くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」「卒業」(4Kリマスター版)「赤軍−PFLP世界戦争宣言」

「工作黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」

なかなか見ごたえのある政治サスペンスでした。実話を基にしているとはいえ、ここまで南北朝鮮の物語を描けるのはやはり韓国映画でないと無理だと思います。久しぶりに本物を見た感じです。監督はユン・ジョンピン。

 

時は1990年代、核開発を急速に進める北朝鮮に対し、韓国はその実態の証拠を手に入れるべく工作員を派遣することを計画。安全企画局のチェ室長はパク少佐を派遣することにし、まずパクの身元素性を全て消し去るところから始める。そしてその存在がほぼ消えたのを確認し、パクは北へ事業家として潜入、北で宣伝フィルムを取るべく政府高官へ接近を図っていく。

 

そして、側近に近いリ所長と会うところまで行き、宣伝フィルムについての交渉から、ついに金正日に面談し了承を得る。金正日のそっくりさんまで出てくるのには笑ったが、キレものとして描いているのはある意味、韓国側の視点でもあるのだろう。

 

そして、宣伝フィルムの撮影にこぎつけたが、韓国本国では大統領選が近づいていて、キム・テジュンが優勢となっていた。しかし、もしキム・テジュンが大統領になれば、安全企画局は解散になる可能性がある。それは、キム・テジュンもまた北朝鮮同様共産主義ゆえである。

 

安全企画局のチェ室長の上層部は、保全のため、敵国としての北朝鮮を残すため、一見、大統領選妨害のためと偽って、金正日との裏取引を画策するため、パクを通じて密書を届けさせる。当然、事業家として信じているリ室長らはパクを疑い始める。

 

しかし、南北首脳の裏取引をパクは盗聴し、巨額の金の動きも察知、さらに、明らかに北朝鮮を韓国側が利用しているだけと見たパクはリ所長と賭けに出る。それは韓国が要求している北朝鮮の武力挑発をやめさせるため金正日に直談判することだった。

 

そして、パクらの言い分を理解した金正日は武力挑発を中止する。そんななか、キム・テジュンが当選。チェ室長らは裏取引隠蔽のため、パクの素性を明らかのするためわざと情報を流す。事前に知ったリ所長は、南北の将来のためパクを逃す。当然、リ所長にも危険が迫っていた。

 

そして5年が経つ。無事韓国に戻ったパクは広告会社で仕事をしている。今回、南北の女優が合同で宣伝フィルムを取ることになり、イベントに来ていた。そこへ、無事な姿でリ所長も現れる。そして二人は無言の挨拶をする。

 

テロップが出て、パクのその後、南北会談についてが流れ、映画は終わる。

パクとリ所長との男と男のドラマにお互いの愛国心の物語が絡み、政治的な駆け引きで部下を使い捨てていく上層部の姿も浮き彫りにしていく。非常に重層に作り込まれた骨太な映画でした。

 

「卒業」(4Kデジタルリマスター版)

やはり名作。全体が一つの映像としてテンポよくまとまっているのは全く見事です。映画史に残る名作とはこういうものだと言わんばかりで、ラストシーンは涙が出てしまいました。監督はマイク・ニコルズ

 

主人公ベンが大学を卒業し、実家に戻ってくる場面から映画は始まる。そして卒業祝賀パーティの後、父の共同経営者の妻ロビンソン夫人に車で送るようにせがまれそのまま誘惑される。

 

大人の女の魅力に、ベンはどんどんのめり込んでいく。カットを途切れさせず、次々とシーンが変わっていく映像演出がうまいし、何かにつけてマイペースでことを運ぶ大人たちの描写も実に楽しい。

 

やがて、共同経営者の娘エレインが大学の休暇で帰ってくる。高校時代からの友人のベンだが、密かに心を寄せている。両親に言われ無理やりデートに誘うが、エレインに悲しい思いをさせ泣かせてしまう。それをきっかけにエレインへの思いが高ぶるベン。

 

一方、ロビンソン夫人は嫉妬からあらぬことをエレインに話しベンとの仲を裂こうとする。そしてやがてエレインは大学に戻るが、居ても立っても居られないベンは大学まで追いかける。しかし、エレインの心は揺れていた。

 

そんな時、とうとう、エレインの父にまでロビンソン夫人とベンの関係がバレてしまい、完全に引き離された上に、エレインは現在付き合っている青年と結婚することとなる。ベンは必死で式場を探し、有名な教会での花嫁略奪シーンへと流れていく。

