くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

岩井俊二の新作は「花とアリス」。紹介は「レジェンドオブメキシコ」

Cinema-Topix

オムニバス映画『Jam Films』の1本として作られた『ARITA』から2年。岩井俊二監督の新作「花とアリス」は、中学から高校にかけて揺れる思春期を送る少女二人を主人公にした、可愛くてある意味怖いラブストーリーである。

 幼馴染の中学生・ハナとアリス。彼女たちはアリスが一目惚れした高校生を尾行するが、ハナはその高校生と一緒にいた宮本に恋をしてしまう。やがて二人は同じ学校に進学。ハナは、憧れの宮本先輩がいる落語研究会に入会する。ある時、宮本がシャッターにぶつかって昏倒した現場に居合わせたハナは、やがて意識を取り戻した宮本に、先輩は私に愛を告白した。それを覚えていないのは記憶喪失だと、咄嗟に嘘をついてしまう。そして宮本は、疑心暗鬼になりながらもハナのペースに巻き込まれていく。嘘から始まった、偽の恋物語。これはハナが、アリスのことを宮本の元彼女だとさらに嘘を拡大させた事から、事態はややこしくなっていく。元の彼女を演じているアリスが本当に宮本に惹かれ始め、宮本もハナではなくアリスに愛情を感じ出すのだ。このハナという脚本家によって書かれた自分にとって都合のいいラブストーリーが、彼女の思いもよらない三角関係に発展していく様が面白い。

 自分自身の「今」を精力的に生み出していくハナ役の鈴木杏。街角でのスカウトをキッカケにタレント・オーディションの落選を重ねて、人間的に内面を成長させていくアリス役の蒼井優。二人の鮮度を保った存在感が、この恋愛ごっこがもたらす切なさや愛情を、リアルなものにしている。男性から見れば、二人に振り回される宮本の心情を思うと、非常に残酷な物語でもあるのだが、後半には宮本が逆にハナに牙を向くシーンもキチンと用意されている。

 この映画がラブストーリーとして特異なのは、日常生活の中にハナが描いた虚構の物語を刷り込ませる事で、逆に愛の普遍性が際立ったことだろう。通常のラブストーリーはその愛が続く永遠性を匂わせることで、愛を渇望する観客の共感を呼ぶ。しかしここでは、いつか嘘がバレるエンド・マークのある恋物語を中に置くことで、その物語の渦中にいる登場人物たちの心がピュアな状態で観る者に迫ってくるのだ。少女たちの繊細な心の動きを、まるで心拍数に併せて掬い取ったような篠田昇の映像も素晴しい。特にハナとアリスが雨でずぶ濡れになりながら、互いの感情をぶつけ合うシーンは秀逸。主演二人の只者ではない感性が、印象的な作品だ。







公開作品・公開待ち作品紹介



レジェンド・オブ・メキシコ デスペラード

[監][製][脚][撮][視][音][編][美]ロバート・ロドリゲス 
[出]アントニオ・バンデラス  ジョニー・デップ  サルマ・ハエック  ミッキー・ローク  ウィレム・デフォー エバ・メンデス 

[制作データ] 2003米/ソニー
[上映時間] 101分





メキシコの流しの歌手、エル・マリアッチを主人公にしたアクション・シリーズの第3弾。ギター・ケースに銃をひそめるアウトローの、ヒロイックな活躍に目がくぎづけに!



CIA捜査官サンズから仕事を依頼された伝説のガンマン、エル・マリアッチ。それは、クーデターを画策する将軍の暗殺だった。将軍に怨みがあるマリアッチは復讐に燃え、彼や背後にひそむ犯罪組織と死闘を繰り広げることに。





ロバート・ロドリゲス監督作品

・ エル・マリアッチ 1992
デスペラード 1995
・ フォー・ルームス 1995
フロム・ダスク・ティル・ドーン 1996
・ パラサイト 1999
スパイキッズ 2001
スパイキッズ2 失われた夢の島
アントニオ・バンデラス 出演作
・ セクシリア 1982
・ マタドール〈闘牛士〉 炎のレクイエム 1986
・ 神経衰弱ぎりぎりの女たち 1987
・ 欲望の法則 1987
・ アタメ 1990
・ マンボ・キングス わが心のマリア 1992
フィラデルフィア 1993
・ 愛と精霊の家 1993
・ 愛よりも非情 1993
インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア 1994
愛の奴隷 1994
愛の奴隷(1994) 1994
デスペラード 1995
・ フォー・ルームス 1995
・ マイアミ・ラプソディー 1995
・ 暗殺者 1995
・ あなたに逢いたくて 1996
・ エビータ 1996
ストレンジャー 1996
・ マスク・オブ・ゾロ 1998
スパイキッズ 2001
スパイキッズ2 失われた夢の島 2002