くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リンドグレーン」

リンドグレーン

長くつ下のピッピなどの児童文学の女流作家アストリッド・リンドグレーンの半生を描いた作品ですが、ほとんど、一人の女性の恋と親子の問題のドラマで、児童文学に目覚める下りも何もない普通の女性映画でした。監督はペアニル・フィッシャー・クリステンセン。

 

児童作家のアストリッド・リンドグレーンが、世界中に子供達から誕生日のお祝いの手紙が来たのを開いているシーンから映画は始まる。そして時は彼女の少女時代へ。

 

自由奔放な行動でちょっと疎まれているが、愛くるしい少女アストリッドの姿。文章を書くのが得意な彼女は、地方紙の新聞社に勤めることに。そこで、新聞社の主催と知り合い、恋に落ちるが彼には離婚訴訟中の妻がいた。

 

やがて、アストリッドは妊娠してしまう。厳格なキリスト教信者でもある両親の気持ちもあり、公にできないまま、アストリッドは悩んだ末、たまたまデンマークにそういう女性の応援をしている女流弁護士の存在を知り、離婚訴訟が解決するまで、そこで産んで、預けることにする。

 

ところが、なかなか訴訟が進まず、たまにアストリッドが会いに行っても息子のラッセは母親として懐いてくれなくなってくる。そしてようやく訴訟がうまく行ったものの、わずかな金で解決できたこともありアストリッドは、悩んだ末、別れることにする。

 

一人、秘書の仕事に就き、ラッセを迎えにいくが、自分を認めてくれず、仕方なく、ラッセを残して生活を始める。ところが、ラッセを世話していた弁護士が病に倒れ、やむなくアストリッドが引き取ることになる。しかし、なかなかなついてくれない上にラッセは病気になってしまう。お金もなく悩んでいると、勤め先の社長リンドグレーンが医師を手配してくれ、そんな中ラッセもアストリッドに心を開いてくれる。

 

こうしてなんとか順風な姿に戻って映画は終わっていく。その後の彼女はテロップのみで説明される。まあ、普通の作品ですね。

映画感想「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」

スター・ウォーズスカイウォーカーの夜明け」

いよいよシリーズ完結、過去作品へのオマージュ満載で締めくくるクライマックスは圧巻だし、四十年経ったかとという感慨に胸が熱くなってしまいました。やはりバトルシーンを描かせるとこの監督な実に旨いですが、それ故に、伝説のシリーズのプレッシャーも半端なかった感じです。でも最後の三部作の中では一番人物整理が綺麗にできていた気がします。素直に面白かった。監督はJ・J・エイブラムス。

 

シスの力を集結し、反乱軍の完全撲滅と銀河連邦での君臨を盤石にするため、パルパティーンは、一つの星を簡単に破壊できるキャノン砲を備えた宇宙戦艦の大群を製造し、未知の星で最後の戦いの準備をしていた。

 

そんな陰謀を知った反乱軍は、謎の星を過去のルークらの努力から捜しださんと必死になるが、立ちふさがってくるのが、暗黒世界に入ったレンだった。レンは事あるごとに暗黒世界にレイを招き入れ二人で皇帝の座につこうと誘うがレイは、ルークやレイアの力によって守られる。

 

破壊されたデススターの中に、皇帝の潜む星へのコンパスがあることを知ったレイは、フィンらとその星へ向かうが、立ちふさがったレンとの一騎打ちとなる。そして、最後の最後、命をかけて力を送ったレイアによってレンは倒される。しかし、レイはレンに命の力を与え助ける。

 

レンにコンパスは破壊されたが、レイはもう一つレンが持っていたコンパスによって皇帝の秘密の星へ向かう。レイア亡き後ポーが率いる反乱軍もレイの導きで秘密の星へ。反乱軍が果敢に大艦隊破壊活動を続ける中、レイはパルパティーンと最後の決戦に向かう。そして、あわやというところへ改心したレンがやってきて二人でパルパティーンに臨むも、結局歯が立たず、二人の力を吸い取って生き返ったパルパティーンは、反乱軍を全滅させるべく力を放出。しかし、ジェダイの真の力に目覚めたレイは再びパルパティーンに向かい、ついに倒す。反乱軍も帝国の大艦隊を全滅させるが、レイはパルパティーンとの戦いで命を失っていた。