 

とにかく映像のテンポが抜群に良いし、サイモンとガーファンクルの曲に乗せたストーリー演出も見事。全く途切れないままにオープニングからラストまで一気に走り抜ける。これが完成品といわんばかりの傑作でした。本当に良かった。

 

赤軍PFLP世界戦争宣言」

足立正生若松孝二カンヌ映画祭の帰りにパレスチナに逗留し、赤軍派PFLPと共同しアラブゲリラの様子を描いたドキュメンタリー。

 

正直なところ、面白かった。何を語っているのかよく理解できないし、かなり偏った考え方なのはわかるが、映像として見たときにちゃんとまとまっている。だから、ラストが見えるという感じでした。

映画感想「三味線とオートバイ」「女学生ゲリラ」「団地妻昼下りの情事」

「三味線とオートバイ」

丁寧に作られたストーリーで、隙も見られない作品ですが、ちょっと古さは否めません。でも桑野みゆきは好きなので楽しめました。監督は篠田正浩

 

初子と恋人の房雄がオートバイを飛ばしているシーンから映画は始まる。調子に乗って事故を起こし担ぎ込まれた病院で、医師の畔柳と出会う。彼は母とよ枝の20年前の恋人だった。

 

畔柳ととよ枝は親しくなり、そんな二人を心のどこかで拒否する初子。物語は親子の物語、過去の恋愛、今の恋などを絡めて展開していく。

 

実は初子の本当の父は畔柳だったのだ。やがて、初子親子に溝を作っていると感じた畔柳は九州へ赴任するが間も無くして交通事故で死んでしまう。

 

とよ枝は初子に本当のことを話す。そして、ひと回り成長した初子は房雄とまたオートバイに乗って走る。房雄は初子にプロポーズして映画は終わる。まあ、普通の作品ですが、当時の世相をちゃんと反映している作りはしっかりしている一本でした。

 

「女学生ゲリラ」

映画ファンとしては見ておくべき一本だろうと見ましたが、なるほど一見の価値はありました。一見、自主映画の延長のような作りになっていますが、全体に一つにまとまっているし、とにかくバイタリティ溢れる熱気に包まれているのがいい。こういうのがいまの若い映画制作者にかけているのかもしれません。監督は足立正生

 

富士の裾野の御殿場、二人の男子高校生がうだうだ言っているところへ三人の女子高生がやってくる。彼女たちは学校に反旗を翻そうとしているらしく、男子学生も加わり、卒業証書を奪うことを計画。

 

さらに自衛隊の服も手に入れ、山奥へ立てこもる。あとは、なぜか女学生はほとんど半裸で、乳房丸出しやし、なぜかやたらSEXするし、気の狂った自衛隊員が紛れ込んでくるしと混沌とした展開。

 

ただ、その場限りの演技と台詞回しながら、作り手の熱気がそのまま伝わってくる。カメラアングルもワーキングも決して素人技ではない。そこが、何といっても、これが一本の映画たるべき存在を残せるものなのだと思います。

 

結局、学校側は無視した形で、なんの反応もなく、仕方なく彼らは元の場所に降りてきて映画は終わる。背後に壮大にそびえる富士山のカットがなかなか象徴的です。まあ、見て損のない映画といえばそうんな感じでした。

 

「団地妻昼下がの情事」

数々の名作が生まれた日活ロマンポルノの第一作目。まあ、普通のお話ですが、記念すべき一作目という価値は十分あります。監督は西村昭五郎

 

夫とのSEXシーンから映画が幕を開ける。夫とのSEXに不満な主人公に、近くの団地の女が接近してくる。そしてたまたま高校時代の幼馴染と過ちを犯したところを写真に撮られ、そのままコールガールの組織に引き込まれる。

 

そして、SEXに溺れていく主人公に、たまたま会社の接待で女を世話した夫と遭遇、幼馴染と逃避行することになった主人公は車の中でSEXしながら崖下に落ちてエンディング。

 

今となっては濡場もソフトに見えるものの、当時としては驚愕の一本だったのだろう。これもまた映画史の一ページという感じの映画でした。

「アルキメデスの大戦」「パラダイス・ネクスト」「サマーフィーリング」

アルキメデスの大戦」

それほど期待していなかったが、なかなか面白かった。脚本の構成がいいのとやはり菅田将暉がうまい。監督は山崎貴

 

