと思ってしまいます。楽しい映画でした。