くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リラの門」(4Kデジタルリマスター版)「恋の片道切符」「昭和残俠伝」

「リラの門」

なるほど、名作。しんみりとした人情喜劇の風ですが、辛辣なラストと、切なくなるような展開がとっても素敵。さらに、画面の構図が見事で、街並みの建物や路地と人の配置など本当に美しい。監督はルネ・クレール

 


主人公のジュジュと芸術家と呼ばれるギター弾きの姿からさりげなく映画は始まる。ジュジュは近くのバーの娘マリアに恋している。

 


そんな時、近所で凶悪犯が逃げてきたという事件が起こる。そして、芸術家の家に犯人ピエールが逃げ込んでくる。

 


ジュジュたちも、コソ泥のようなことをして暮らしている手前、その男を地下室に匿うことになる。こうして物語は始まる。

 


地下室の犯人が体操したり、ラジオを聞いたり好き勝手をし、最初こそコソコソしていたが、次第に大胆に外を出歩くようになる。

 


そんな時、ジュジュたちの住まいを怪しんだマリアはジュジュたちが留守の時に勝手に入り犯人と遭遇。ところがピエールはマリアにキスをする。マリアはすっかりピエールの虜になっていく。

 


やがて、パスポートが手に入り、犯人はこの家を出て高飛びすることになり、マリアを誘うが、マリアの父は娘を外出させない。

 


ジュジュはマリアに頼まれてピエールとの待ち合わせ場所にマリアが頼まれていた金を届けるが、なんとピエールはマリアを利用するだけだったのを知る。

 


そしてもみ合ううちにピエールを殺したジュジュは金を取り戻し家に戻る。芸術家と相談したジュジュは金をマリアに返すことにし、詳しいことは言わないことに決める。

 


映画はここで夜の街角を捉えて終わる。このエンディングも素晴らしいです。

 


名作と呼ばれるだけの完成度の高い映画ですが、それより、心に染みるような感動を味わいました。

 


恋の片道切符

まあ、二本立ての一本という感じの音楽映画。可もなく不可もない一本でした。監督は篠田正浩

 


サックス奏者の主人公白井が職探ししている場面に始まり、芸能事務所に誘われる。そんな時、1人の女性と知り合い、さらに事務所の売れっ子歌手との三角関係やら、事務所の裏取引らや友達のやくざ者の拳銃やらが絡んでのラストシーン。

 


それぞれの人物の心の物語は上手く描けていないので、どの行動もとってつけたように見えます。

 


まあ、気楽に見る娯楽映画でした。

 


「昭和残俠伝」

ご存知高倉健出世作にして、唐獅子牡丹で有名な任侠映画。シリーズ全て見てますが40年ぶりくらいに再見。監督は佐伯清

 


今さらなので物語は書きませんが、戦後すぐの闇市場の場面に始まり、市場の利権争いで、振興ヤクザと任侠を重んじる主人公らヤクザとの義理と人情の物語が展開。

 


クライマックスの殴り込みシーンは流石にワクワクします。

映画感想「東京喰種 トーキョーグール【S】」「ワイルドライフ」

「東京喰種トーキョーグール【S】」

なんともダラダラグダグダした映画だった。アクションのキレもないし、おそらく原作にある主人公たちの苦悩などのドラマもないし、目を背けるようなグロシーンが所々にあるだけのテンポの悪さはなんだという映画だった。監督は川崎拓也と平牧和彦。

 

半グールになった金木は隠れ家的なカフェ「あんていく」でバイトをしながら暮らしている。究極のグールの美食家月山が金木に目をつけ、食さんと狙ってくるのが今回の物語だが、月山のごたくシーンがとにかくやたらしつこい。

 

カフェの董香の苦悩なども交えて描かれるものの、月山の独り舞台的なダラダラ感で最後まで描かれる話はなんともだるい。

 

クライマックスの月山と金木の対決かと思われたが董香とのアクションがクライマックスで、肝心の主人公は脇にやられたままで映画が終わるのはあっけにとられてしまった。

 

原作の奥の深さが映像化できていないのだろうと思いますが、さすがに脚本の弱さでしょうね。最低の映画でした。

 

ワイルドライフ

良質なヒューマンドラマという感じの秀作。地味な展開ながら、少年ジョーの視線で描かれるストーリー展開は見事なものです。監督はポール・ダノ

 