開巻、大和が沈められるスペクタクルな場面から映画は始まる。そして9年前、新型艦建造に、空母建造を推進する山本五十六らと巨大戦艦建造を目指す嶋田らの攻防が続いていた。時代は航空機の戦いに変わっているという山本らの空母建造費提案に、巨大にもかかわらず安価な建造費を出してきた嶋田らに、山本らは対抗する手段を模索する。

 

そんな時、料亭で豪遊する櫂と出会う。彼は帝大数学科の天才と言われていたが、家庭教師で入っていた尾崎造船でのトラブルで中退させられていた。しかし天才的な数学力に目をつけた山本らは、最終決定会議までに嶋田らの見積もりの不正を暴くために櫂を引き入れる。

 

図面も資料も全くない中、櫂らは戦艦の本当の見積もりを算出していく。物語は櫂らが様々な手で戦艦の全容を把握していくまでがサスペンスフルに展開。薄っぺらくなりがちなストーリー展開をなかなか重厚に描いたのは見事。

 

そして、嶋田らの妨害にもめげず、最後の最後で、実際の建造費を決定会議で披露し、山本らを有利にするのだが、戦艦の設計見積もりをした平山が、公にする数字を小さくして外国を欺くためであると大逆転をする。しかし、さらに櫂は戦艦の構造上の欠陥を数式で暴露するに至り、平山は設計を取り下げ、その場を去って去る。全て山本らの思惑に進んだかに見えたのだが。

 

そして9ヶ月後、平山は自分の設計工場に櫂を呼ぶ。そして、二十分の一の戦艦の模型を見せ、これを作ることが敗戦間違いない日本を滅亡から救う手段だと説明する。

時は真珠湾攻撃の2年後、巨大戦艦大和に立つ山本長官の姿があった。

 

ラストの二転三転がもう少し鮮やかであれば傑作になりそうだったが、なかなか物語の奥の深い作り込みが見応えのある映画でした。まあ、山本長官役の舘ひろしが、見た目より貫禄がないのが残念。やはり山本長官は三船敏郎やね。

 

「パラダイス・ネクスト」

よくわからない。物語をシュールにしているのはわかるが、ストーリーは作者の頭の中にあるだけで、外に伝えるように出力されていない感じです。監督は半野喜弘

 

台湾のある食堂。島という男が食事をしているがそこへ牧野と名乗る男が勝手に向かいに座り話しかける。やがて二人は紹介されていた部屋に行くが、そこには変な親子が先に住んでいる。仕方なく他を探す。

 

その途中、シャオエンという女性と知り合う。なぜかこの女性はかつての島の恋人に瓜二つらしく、その恋人は死んだらしい描写がある。そして、その女性を通じて牧野も絡んでくる。

 

三人は遊ぶようになり、ある時三人でドライブに行くと、シャオエンは殺されてしまう。その遺体を小舟に乗せ、牧野もその船に乗り、海に流されていく。

 

突然、シャオエンを殺した変な男が車の中に現れたり、島に恨みのあるらしいかつての恋人の父親らしい声もあったりとどれもが中途半端な描写で出てくるので、結局、物語が繋がらない。わざとこんなブツ切れにしたのかと思うような演出に参ってしまう。という感じの映画でした。

 

「サマーフィーリング」

最愛の恋人を亡くした一人の青年の立ち直りまでを描いただけのシンプルな物語なのに、抜群の映像と音楽センスの良さに最後まで引き込まれてしまう素敵な映画でした。監督はミカエル・アース。

 

朝のベッドで全裸の男女が寝ている。このカットと構図がまず美しい。女性サーシャは一人先に起き、恋人のロレンスに触れた後服を着て仕事場のアートセンターに行く。そこで仕事をこなし、退社して、芝生敷かれた公園を歩いていて突然倒れる。

 

病院、どうやらサーシャは亡くなったようで、失意に落ち込むロレンスの姿、友達らのシーンが続く。そして五日後のベルリン。サーシャのいなくなった部屋で一人目覚めるロレンスの姿。

 

サーシャの妹のゾエが、落ち込んだロレンスに声をかけてきたり、両親のいるパリに誘ったりする。一年後のパリ、さらに一年後のニューヨークへとロレンスの姿を捉えていく展開が実にリズムよく、背後にかかる曲も何気なくハイテンポになっていく構成も素晴らしい。

 

ゾエの両親が持つパリの湖畔の家の壮大なほどの美しさがストーリーの転換点となり、パリからニューヨークへ移ることで、カメラに捉えられる景色に賑やかさが加わっていく。まさに映像センスの良さというほかありません。

 

