くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「とらんぷ譚」「THE UPSIDE 最強のふたり」「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」

とらんぷ譚

サイレント映画の調子で、主人公が自身の回想録を綴るというナレーションを背景に過去の物語が展開。過去のお話はほとんどサイレント調で進んでいく。テンポがいいので退屈しない楽しい映画でした。監督はサッシャ・ギトリ

 

タイトルやスタッフキャストが順番に紹介されるというオープニングの後、カフェで一人の初老の男が人生を振り返って回想録を書いている。少年時代に始まり、やがて詐欺師まがいになってカードのイカサマなどを始める。とそれだけの話で、唐突に映画が終わるので、何が何だかという感じですが、展開が調子良くて、退屈しない。過去の話はサイレント映画的で、ほとんどセリフらしい台詞はなく、回想録を書いている人物の語りで展開していく。

 

ラスト、少年時代にホテルのボーイをしていた頃知り合った伯爵夫人に嘘がバレてエンディング。今ではこういう語り口はなくなったが、古さとノスタルジーを楽しむことができました。

 

「THE UPSIDE 最強のふたり

フランス版オリジナルのアメリカリメイク作品ですが、丁寧にリメイクされているので、オリジナル同様に楽しむことができました。監督はニール・バーガー

 

スーパーカーで疾走する黒人デルと、助手席に座るのは大金持ちで全身麻痺のフィリップ。警察をまんまと巻いた後物語は半年前に戻る。求職活動をし、サインをもらいながら失業保険で暮らすデルは、ある時、サイン目的である大邸宅の求人面接にやってくる。出迎えたのは全身麻痺の大富豪フィリップ。彼の介助人の募集だったが、どうせ雇われないだろうと好き勝手を言ったデルに興味を持ったフィリップは彼を採用する。

 

介助経験もないデルと今まで人生を諦めていたフィリップはいつの間にかお互い意気投合し、フィリップは恋に、デルは家庭に希望を見出して行く。

 

ラストは、フィリップが全身麻痺になる原因となったハングライダーで飛び、実は恋していたイヴォンヌとの恋を成就させ、一方のデルは愛する家族の元に戻ってきて映画は終わる。

少々雑な脚本の部分もありますが、爽やかに見ることができました。

 

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達人の夢」

胸を打つ映画という映画がありますが、まさにこの映画はそういう類の一本でした。実話ではありますが、主人公の静かな演技がどんどん胸に迫ってくる一方で人生の機微がじわじわと染み入ってくる感動が生み出されます。作品の出来不出来以前よりとってもいい映画でした。監督はニルス・タベルニエ。

 

郵便配達人のシュヴァルの妻がなくなるところから映画は始まる。人と接するのが苦手な彼は、葬儀の場でも人の輪に入っていけない。まだ幼い一人息子はそんな父と暮らせないため施設に引き取られて行く。間も無く彼は配達の途中でフィロメーヌという女性と知り合い恋に落ちやがて結婚、ひとり娘アリスが生まれる。そんな時、たまたま道端でつまづいた石に触発され、心の赴くままに建物を作り始める。

 

なんの知識もなく、ただ自然のままに石を積み上げて行く建物は、娘アリスに捧げた理想宮として形を成して行く。村人からは変人扱いされるも、次第にその宮殿は話題になって行く。そして幼くして別れた息子のシリルもシュヴァルの噂を聞き、会いに来る。

 

ところが、病に冒されたアリスは間も無くして死んでしまう。悲嘆にくれるシュヴァル夫婦。そんな時、シリルがシュヴァルのそばに引っ越してくる。彼には子供が二人いて、娘の名前はアリスだった。

 

時が流れるままに、ひたすら宮殿を建設し、着手から三十三年経ってとうとう完成する。しかし、そんな中、シリルも突然死んでしまう。間も無くしてフィロメーヌも老齢にため死んでしまい、シュヴァルはひとりぼっちになる。シュヴァルは亡き娘アリスの墓を八年がかりで作り上げる。そんな彼のところにシリルの娘、シュヴァルの孫娘アリスが結婚式に出席してほしいと訪ねてくる。

 

宮殿での披露宴の中、シュヴァルは、迎えに来た娘のアリスのところへと旅立って行く。映画はここで終わります。

 

人生の時の流れを縦軸に、シュヴァルの家族の物語を横軸に、手作りの宮殿というファンタジックなほどの史実を背景に描かれるドラマは、とにかく切々と胸に迫ってくる。少々、人物それぞれの描写が荒いところがあり、雑な脚本ではありますが、時々はっとするような美しい画面を見せてくれるあたり映画としては素敵な仕上がりになっています。クオリティがどうこうより見てよかったなと言える作品でした。