 

そこへ瀕死のレン、今や本来の名前ベンとなり、レイに最後の命を分け与え、自らは消えていく。全てが終わり、反乱軍も無事帰還、レイも戻ってくる。レイは、かつて、ルークらが暮らした家にやってきて、夕日を見つめて映画は終わる。そして、このシリーズも終わりました。

 

さりげなく、過去作品の場面を再現し、ハン・ソロまで再登場させるサービスも入れ、兼ねてからのファンの心を掴みながらの得意の宇宙戦闘シーンの迫力へ導く展開が心地よく、二時間を優に超えるが退屈しませんでした。素直に面白かったと言えます。

映画感想「殺人者にスポットライト」

「殺人者にスポットライト」

ゴーモン映画社特集の一本なのですが、なんともB級の塊のようなサスペンスで、何が何か物語の整理がついてこないし、なんでこんなシーンがあるのかわからないし、結局、何度か意識を失ったまま、ラストを迎えた。監督はジョルジュ・フランジュ

 

あるお城のカット、その中に一人の老伯爵が人形を抱いて、何やら鏡の奥の隠し部屋に入る。カットが変わるとひと組のカップルが車で城に向かっている。カップルの男性が物語の主人公である。城には伯爵のいとこやらが集まってくる。伯爵は、一両日中に死んでしまうという診断を下され、みんなが集まったが、その伯爵がいない。死体がなければ五年間相続手続きが出来ないと言われる。

 

相続人たちは伯爵を探す一方でお互いに有利になるために疑心暗鬼になり始め、一人が電気の事故で死んでしまう。そして屋敷内のアナウンスシステムから不気味なアナウンスが流れ、誰もいないはずの部屋にランプがついたりする。そしてまた一人殺されるにあたり、険悪なムードになっていく。

 

ところが、夜に何やらイベントが開催されることになっていて、たくさんの招待客が集まり始める。その前後、主人公は真犯人を罠にはめて見つけ、さらにその争いの中で鏡の隠し部屋も発見。間も無くイベントが始まり、城の庭に大勢が詰めかける。その中、スポットライトを浴びて逃げる犯人が銃で撃たれ死んでしまう。映画はここで終わるのですが、一体なんなのだという作品だった。

映画感想「快楽」「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

「快楽」

これは良かった。カメラワークが流麗で素晴らしいし、セットの立体的な造形も見事、しかも、映像のテンポも素晴らしい傑作でした。物語はモーパッサンの短編三本なのですが、別々のようで別々ではなく絡み合わせた脚本も秀逸でした。監督はマックス・オフュルス

 

パリのダンスホールから第一話が始まります。ダンスが始まり、飛び込んで見事に踊る仮面をつけたダンサー。次々と女性たちと絡みながら踊り狂うが、突然倒れてしまう。医師が駆けつけて、ベッドで仮面を取ってみたら、なんと老人。そのまま自宅に連れ帰り、そこで妻から、彼の若き日からの物語が語られる。

 

そして場所はノルマンディのカフェへ。大勢の女たちが船員たちの相手をして賑やかに過ごしている。カメラは窓の外、中、坂道を縦横無尽に動きながら賑やかな日々を描くが、ある時、店の看板の火が消えている。ドアに、田舎の妹のところの子供が初聖体拝領のお祝いがあり出かけるのだという。

 

汽車で田舎に向かう賑やかな女性たち、田舎で、そのパーティで騒ぐ彼女たちの姿からやがて街に戻り、店を開店して、華やかな日々が戻る。カメラが斜めに構えたり、リズミカルに動き回る長回しが素晴らしい。