ゴルフ教室の講師をする父ジェリーと優しい母ジャネットと暮らすジョー。学校でも優等生で、家でも両親のまとめ役のように存在している。ある時、父が突然解雇される。ジャネットもジョーも戸惑うが、父はなかなか再就職もままならない。

 

ジャネットは外の働きに出ることにし、ジョーも写真館でアルバイトを始める。そんな時、ジェリーは山火事の消火作業をする職を得て、遠方へ行くことになる。しかも低賃金ということですジャネットも大反対するが、雪の降る頃に戻るからと強引に出ていくジェリー。

 

二人きりになったジャネットとジョーだが、母の行動に不審なことが見え始める。水泳教室で教えていた生徒の一人で、妻と離婚し車の販売会社をする男だった。ジャネットはジェリーがいなくなり、心細さとさみしさからどうしようもなくなって行った。

 

そんな母を軽蔑するようになるジョー。そして、出ていくことを決心し、バス停で待っていると雪が降ってくる。慌てて家に戻ると、間も無くして父が帰ってくる。しかし、父はジャネットの異変を知り、男の家に火をつけようとする。

 

そしてジャネットは一人暮らしすることを話し、ジェリーはジョーと新しい家に引っ越す。しばらくして、ジャネットがジョーたちを訪ねてくる。ジョーは母の帰り際に自分の写真館で三人で写真を撮ろうと提案。シャッターが落ちたところで映画は終わる。

 

結局、ジャネットも仕方なかったのかもしれない。ジェリーもそんな彼女を許したのかもしれない。ジョーも両親の愛情の絆はまだ残ってると信じているのかもしれない。ラストシーンの三人が並ぶカットがそんな心に迫る何かを語っている気がしました。いい映画でした。

映画感想「田園の守り人たち」「こはく」「いつかギラギラする日」

「田園の守り人たち」

非常にクオリティの高い映画なのですが、いかんせん地味です。第一次大戦期のフランスの片田舎の農場が舞台というので、話が派手にならないのですが、映像がとにかく美しい。静かながら、戦地に男たちを送り出し、残された女たちの必死の姿が切々と伝わってきます。監督はグザブエ・ボーボア。

 

戦場のワンカットから農場で一人鋤をすいている年老いた女性オルタンスのカットに移る。横長の画面に広がる農場のカットがまず美しい。

 

家の男たちが戦地に取られ、女だけで農地を守っているが、限界があり、フランシーヌという一人の女を雇う。どんなこともこなす彼女の姿にオルタンスも信頼を置いていく。

 

そんな時、一時帰郷で戦地にいた次男のジョルジュが帰ってくる。やがてフランシーヌとジョルジュは親しくなり、やがて体を合わせるまでになる。しかし、素性のわからないフランシーヌとジョルジュの仲を離すべく、オルタンスは、ジョルジュが戦地に再びいく日に、アメリカ兵との疑われるような場面を設定して、ジョルジュとの仲を裂く。

 

突然解雇されたフランシーヌは、とにかく炭焼きをしている女のところに再就職するが、間も無くして妊娠していることに気がつく。父親はジョルジュとわかっていたので、戦地に手紙を送るも返ってくるばかり。オルタンスを通じて知らせてほしいと送っても、オルタンスはフランシーヌからの手紙を焼いてしまう。

 

やがて、戦争も終わる。フランシーヌは出産し、洗礼を受ける。その帰り、オルタンスはフランシーヌを見かける。立派な馬車に乗ったフランシーヌの姿を見てショックを受けるオルタンス。

 

間も無くして戦地からジョルジュが帰ってくるが、長男のコンスタンが死に、農場のこれからを考える中で家族同士にささやかな諍いさえ生まれてくる。

 

カットが変わると、クラブで歌っているフランシーヌ。そこへジョルジュがやってくる。フランシーヌのアップで映画は終わる。

 

戦争という歴史の流れの中で、男たちは戦地へ行き、女たちは田畑を守る。そこで生まれた運命のいたずらのような一瞬を見事な映像で描いた作品で、確かに地味ですが必見の値打ちのある映画でした。

 