そしてニューヨークで新しい恋人に出会うロレンスは、その女性と一夜を共にして映画は終わります。本当にシンプルな物語なのにこれほど純粋に美しく描かれると、下手なラブストーリーは見ていられなくなりますね。素敵な映画でした。本当に素敵な映画でした。

映画感想「リラの門」(4Kデジタルリマスター版)「恋の片道切符」「昭和残俠伝」

「リラの門」

なるほど、名作。しんみりとした人情喜劇の風ですが、辛辣なラストと、切なくなるような展開がとっても素敵。さらに、画面の構図が見事で、街並みの建物や路地と人の配置など本当に美しい。監督はルネ・クレール

 


主人公のジュジュと芸術家と呼ばれるギター弾きの姿からさりげなく映画は始まる。ジュジュは近くのバーの娘マリアに恋している。

 


そんな時、近所で凶悪犯が逃げてきたという事件が起こる。そして、芸術家の家に犯人ピエールが逃げ込んでくる。

 


ジュジュたちも、コソ泥のようなことをして暮らしている手前、その男を地下室に匿うことになる。こうして物語は始まる。

 


地下室の犯人が体操したり、ラジオを聞いたり好き勝手をし、最初こそコソコソしていたが、次第に大胆に外を出歩くようになる。

 


そんな時、ジュジュたちの住まいを怪しんだマリアはジュジュたちが留守の時に勝手に入り犯人と遭遇。ところがピエールはマリアにキスをする。マリアはすっかりピエールの虜になっていく。

 


やがて、パスポートが手に入り、犯人はこの家を出て高飛びすることになり、マリアを誘うが、マリアの父は娘を外出させない。

 


ジュジュはマリアに頼まれてピエールとの待ち合わせ場所にマリアが頼まれていた金を届けるが、なんとピエールはマリアを利用するだけだったのを知る。

 


そしてもみ合ううちにピエールを殺したジュジュは金を取り戻し家に戻る。芸術家と相談したジュジュは金をマリアに返すことにし、詳しいことは言わないことに決める。

 


映画はここで夜の街角を捉えて終わる。このエンディングも素晴らしいです。

 


名作と呼ばれるだけの完成度の高い映画ですが、それより、心に染みるような感動を味わいました。

 


恋の片道切符

まあ、二本立ての一本という感じの音楽映画。可もなく不可もない一本でした。監督は篠田正浩

 


サックス奏者の主人公白井が職探ししている場面に始まり、芸能事務所に誘われる。そんな時、1人の女性と知り合い、さらに事務所の売れっ子歌手との三角関係やら、事務所の裏取引らや友達のやくざ者の拳銃やらが絡んでのラストシーン。

 


それぞれの人物の心の物語は上手く描けていないので、どの行動もとってつけたように見えます。

 


まあ、気楽に見る娯楽映画でした。

 


「昭和残俠伝」

ご存知高倉健出世作にして、唐獅子牡丹で有名な任侠映画。シリーズ全て見てますが40年ぶりくらいに再見。監督は佐伯清

 


今さらなので物語は書きませんが、戦後すぐの闇市場の場面に始まり、市場の利権争いで、振興ヤクザと任侠を重んじる主人公らヤクザとの義理と人情の物語が展開。

 


クライマックスの殴り込みシーンは流石にワクワクします。

映画感想「東京喰種 トーキョーグール【S】」「ワイルドライフ」

「東京喰種トーキョーグール【S】」

なんともダラダラグダグダした映画だった。アクションのキレもないし、おそらく原作にある主人公たちの苦悩などのドラマもないし、目を背けるようなグロシーンが所々にあるだけのテンポの悪さはなんだという映画だった。監督は川崎拓也と平牧和彦。

 

半グールになった金木は隠れ家的なカフェ「あんていく」でバイトをしながら暮らしている。究極のグールの美食家月山が金木に目をつけ、食さんと狙ってくるのが今回の物語だが、月山のごたくシーンがとにかくやたらしつこい。

 

カフェの董香の苦悩なども交えて描かれるものの、月山の独り舞台的なダラダラ感で最後まで描かれる話はなんともだるい。

 

クライマックスの月山と金木の対決かと思われたが董香とのアクションがクライマックスで、肝心の主人公は脇にやられたままで映画が終わるのはあっけにとられてしまった。

 

原作の奥の深さが映像化できていないのだろうと思いますが、さすがに脚本の弱さでしょうね。最低の映画でした。

 