 

そして第三話、一人の画家がある女性をモデルに選びやがて結婚。しかしいつの間にか溝ができ、大げんかの末に別れてしまう。しかし女の方は夫を愛していて夫が再婚するという噂を聞いて夫のところにやってくる。そしてもう一度一緒になれないなら自殺するという。売り言葉に買い言葉で、なら死ねばという夫の言葉に女は窓から飛び降りる。そして両足を骨折。夫は後悔し、もう一度一緒に暮らすようになる。浜辺を車椅子を押す姿で映画は終わる。

 

真ん中のエピソードが一番長く、その前後を手際よくまとめて、全体を一つの作品に仕上げた脚本がなんといっても素晴らしい。さらに、長回しでどんどん語っていくストーリーテリングの見事さと、階段や坂道を多用した美術の見事さ、一方で、広がる草原を見せる大きなシーンも挟んだ映像作りも絶品。本当に一級品をみた感動を味わうことができました。

 

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

2016年大ヒットした作品を250カットを追加して再制作した作品で、追加されたこととそれに伴う全体の見直しが行われ、テーマが変わっているので、別作品として見てもいいと思う。とにかく、素晴らしいほどの傑作に仕上がっていました。もちろん前作も素晴らしかったのですが、また別の意味で、胸を打つ感動を得ることができました。

 

正直なところ、細かいところは、どこがどう付け加わったか具体的に書きにくいのですが、すずとリンの出会いのシーン、会話のシーンが増えている気がします。そのために、一部無くなった部分も見受けられるのですが、気のせいでしょうか。

 

物語の骨格は同じなので、ストーリーに変更はないですが、リンとすずの触れ合いが増えたこと、枕崎台風のシーンの追加などで登場人物の側面描写が加わり、反戦ドラマだけでなく心の物語が交錯して、切ないほどの仕上がりになったように思います。本当にいい映画ですね。考えさせられるに、胸に染み渡ってしまいました。

映画感想「ヨシワラ」「テッド・バンディ」

「ヨシワラ」

やっつけ仕事のような脚本で、その場その場で書き加えられていった展開は雑だが、話なシンプルなので、気楽に見ることはできた。フランス人がちょんまげを結っていたり、どう見ても富士山ではない富士山や、吉原の景色が下町に見えたり、様々なところでフランス人の日本感が随所に見れてツッコミ満載というより、珍品映画を見た感じでした。監督はマックス・オフュルス

 

没落武士の娘が吉原に身売りしに行くところから物語が始まる。その娘を恋い焦がれる車夫がいて、まるで無法松の一生である。そんな時ロシアの海軍船が吉原近くに立ち寄り、士官達が吉原に遊びにくる。生真面目で紳士の一人の中尉がその娘に惚れ、お互い相思相愛となる。しかし中尉には中国からの密書を受け取る任務があり、一方車夫は娘と会いたいがために泥棒をして逮捕され、釈放の条件に中尉を見張るように言われる。

 

とまあ、色々詰め込んだ話の中心に中尉と娘の恋物語が展開していき、最後は、話がごちゃごちゃに入り組んでしまい、負傷した中尉はなんとかロシア船に乗るが、娘は中尉に手紙を渡したという咎で死刑が確定。でも、渡した手紙は娘が罪にならないように嘘に改ざんしたものだった気が。そして、泳いで戻る中尉は教会で神に祈るが娘は銃殺され、中尉も力尽きて死んでしまう。というか、なんで戻ったん?というツッコミのエンディング。

 

第二次大戦前とは言え、もうちょっと知識があるだろうにと思うが、いたるところが適当感満載。やたら霧が出る森や透き通っている障子や、女郎屋がどっかの農家にしか見えないし、伝え聞いた話だけで作ったセット感満載。まあ、この時代の映画は海外のみでなく日本も作れば売れた量産時代なのだから仕方ないかな。本当に珍品映画でした。

 