「こはく」

なんとも脚本の良くない安っぽいだらけた映画だった。もうちょっと見れるかと思っていたが、どのシーンも適当な上に、カットばかりが目立つ演出に参りました。章一を演じたアキラ100パーセントが最低の演技に参った。監督は横尾初喜

 

ガラス工房を父から引き継いだ主人公亮太のカットから映画が始まる。母と暮らす無職の兄章一から、子供の頃出て行った父を見かけた亜粗探しに行こうと誘われ、二人は父を見かけた辺りを聞いて回ったり、関係があったらしい女性を探したりするも見つからず、間も無くして母が亡くなる。

 

その通夜の席に、父をよく知るかつての事務員が来ていたことから、父の住まいがわかり二人で会いに行って映画は終わる。

 

で、章一のキャラクターが実に適当で、はっきりしないので、何を語りたいのかわからない映画に仕上がった感じです。だらだらと暗転を繰り返す脚本がとにかく安っぽい。どうにもなりませんでした。

 

いつかギラギラする日

これは面白い!痛快というか豪快というか、これがアクション映画やと大阪弁で叫んでしまいたくなるような映画でした。映像で見せるというのはこういうのをいうのですね。最高でした。監督は深作欣二

 

とにかく、めんどくさい物語や人間ドラマなんて吹っ飛ばして、いきなり銀行強盗シーンの連続から、いかにも胡散臭い仕事に首を突っ込み、裏切りから銃撃戦、カーチェイスと続いたら後はもう突っ走っていきます。そして痛快なアクションシーンがこれでもかと展開していきます。

 

神崎らおっさんら三人の銀行強盗シーンから角町と麻衣に裏切られ、仲間を殺された神崎が二人を執拗に追い詰めていく。そこにサラ金ヤクザが追いかけて、警察も参戦してのカーチェイスに銃撃戦。

 

角町と麻衣は死に、神崎と愛人の美里がバスに乗っていると銀行の看板が目について、また始めるかのような余韻でエンディング。もう最高やね。めちゃくちゃ面白かった。

映画感想「ブルース・ブラザース」「マーウィン」

ブルース・ブラザース

40年ぶりくらいの再見。とにかくド派手にぶっ壊す、踊りまくる、歌いまくる。賑やか過ぎるほどに慌ただしい映画ですが、どれもが本物の迫力にエンタメの真髄を感じさせられます。監督はジョン・ランディス

 

ジェイクが刑務所を出所してくる場面から始まり、相棒のエルウッドがオークションで手に入れたパトカーで迎えにくる。二人は育った孤児院を訪ね、税金の支払いに困っている窮状を知る。

 

そんな時たまたま教会へ出かけた二人は神の啓示を受けバンドを再び組むことにしメンバーを集め始める。そこへ、警察が彼らを捕まえようとくるわ、ネオナチの集団が追っかけてくるわの大騒動が展開。

 

クライマックスはとにかく派手なカーチェイスとぶっ壊しに絡めてラストステージの名曲の数々が最高。

 

ラストは刑務所に入った二人が歌いまくり映画は終わりますが、今となっては作れないのではと思うくらいのてんこ盛りの面白さが凝縮。有名なミュージシャンも所狭しと登場し、豪華この上ないです。楽しい名作ですね。

 

「マーウィン」

監督はロバート・ゼメキスですが、かつてのキレがなくなった感じです。人形劇のシーンと実写のシーンを取り混ぜて、不思議なファンタジック色を出しているのですが、どこかダラダラした感じがして、主人公の姿がリアルに見えてこなかった。

 

戦場を飛ぶ飛行機のシーンから幕を開け、マーウィンへようこそというカットからアメリカ軍人のホーギー大佐が一人の女性を乗せているシーンへ。どうやらこれは人形劇の世界のように見えてくる。

 

主人公マークは五人の男に暴行を受けた際に過去の記憶をなくし、その時のトラウマで引きこもって、リハビリを兼ねて人形を組み合わせた仮想世界マーウィンの写真を撮っていた。

 

そんな彼の家の向かいにニコルという女性が引っ越してきて、マークは密かに心が揺れ始める。という展開ですが、このニコルもマークもその人物背景がはっきり見えないし、ニコルにつきまとうカートという元警官も途中で消えてしまうし、なんとも人物描写が曖昧。

 

