圧倒される映画でした。三時間近くの長編でかつ手持ちカメラの多用で、始まりの頃はややしんどかったのですが、みるみる画面に吸い寄せられていって、ラストは何ともいわれない感慨を味わいました。
いったいなんと表現したらいいのか。絶賛すべきなのかどうかと考えさせられる作品でした。
全く壁のない舞台の上で表現されるドッグヴィルというなの小さな町での出来事。
扉以外は家の造りも植物も具体的には存在しないのに、住民の間の壁が目に見えるように演出され、しかも、善であったものが悪に変わり、ほのぼのした理想郷が実は現実の汚い人間の欲望と嫉妬のあふれる町であったり。
とにかく、複雑でもあり、ある意味で所詮、人間などこんなものだという平凡な世界でもあり、考えれば考えるほど情けなくなる救いのない世界です。
シュールな世界なのかリアルな世界なのか、その演出の秀逸さとニコール・キッドマンの魅力につきる映画でした。
カンヌで絶賛されたのはわかるような気がします。