「テッド・バンディ」

実話とは言え、巧みに組み込んだ脚本の出来栄えがなかなかで、犯人と分かりながらも、物語の展開に翻弄されて、冤罪ではないかという混乱の極みに吸い込まれて行くようでした。なかなかの秀作という一本です。監督はジョー・バーリンジャー。

 

ガラスを挟んで面会人のリズと容疑者テッドが対峙し、カットが変わって二人が出会ったバーでのシーンが重なってくる。そして、物語は約十年近く前、リズとテッドの出会いへと進み本編になる。この導入部がまず秀逸。

 

バーで知り合ったリズとテッド、リズはシングルマザーで自宅には娘のモリーがいるが、送ってくれたテッドの人柄に惹かれ家に招き入れる。やがて愛し合い、モリーを含めた三人での微笑ましい生活が始まり、そのカットが挿入される。折しも女性を狙った残忍な連続殺人事件が続き、目撃者の証言から似顔絵が新聞に掲載される。その顔はテッドそっくりだった。

 

ある夜、テッドは警官に車を止められる。そして後尾座席にあったロープなどの荷物から、彼が連続殺人事件の容疑者ではないかと逮捕される。間も無くして保釈され、彼を無実と信じるリズの元に帰ってくるが、しばらくして、また彼は逮捕される。新聞の似顔絵に彼は似ているという通報があったためである。

 

やがて裁判が始まるも、テッドには次々と不利な方向へ展開し、さらに殺人事件が起こった州を転々としながら裁判が続く。法廷での行動やら発言もあり、弁護団は彼に振り回される。しかも彼を犯人と断言する証拠が手薄いように見え、マスコミにも騒がれ、テッドのパフォーマンスもあって、彼は冤罪であるかのように展開して行く。そして、とうとう弁護団を解任しテッド本人が弁護人として法廷で戦うようになる。

 

そんな中、リズに連絡が取れなくなってきたテッドの前にかつての恋人キャロルが現れ、彼女はテッドの無罪勝ち取りにために奔走し始める。やがてフロリダの裁判所まで流れた裁判はついに判決の日を迎える。そして言い渡されたにはすべての殺人への有罪判決だった。一方リズは、実は似顔絵に似ていると通報したのは自分であることを彼女を支えてくれる同僚に告白する。軽い気持ちの通報がこういう結果を生んだことに悩むリズ。

 

判決から十年が経つ。実はリズは、ある写真を開けずにいた。テッドの死刑執行が迫る中、リズはその写真を開く。そこには首のない死体の写真。リズはそれを持ってテッドに面会を求める。そして冒頭のガラス越しのシーンへ。まだ無罪を主張するテッドにリズは、自分が通報者であること。実は最初からテッドに恐怖を覚えていたこと、そして極め付けに写真を見せ、真実を迫る。そして、テッドは曇ったガラスに、首を糸鋸で切断したと書き込む。テッドこそ真犯人だったのである。

 

愛するがゆえに、愛していると信じたいがゆえに、十年間一人苦しんでいたリズはとうとう解放され、モリーたちの待つ車のところで抱き合ってエンディング。エピローグは当然実際のテッドの裁判の映像などが流され、警察の捜査がすべて正しかった部分が前面に描かれる。

 

物語の組み立てが実に巧みで、単純なミステリードラマで走らなかった工夫が成功している一本で、見終わって、満足感が残る秀作だったと思います。

映画感想「とらんぷ譚」「THE UPSIDE 最強のふたり」「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」

とらんぷ譚

サイレント映画の調子で、主人公が自身の回想録を綴るというナレーションを背景に過去の物語が展開。過去のお話はほとんどサイレント調で進んでいく。テンポがいいので退屈しない楽しい映画でした。監督はサッシャ・ギトリ

 