人形の世界の物語に謎の魔女が出てくるが、この意味ありげなキャラクターも結局わかりづらいし、クライマックスで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンのようなタイムマシンに乗って未来へ飛んでいくし、どこまで遊びたいのか中途半端です。

 

結局、やっと自立し始めて法廷に出廷するのがクライマックスになるのですが、マークが立ち直る過程なのでしょうが、人形劇シーンに力が入りすぎた感じです。

 

映画感想「トイ・ストーリー4」「天気の子」

トイ・ストーリー4」

ディズニーを見るのはただ単純に楽しいから。今回も素直に楽しめました。監督はジョシュ・クーリー。

 

主人公ウッディが彼の新しい持ち主ボニーが作ったスプーンのおもちゃを助ける冒険。スプーンのおもちゃフォーキーは自分はゴミだと信じていて何かにつけゴミ箱に入ろうとするのをウッディたちが食い止める。一方で7年前に別れたおもちゃのボーとある移動遊園地のそばのアンティークショップで再会したウッディは彼女とともに、外で生きるおもちゃたちの様々な人生に遭遇していく。

 

これまでの、持ち主の成長とおもちゃの切ない話ではなく、おもちゃ同士の物語に焦点が移っているのはある意味、ネタが切れてきた感がないわけではないけれど、いろんなキャラクターのおもちゃが織りなす楽しいお話は、やっぱりディズニーと思います。

 

「天気の子」

監督は新海誠なので見に行った。透明感のある絵作りはこの人の特徴ですが、それを生かした雨と天気の描写は美しい。ただ、ストーリーテリングの甘さ、キャラクターの描き方が非常に薄いのがちょっと残念。「君の名は」も話題性で持ち上げられたもののアニメとしては普通の上くらいの作品と思ったが、今回は並の作品という感じでした。

 

田舎から東京に出てきた高校生の帆高、慣れない東京で次第に居場所をなくしてきた頃、陽菜という少女と出会う。彼女は18歳ということで、特技として、天気を晴れにする力があるという。そんな不思議な晴れ女と知り合った帆高は、半信半疑にサイトを立ち上げ、晴れにすることを仕事にし始める。一方、帆高は次第に陽菜に心が揺れるようになっていく。

 

次々と天気に変えていく陽菜だが、実は天気に変えることができる女性は人柱として、狂った気象を正常に戻す役割があることがわかる。そして大雨が降り続く東京で陽菜は消えて空に登る。

 

帆高は陽菜を助けるため、陽菜が晴れ女になるきっかけになった廃ビルの屋上の神社にいきそこから点に登り雛を助け出す。しかし帆高は田舎に連れ戻される。

 

そして3年後、再び東京に戻った帆高は陽菜と再会、ハッピーエンド。シンプルな話ですが、帆高、陽菜それぞれのキャラクターの背景の描写が弱く、薄っぺらく見えてしまうために物語も上滑りのファンタジーで止まってしまいました。「君の名は」は、まだ物語が荒唐無稽に展開するのでもったのですが、今回は、それほどのインパクトのある話でもないので、薄い仕上がりになった感じですね。凡作まではいかないけれど彼だけ話題作を出した後だけに、ちょっとものたりません。

映画感想「チャイルド・プレイ」(2019年版)「ポラロイド」「ザ・テンプターズ 涙のあとに微笑みを」

チャイルド・プレイ」(2019年版)

オリジナル版の面白さといってもほとんど覚えていないのですが、今回は完全にハイテクになってしまった部分が不気味な怖さがない。ショッキングシーンもそれほど斬新な感じもないし、とにかく人形が可愛くないので、最初から不気味。監督はラース・クレブバーグ。

 

カスランという巨大IT企業が作ったAI人形のおもちゃバディが大人気というところから映画は始まる。ベトナムの工場で、上司に厳しく言われた作業員が恨みに思って、作っている人形の制限を解除。やがてある子供の元に行くが返品され、たまたま手に入れたのがアンディの母親。

 

アンディはバディのおもちゃを最初は可愛がるが、次第にその不気味さがわかってくる。自らチャッキーと呼ぶあたりの無理やり感はともかく、最新テクノロジーで動き出すおもちゃが、どうも不気味さを感じられなくて、顔つきも最初からおっさん顔で怖いので、そのまま不気味。

 

