くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「海の勝負師」「銀座の恋の物語」

kurawan2017-08-08

「海の勝負師」
たわいのない映画です。まさに映画を大量生産していた時代の一本という感じの作品で、ストーリーも展開もその場その場で作っていったような流れで、一体どういう話かツッコミどころ満載。でも当時の空気感は感じることができるからこの手の映画はいいですね。監督は蔵原惟繕

主人公は何やら過去に人を殺したという疑いをかけられている潜水夫で、ここに、何やら潜水夫探しをしにやって来る二人の田舎者と絡み合って、さりげない物語が始まる。

潜水夫の神様と呼ばれながらも今はアル中の男と主人公がタッグを組んで、不法入国を手助けしているらしい悪人たちのと丁々発止の物語をひたすらアクションを交えて描いていきます。

細かい矛盾や説明は一切放っておいて、ただ走る殴る、転がる撃ち合うというのが所狭しと画面を覆って行くのはまさにB級アクション映画の世界。いやそれ以上でも以下でもない。こういうのを大量生産していって映画は衰退したのだろうなと思える一本ですが、これも映画史の一ページなのです。


「銀座の恋の物語」
メリハリの効いたストーリー展開とラストの畳み掛けのうまさ、脇役のキャラクターの効果的な演出、娯楽映画の脚本のお手本のような仕上がりの青春映画の傑作。始まりからラストシーンまでうっとりと引き込まれてしまいました。ラストは拍手したくなってしまった。監督は蔵原惟繕です。

夜明け近くの銀座、カメラは通りを駆け抜ける人力車を追いかけて行く。引っ張っているのは、知り合いの助っ人で一晩車を引っ張る主人公伴次郎。こうして物語は幕を開ける。

彼は貧乏絵描きで、恋人の久子に美術出版社への就職を望まれているが断固拒否している。彼と同居しているのが貧乏作曲家の宮本で、彼が作ったジャズ曲に歌詞をつけて歌っているのが伴次郎で、それが「銀座の恋の物語」である。

映画の前半は、貧乏ながら必死で生きる伴と宮本、そして久子の物語となり、結婚を決めて就職する決意をし、両親に合わせるため信州へ行く汽車に乗るのに新宿で待ち合わせる伴と久子の場面へ続く。ところが、駅に急いだ久子は途中で交通事故にあい、伴とはぐれたまま後半へ。一方夢を諦めた宮本は裏社会へ足を踏み込んで行く。

生死がわからないままに久子を探す伴の描写から、ふとデパートで彼女を見つけたものの記憶をなくしていて、その快復に奔走する伴と周りの人々の話が後半。

そこに前半で伴が描いていた久子の絵が宮本の手になっていてという流れから、ようやくその絵を久子に見せたものの、記憶は戻らず半ば諦めた中で伴は個展を開き大成功する。

その祝賀パーティ、部屋で待つ久子はふと手元のおもちゃのピアノに手を触れると、自然と「銀座の恋の物語」を奏でてしまい、一音でないながらも何かきっかけをつかむ。そこへ歌を口ずさんで伴が戻って来る。そして記憶がもどり、次郎の名を呼ぶ久子。二人は銀座の街へ出て行く。

そこに物語で絡んだ人力のおやっさんや密かに次郎に惹かれた婦警が通りかかって大団円
これが娯楽映画ですね。もう最高でした。

カメラアングルも素晴らしく、二人が語り合うところを下から見上げたショットの後ろに巨大なネオンがキラキラひかったり、様々なアングルで一つのカットをつないでみたりと、自由奔放なカメラワークも素晴らしい。シンプルでよくあるラブストーリーなのにこんなに素敵になる。これが映画黄金期の完成品という感じですね。もう拍手です。