タイトルやスタッフキャストが順番に紹介されるというオープニングの後、カフェで一人の初老の男が人生を振り返って回想録を書いている。少年時代に始まり、やがて詐欺師まがいになってカードのイカサマなどを始める。とそれだけの話で、唐突に映画が終わるので、何が何だかという感じですが、展開が調子良くて、退屈しない。過去の話はサイレント映画的で、ほとんどセリフらしい台詞はなく、回想録を書いている人物の語りで展開していく。

 

ラスト、少年時代にホテルのボーイをしていた頃知り合った伯爵夫人に嘘がバレてエンディング。今ではこういう語り口はなくなったが、古さとノスタルジーを楽しむことができました。

 

「THE UPSIDE 最強のふたり

フランス版オリジナルのアメリカリメイク作品ですが、丁寧にリメイクされているので、オリジナル同様に楽しむことができました。監督はニール・バーガー

 

スーパーカーで疾走する黒人デルと、助手席に座るのは大金持ちで全身麻痺のフィリップ。警察をまんまと巻いた後物語は半年前に戻る。求職活動をし、サインをもらいながら失業保険で暮らすデルは、ある時、サイン目的である大邸宅の求人面接にやってくる。出迎えたのは全身麻痺の大富豪フィリップ。彼の介助人の募集だったが、どうせ雇われないだろうと好き勝手を言ったデルに興味を持ったフィリップは彼を採用する。

 

介助経験もないデルと今まで人生を諦めていたフィリップはいつの間にかお互い意気投合し、フィリップは恋に、デルは家庭に希望を見出して行く。

 

ラストは、フィリップが全身麻痺になる原因となったハングライダーで飛び、実は恋していたイヴォンヌとの恋を成就させ、一方のデルは愛する家族の元に戻ってきて映画は終わる。

少々雑な脚本の部分もありますが、爽やかに見ることができました。

 

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達人の夢」

胸を打つ映画という映画がありますが、まさにこの映画はそういう類の一本でした。実話ではありますが、主人公の静かな演技がどんどん胸に迫ってくる一方で人生の機微がじわじわと染み入ってくる感動が生み出されます。作品の出来不出来以前よりとってもいい映画でした。監督はニルス・タベルニエ。

 

郵便配達人のシュヴァルの妻がなくなるところから映画は始まる。人と接するのが苦手な彼は、葬儀の場でも人の輪に入っていけない。まだ幼い一人息子はそんな父と暮らせないため施設に引き取られて行く。間も無く彼は配達の途中でフィロメーヌという女性と知り合い恋に落ちやがて結婚、ひとり娘アリスが生まれる。そんな時、たまたま道端でつまづいた石に触発され、心の赴くままに建物を作り始める。

 

なんの知識もなく、ただ自然のままに石を積み上げて行く建物は、娘アリスに捧げた理想宮として形を成して行く。村人からは変人扱いされるも、次第にその宮殿は話題になって行く。そして幼くして別れた息子のシリルもシュヴァルの噂を聞き、会いに来る。

 

ところが、病に冒されたアリスは間も無くして死んでしまう。悲嘆にくれるシュヴァル夫婦。そんな時、シリルがシュヴァルのそばに引っ越してくる。彼には子供が二人いて、娘の名前はアリスだった。

 

時が流れるままに、ひたすら宮殿を建設し、着手から三十三年経ってとうとう完成する。しかし、そんな中、シリルも突然死んでしまう。間も無くしてフィロメーヌも老齢にため死んでしまい、シュヴァルはひとりぼっちになる。シュヴァルは亡き娘アリスの墓を八年がかりで作り上げる。そんな彼のところにシリルの娘、シュヴァルの孫娘アリスが結婚式に出席してほしいと訪ねてくる。

 

宮殿での披露宴の中、シュヴァルは、迎えに来た娘のアリスのところへと旅立って行く。映画はここで終わります。

 

人生の時の流れを縦軸に、シュヴァルの家族の物語を横軸に、手作りの宮殿というファンタジックなほどの史実を背景に描かれるドラマは、とにかく切々と胸に迫ってくる。少々、人物それぞれの描写が荒いところがあり、雑な脚本ではありますが、時々はっとするような美しい画面を見せてくれるあたり映画としては素敵な仕上がりになっています。クオリティがどうこうより見てよかったなと言える作品でした。