最後は、機械的に壊されてエンディング。やはりホラーはロマンが欲しいですね。見えない何かで動く不気味さというのがこういうホラーの醍醐味なのですが、やはりオリジナル版がベストという感じです。

 

「ポラロイド」

連鎖して殺されるというのはどこか「リング」に似ていなくもないですが、なかなか面白かったです。ただ怖さの点では普通かなという感じです。スプラッターを控えアイデアで見せていく演出は楽しいです。でもホラーなのでもう一工夫欲しかった。監督はラース・クレブバーグ。

 

一人の少女とその友達が屋根裏で少女の母の遺品を見ている。中にポラロイドカメラがあり、彼氏に見せるために友達に写真を撮ってもらう。友達が帰ったあと、何者かがこの少女を襲う。タイトル。

 

場所が変わり、とある骨董店、主人公バードがバイトをしている。そこへ友人がガレージセールで手に入れたとアンティークなポラロイドカメラを持ってくる。カメラ好きのバードは一眼で気に入りその青年を写真の撮り帰るが、直後、その青年は何かに殺される。

 

さらに、バードの女友達も不審な事故死をし、直前にあのポラロイドカメラで写真を撮り背後に奇妙な影があったことに気がつく。しかしすでにバードの友達四人もこのカメラで写真を撮っていた。

 

バードたちはこのカメラの持ち主を探し始める。そして、かつて娘をクラスメートに殺され、そのクラスメートを殺した殺人鬼の父の所有であることを突き止める。そしてその家に行くが、男は逮捕の時に死んでいて、復讐のために狙った四人のうち三人まで殺し、四人目を殺す直前で死んだことを知る。

 

なんと、その四人目とは、この町の保安官で、殺人鬼は復讐を遂げるためにポラロイドカメラで殺戮をしていたのだ。しかし、真相は、実は本当のサイコは父親だったことが保安官の言葉で知るが、すでにポラロイドカメラの殺戮は止まらない。

 

そして追い詰められたバードは、すんでのところで襲ってくる化け物を写真に収め、逆襲、燃やすことに成功する。

 

最後にカメラを海に投げ捨てて映画は終わるが、このあともうワンシーンあるのかと思ったがなかった。化け物が影のように迫ってくる前半は面白いのですが、その造形がはっきりしてくる後半は、ちょっと物足りません。

 

まあ、ショックシーンも見せ方も普通のホラーで、映りこんだ影が、後から撮った写真へ移っていくという「リング」のような連鎖の展開をもう少しサスペンスフルに使えばもっと面白くなったような気がします。

 

「ザ・テンプターズ涙のあとに微笑みを」

ザ・テンプターズ唯一の主演映画。気恥ずかしくなるような物語と展開の歌謡映画ですが、時代を感じさせるノスタルジーがたまりません。監督は内川清一郎。

 

これというお話はないし、前後の脈絡もないです。ただ、ザ・テンプターズの曲が次々と登場するだけの映画です。でも、楽しいですね。微笑ましいです。

映画感想「ニューヨーク 最高の訳あり物件」「さらば愛しきアウトロー」「誘拐報道」

「ニューヨーク最高の訳あり物件」

抜群の映像センスで見せる人間喜劇の秀作。一見とりとめもない話ながら、どこかにたどり着くものもなく笑いを繰り返し、ラストシーンを迎える。登場人物の存在意味が今ひとつ明確に見えてこないのは意図的なのか欠点なのかわかりませんが、面白い作品でした。監督はマルガレーテ・フォン・トロッタ

 

テンポ良い音楽とイラストのタイトルバックが終わると主人公ジェイドのアップ。夫のニックから離婚の話を聞いて戸惑う姿から物語が始まる。ジェイドは元モデルで今はニックの出資でファッション会社を設立している。

 

そんなジェイドの家に元妻のマリアがやってくる。こうして元妻と元々妻の二人の奇妙な同居生活がはじまる。今だにニックに未練のあるジェイドはニックの心を取り戻すべく努力する。ニックが心を移したのは若いモデルで、ジェイドはそのモデルに一言啖呵を切ったりする。

 

ジェイドは、事業の資金を得るため、現在の家を売ろうとするが、マリアは応じない。そんな時マリアの娘アントーニアが息子を連れてやってくる。最初はマリアと一緒だったが、彼女が植物学者で香水に興味があるのを知り、ジェイドは自分の事業に引き込み、オリジナルの香水を完成させる。