ワイルドライフ

良質なヒューマンドラマという感じの秀作。地味な展開ながら、少年ジョーの視線で描かれるストーリー展開は見事なものです。監督はポール・ダノ

 

ゴルフ教室の講師をする父ジェリーと優しい母ジャネットと暮らすジョー。学校でも優等生で、家でも両親のまとめ役のように存在している。ある時、父が突然解雇される。ジャネットもジョーも戸惑うが、父はなかなか再就職もままならない。

 

ジャネットは外の働きに出ることにし、ジョーも写真館でアルバイトを始める。そんな時、ジェリーは山火事の消火作業をする職を得て、遠方へ行くことになる。しかも低賃金ということですジャネットも大反対するが、雪の降る頃に戻るからと強引に出ていくジェリー。

 

二人きりになったジャネットとジョーだが、母の行動に不審なことが見え始める。水泳教室で教えていた生徒の一人で、妻と離婚し車の販売会社をする男だった。ジャネットはジェリーがいなくなり、心細さとさみしさからどうしようもなくなって行った。

 

そんな母を軽蔑するようになるジョー。そして、出ていくことを決心し、バス停で待っていると雪が降ってくる。慌てて家に戻ると、間も無くして父が帰ってくる。しかし、父はジャネットの異変を知り、男の家に火をつけようとする。

 

そしてジャネットは一人暮らしすることを話し、ジェリーはジョーと新しい家に引っ越す。しばらくして、ジャネットがジョーたちを訪ねてくる。ジョーは母の帰り際に自分の写真館で三人で写真を撮ろうと提案。シャッターが落ちたところで映画は終わる。

 

結局、ジャネットも仕方なかったのかもしれない。ジェリーもそんな彼女を許したのかもしれない。ジョーも両親の愛情の絆はまだ残ってると信じているのかもしれない。ラストシーンの三人が並ぶカットがそんな心に迫る何かを語っている気がしました。いい映画でした。

映画感想「田園の守り人たち」「こはく」「いつかギラギラする日」

「田園の守り人たち」

非常にクオリティの高い映画なのですが、いかんせん地味です。第一次大戦期のフランスの片田舎の農場が舞台というので、話が派手にならないのですが、映像がとにかく美しい。静かながら、戦地に男たちを送り出し、残された女たちの必死の姿が切々と伝わってきます。監督はグザブエ・ボーボア。

 

戦場のワンカットから農場で一人鋤をすいている年老いた女性オルタンスのカットに移る。横長の画面に広がる農場のカットがまず美しい。

 

家の男たちが戦地に取られ、女だけで農地を守っているが、限界があり、フランシーヌという一人の女を雇う。どんなこともこなす彼女の姿にオルタンスも信頼を置いていく。

 

そんな時、一時帰郷で戦地にいた次男のジョルジュが帰ってくる。やがてフランシーヌとジョルジュは親しくなり、やがて体を合わせるまでになる。しかし、素性のわからないフランシーヌとジョルジュの仲を離すべく、オルタンスは、ジョルジュが戦地に再びいく日に、アメリカ兵との疑われるような場面を設定して、ジョルジュとの仲を裂く。

 

突然解雇されたフランシーヌは、とにかく炭焼きをしている女のところに再就職するが、間も無くして妊娠していることに気がつく。父親はジョルジュとわかっていたので、戦地に手紙を送るも返ってくるばかり。オルタンスを通じて知らせてほしいと送っても、オルタンスはフランシーヌからの手紙を焼いてしまう。

 

やがて、戦争も終わる。フランシーヌは出産し、洗礼を受ける。その帰り、オルタンスはフランシーヌを見かける。立派な馬車に乗ったフランシーヌの姿を見てショックを受けるオルタンス。

 

間も無くして戦地からジョルジュが帰ってくるが、長男のコンスタンが死に、農場のこれからを考える中で家族同士にささやかな諍いさえ生まれてくる。

 

カットが変わると、クラブで歌っているフランシーヌ。そこへジョルジュがやってくる。フランシーヌのアップで映画は終わる。

 

戦争という歴史の流れの中で、男たちは戦地へ行き、女たちは田畑を守る。そこで生まれた運命のいたずらのような一瞬を見事な映像で描いた作品で、確かに地味ですが必見の値打ちのある映画でした。

 

「こはく」

なんとも脚本の良くない安っぽいだらけた映画だった。もうちょっと見れるかと思っていたが、どのシーンも適当な上に、カットばかりが目立つ演出に参りました。章一を演じたアキラ100パーセントが最低の演技に参った。監督は横尾初喜

