「バーレスク」
とあるアイオワの田舎町のカフェで働く主人公アリ(クリスティーナ・アギレラ)はいつか都会へ出てショービジネスの世界へ入ることを夢見ています。
ろくに給料も払ってくれないカフェの売り上げを持ち出して同僚に別れを告げるとそのままニューヨークへ。そして、あちこちの店を探した挙句一軒のクラブ「バーレスク」へやってきます。
入り口でまるでピエロのような化粧をした男性とやり取りした後そのまま店へ。舞台では圧倒的な声量でうたうこのクラブのオーナーテス(シェール)の姿が。その歌声と舞台に魅了されたアリスはこの店で働くことを決めます。見ている私たちもこのシェールの迫力のステージで一気に映画の中にいやクラブバーレスクに引き込まれてしまいます。この冒頭部分が見事です。
あとはもう、全編ステージシーンの連続と圧倒的なハイテンポで展開する「クラブバーレスク」の中の一員になってしまいます。とにかく、この手のステージシーンを撮った映画はアメリカ映画は世界一だと思います。
とりあえずウェイトレスにもぐりこんだアリはやがて勝手にクラブのオーデションに入ってバックダンサーの仕事を得ます。そんな中でも次々と展開するステージを見ているだけでもこの映画は見ごたえ十分です。
そして、クラブのトップダンサーニッキの代役を得たアリスはニッキのいたずらからその歌声を披露することになる。そこから、それまでテス以外はクチパクだったステージが一気に盛り上がり、店は活況を呈し始めます。
一方このクラブはすでに借金が膨れ今にも手放さんとする状況。
そんなタイムリミットはあるものの、圧倒的な迫力でどんどん展開されるクリスティーナ・アギレラの舞台シーンがとにかく所狭しと繰り返される。もっともっととアンコールしてしまう面白さは最高のエンターテインメントです。
後半に入りアリとバーテンとの恋、この店を獲得しビルを建てようとする不動産やらの俗っぽい展開もあるものの、ステージシーンの迫力がすべて払拭してしまってその辺のシリアスな物語がさりげなくいなされてしまうのがこの映画のよさでしょうね。
ラストは、すべてがアリの機転で経営の危機も脱し、恋も成就、確執のあったニッキも帰ってきて「クラブバーレスク」にアリスの歌声が響く中、幕を閉じます。
エンドタイトルの背後にバーレスクのイルミネーションが輝くエンディングも最高に盛り上がります。いやぁ、楽しい映画でした。
「キック・アス」
B級の典型的なアクションムービーである。そのことを前提にみないと「スパイキッズ」のようなファミリーアクションだと思ってみると、次々と展開されるちょっとグロテスクなシーンにびっくりしてしまう。
ヒーローなりきり映画というのは日本では「ゼブラーマン」があげられるが、この「キック・アス」はそんな単調でおふざけの映画ではなく、かなり中途半端に複雑なストーリーの作品である。コミックの原作を作りながら映画を進めていったためか一筋縄の物語ではないために、しかもそれほど物語の構成に力も注いでいないために、途中がややめんどくさくなってくるところがある。ではあるが、やたら強くてキュートなヒットガールがこの作品を最後までつないでくれる。
物語はありきたり。雲をぬって飛ぶようなシーンで幕を開けると、そこに主人公デイブの独り言。なぜ、ヒーローはでてこないのかなどなど。そしてネットで買ったコスチュームでヒーローキック・アスになって町の不良どもへ挑みかかるがコテンパン。そんな様子がかえってネットに流れて彼は英雄に。
ところが一方である麻薬組織のボスを敵とねらう親子、ビッグダッディとヒットガールの活動がひそかに組織のボスにとって煙たいという物語が並行して進む。そして、それがキック・アスの仕業ではないかとおもいはじめる。
一方のキック・アス、恋いこがれる女性の依頼にもとずき不良のたまり場へ飛び込んだもののあわや殺される、というところでめちゃくちゃに強い11歳くらいの少女が登場。右に左に男たちを殺していく。それも足を切ったり、両刀で突き刺したり、引き裂いたりとまさにスプラッターのごとしである。彼女の名はヒットガール。麻薬組織を追ううちにここへ父ビッグダディとやってきたのである。
こうして二人は知り合って物語が進んでいく。
ヒットガールとビッグダディの生い立ちや目的がアニメチックに語られ、彼らの復讐劇のストーリーとデイブ扮するキック・アスの青春物語が進んでいく。
ふとしたことで麻薬組織のボスが自分たちをねらっているのがビッグダディたちだと気づき、彼らを罠にかけて・・・
クライマックス、父を殺されたヒットガールは単身麻薬組織のボスのところへ。マカロニウェスタンの曲で乗り込んでいく下りがなんとも遊び心満天。
あっと言う間に子分たちを殺して、いざ後一歩のところで弾切れ、危機一髪でキック・アスが登場、二人でボスをやっつけてハッピーエンド。
とにかく何度も書きますがヒットガールのシーンが最高の見せ場で爽快そのもの。11歳の少女がCワードと呼ばれるスラングを叫びながらものすごいアクションで殺戮していく。他にも人間が爆発したり、スクラッププレスで押しつぶしたりとかなりどぎついシーンも満載である。だから、気を抜くと肝心のキックアスの存在が隠れそうであるがその辺はちゃんと脚本で押さえているエンディングがいいですね。
決して一級品のアクションでもないですし、物語が妙に詰め込みすぎたきらいがあって、もう少し単純な物語でアクション中心でもよかったかもしれないけど、コテコテB級のたわいないエンターテインメントだと思えば十分に満足できる映画でした。楽しかったです。