 

しかし、ブランドとして大きくしようというジェイドの言葉にアントーニアはそのつもりはないと息子をつれて去っていく。やがてジェイドのファッションショーの日が近づいてくる。そんなおり、ニックがモデルと別れたという噂を聞く。

 

やがて、ニックは二人の前に現れ、ジェイドに復縁を迫るが、かつての彼女から一歩成長したジェイドは、マリアと二人一緒ならと条件を出す。

 

やがてファッションショーが開幕。そして大成功。客席にはアントーニアや息子ニックの姿があった。こうして映画は終わる。

 

とにかく、オープニングタイトルから映像センスが抜群に美しいししゃれている。大きな家の空間のカットの美しさ、アングルの巧みさと、二人の女性のファッションも素敵。ただ、マリアがどういう立ち位置なのかが最後まで見えなかった。

 

とってもクオリティは高いのですが、もうちょっと物足りないところも見えないわけではなかったのは残念。

 

「さらば愛しきアウトロー

老人になったロバート・レッドフォードシシー・スペイセクが演技すればそれだけで人生の薀蓄を感じ取ってしまうのですが、普通の映画とはいえ、何か感じさせられる大人の物語でした。監督はデビッド・ロウリー。

 

一人の老人タッカーが銀行に入っていき、さりげなく金を奪って出てくるところから映画は始まる。フォレスト・タッカーは、紳士的に銀行強盗を楽しむ毎日を送っている。仲間の二人もすでに老人である。この日、一人で仕事を終え逃亡する中、車の故障で立ち往生しているジュエルという老婦人と出会う。彼女は一人で馬を飼育していた。

 

なぜか意気投合し、レストランんで食事の後電話番号を交換する。そして、タッカーは、一方で銀行強盗をしながら、ジュエルと会うようになる。物語はこの展開を淡々と描いていく。

 

ここに一人40歳を迎えた刑事ジョンがいる。これまで普通に仕事をこなし、それなりの年齢になり、これからどう生きるか考えたりもしていたが、ある銀行強盗の事件を担当することになり、それが、以前から起こっている事件と似ていることに気がつく。それこそタッカーが若き日から繰り返してきた事件だった。

 

一連の事件の関連を突き止めたことでジョンは有名になるがまもなく事件はFBIの担当に変わる。しかし、ジョンとタッカーには不思議な絆が生まれていた。

 

そしてとうとう、タッカーは逮捕され、これまで繰り返してきたように脱獄を考えていたがジュエルに諭され刑期満期まで務め、ジュエルの家に住むことになる。しかし、タッカーは再び強盗を始めるというテロップで映画は終わる。

 

とにかく、ロバート・レッドフォードシシー・スペイセクの老練のいでたちが素敵な映画です。自分たちの青春を思い起こすような映画でした。

 

「誘拐報道」

非常に密度の濃いサスペンス、いや人間ドラマの傑作。2時間以上あるのに全く緊張感が緩むことがない。見事な作品です。監督は伊藤俊也

 

小学校で古屋夫婦の娘が体育をしている。彼女にちょっかいを出す男の子は三田村夫婦の息子。どうやらこの男の子はこの女の子が好きらしい。誰もが経験のあるシーンから映画は幕を開ける。この女の子も男の子に好意を持つ。そんなカットの後、この少年が誘拐される。

 

報道管制が敷かれ、警察の捜査も始まる。映画はこの後、犯人の古屋数男と三田村夫婦との駆け引きに警察の捜査、新聞社の情報収集の模様がひたすら描かれていく。

 

報道陣の映像をひたすら捉え、やがて犯人古屋数男が車のトランクに少年を乗せて連れまわす方へ視点が移る。なかなか取引がうまくいかず、一方子供への愛情は全くないわけではないので扱いに困り始める。

 

二進も三進もいかなくなり、とうとう諦めたところへ通りかかったパトカーに止められ逮捕される。そして、古屋の妻芳江が娘を連れて田舎に旅立ち、報道陣も解散して散り散りになって映画は終わる。

 

どこにも悪は存在せず、それぞれの必死の思いで行動する姿を描写していく映像が素晴らしい。下手をするとテレビのサスペンスレベルになるところを映画に仕上げた見事な演出に脱帽する一本でした。