 

ガラス工房を父から引き継いだ主人公亮太のカットから映画が始まる。母と暮らす無職の兄章一から、子供の頃出て行った父を見かけた亜粗探しに行こうと誘われ、二人は父を見かけた辺りを聞いて回ったり、関係があったらしい女性を探したりするも見つからず、間も無くして母が亡くなる。

 

その通夜の席に、父をよく知るかつての事務員が来ていたことから、父の住まいがわかり二人で会いに行って映画は終わる。

 

で、章一のキャラクターが実に適当で、はっきりしないので、何を語りたいのかわからない映画に仕上がった感じです。だらだらと暗転を繰り返す脚本がとにかく安っぽい。どうにもなりませんでした。

 

いつかギラギラする日

これは面白い!痛快というか豪快というか、これがアクション映画やと大阪弁で叫んでしまいたくなるような映画でした。映像で見せるというのはこういうのをいうのですね。最高でした。監督は深作欣二

 

とにかく、めんどくさい物語や人間ドラマなんて吹っ飛ばして、いきなり銀行強盗シーンの連続から、いかにも胡散臭い仕事に首を突っ込み、裏切りから銃撃戦、カーチェイスと続いたら後はもう突っ走っていきます。そして痛快なアクションシーンがこれでもかと展開していきます。

 

神崎らおっさんら三人の銀行強盗シーンから角町と麻衣に裏切られ、仲間を殺された神崎が二人を執拗に追い詰めていく。そこにサラ金ヤクザが追いかけて、警察も参戦してのカーチェイスに銃撃戦。

 

角町と麻衣は死に、神崎と愛人の美里がバスに乗っていると銀行の看板が目について、また始めるかのような余韻でエンディング。もう最高やね。めちゃくちゃ面白かった。

映画感想「ブルース・ブラザース」「マーウィン」

ブルース・ブラザース

40年ぶりくらいの再見。とにかくド派手にぶっ壊す、踊りまくる、歌いまくる。賑やか過ぎるほどに慌ただしい映画ですが、どれもが本物の迫力にエンタメの真髄を感じさせられます。監督はジョン・ランディス

 

ジェイクが刑務所を出所してくる場面から始まり、相棒のエルウッドがオークションで手に入れたパトカーで迎えにくる。二人は育った孤児院を訪ね、税金の支払いに困っている窮状を知る。

 

そんな時たまたま教会へ出かけた二人は神の啓示を受けバンドを再び組むことにしメンバーを集め始める。そこへ、警察が彼らを捕まえようとくるわ、ネオナチの集団が追っかけてくるわの大騒動が展開。

 

クライマックスはとにかく派手なカーチェイスとぶっ壊しに絡めてラストステージの名曲の数々が最高。

 

ラストは刑務所に入った二人が歌いまくり映画は終わりますが、今となっては作れないのではと思うくらいのてんこ盛りの面白さが凝縮。有名なミュージシャンも所狭しと登場し、豪華この上ないです。楽しい名作ですね。

 

「マーウィン」

監督はロバート・ゼメキスですが、かつてのキレがなくなった感じです。人形劇のシーンと実写のシーンを取り混ぜて、不思議なファンタジック色を出しているのですが、どこかダラダラした感じがして、主人公の姿がリアルに見えてこなかった。

 

戦場を飛ぶ飛行機のシーンから幕を開け、マーウィンへようこそというカットからアメリカ軍人のホーギー大佐が一人の女性を乗せているシーンへ。どうやらこれは人形劇の世界のように見えてくる。

 

主人公マークは五人の男に暴行を受けた際に過去の記憶をなくし、その時のトラウマで引きこもって、リハビリを兼ねて人形を組み合わせた仮想世界マーウィンの写真を撮っていた。

 

そんな彼の家の向かいにニコルという女性が引っ越してきて、マークは密かに心が揺れ始める。という展開ですが、このニコルもマークもその人物背景がはっきり見えないし、ニコルにつきまとうカートという元警官も途中で消えてしまうし、なんとも人物描写が曖昧。

 

人形の世界の物語に謎の魔女が出てくるが、この意味ありげなキャラクターも結局わかりづらいし、クライマックスで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンのようなタイムマシンに乗って未来へ飛んでいくし、どこまで遊びたいのか中途半端です。

 

結局、やっと自立し始めて法廷に出廷するのがクライマックスになるのですが、マークが立ち直る過程なのでしょうが、人形劇シーンに力が入りすぎた感じです。