 

映画感想「パリ横断」「ジョン・デロリアン」

「パリ横断」

「ゴーモン 珠玉の映画史」特集で見ました。流石に古さを感じさせる映画ですが、それでも、光と影を巧みに使った演出は惹かれるものがあります。監督はクロード・オータン・ララ

 

時は第二次大戦下のフランス。闇市で裁くために一匹の豚がさばかれようとしている。肉に分けられたものの、量が多くて一人で運べない。ここに一人の男マルタンがバーのやってきた。彼が運び屋なのだがバーで知り合ったグランジルを仲間に誘い込む。

 

物語の前半は、この二人の掛け合いで夜の街を闇市の仲買人のところまでの物語になる。光と影を使った濃淡の画面が美しい。コミカルな展開の末に仲買人のところに来たが出てこないので、大声で呼んでいるとドイツのパトロールに捕まる。この時のシルエットを使った演出が実に奇抜で美しい。

 

二人はドイツ軍の所へ連れていかれる。グランジルは有名な画家だったので、ドイツの将校が彼を丁重に扱うが、折しも

ドイツの大佐が殺される事件の知らせが入り、逮捕されていた何人かとトラックに載せられる。しかしグランジルだけ助けられて、グランジルとマルタンは別れ別れに。

 

やがて第二次大戦が終わる。グランジルはカンヌへ行くため汽車に乗る。その時荷物を運ぶポーターを雇うが、なんとそのポーターはマルタンだった。懐かしい再会の後、グランジルはカンヌへ旅立っていって映画は終わる。

 

コミカルな展開と一気に緊張感が走るクライマックス、そして感動のラストと、わかりやすい物語構成はなかなか見事なものである。しかも、くっきりと光と影を使った美しい映像演出も見応えのありました。

 

「ジョン・デロリアン

結構面白かった。実話とは言え適度な人間ドラマもサスペンスもあった感じです。まあ、それ以上ではなかったけどラストまで飽きませんでした。監督はニック・ハム。

 

一人の男ジムがこれから法廷に向かおうとしている。後ろからFBIの捜査官が助言をしている。そして法廷に入り、物語は少し過去に戻る。映画はこの法廷シーンと、ここに至る物語が描かれていく。

 

パイロットのジムは、ある時着陸した途端にFBIに捕まる。翼の中に大量のコカインが隠されていた。ジムは、麻薬組織のモーガン逮捕のため情報提供するという司法取引を持ちかけられ受け入れる。

 

ジムは新しい家を与えられるが、なんと隣にはポンティアックGTOを設計したジョン・デロリアンが住んでいた。車を介して親しくなったジムはデロリアンから、新しい車のコンセプトなどの夢を聞かされる。しかし、デロリアンは、新しい会社の運営で資金に行き詰まっていた。

 

そんな時、デロリアンから、巨額の資金を調達したいと相談される。ジムはモーガンの組織と絡ませ、両者を逮捕する計画を考える。しかしデロリアンはジムを友達として信じていたため、ジムは最後まで迷う。

 

しかし、計画はうまく運びモーガンは逮捕、デロリアンも取引の現場で逮捕され冒頭の裁判の場面となる。証人となっているジムへの質問が続く。争点はデロリアンが麻薬取引を明確にジムに依頼したかということだった。そして最後の最後、ジムは、それは微妙だと証言、デロリアンは無罪となる。

 

レストランでジムのところにデロリアンがやってくる。そしてデロリアンの新車のキーと大金をプレゼントする。ジムが新車デロリアンにキーをさすが、エンジンがかからず映画は終わる。ラストのユーモアは想像がついたとは言え面白かった。

 

もうちょっと、FBIとジム、デロリアンの絡みがスリリングだったらもっと面白かった気がします。