くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アイランド」

あまり期待していなかった映画が意外に良かったりするとすごく得した気分になります。
今日見た「アイランド」はまさにそういう映画でした。マイケル・ベイ監督というと「アルマゲドン」「パールハーバー」「バッドボーイズ」など。
どれも私の好みの映画でもないし、私としては作品としても良い映画とは思いません。「アイランド」は私の好みの分野のSF映画であるというその一点だけで見に行ったのです。

ところが、映画が始まると、テンポの良い音楽をバックに海のシーンから入って、いきなり女性に海に突き落とされる主人公(ユアン・マクレガー)のシーンへとジャンプカットします。
この導入部分から、もしかしたらこの映画は良いんじゃないかという予感が走りました。

そして、気がつくとベッドの上のリンカーン・6・エコー(ユアン・マクレガー)の場面になり、現在自分がいる状況が的確なカットで紹介されていきます。一見平凡な近未来SF映画かと思わせるシーンがしばらく続くのですが、所々に挿入される短いカットの連続シーンで物語は次第に本編へと入っていきます。

こうしたストーリーのテンポの良さ、緩急をつけた展開とカットの連続は見事というほかありません、
短いカットに続いてスローテンポなシーンが、続いて物語展開も静のシーンが続いたかと思うといきなり動のシーンにつないで次々と見せるチェイスシーン。そうしたシーンの隅々にさりげなく娼入されている未来の情景。
列車がリニア式であったり、ビルの町並みの中をモノレール上の乗り物が走っていたりするかと思うと、昔ながらの車が道路を走っている。現代と同じ信号があったり、建ち並ぶビルも近代的ではないビル群。

これらのこだわりがこの作品を上質のものにしているのではないでしょうか。
しかも、息つく暇のないほどのアクションシーンやカーチェイスのシーン、逃亡劇のシーンなどが見事に物語の中でしつこすぎない程度にどんどん取り込まれ、しかもそれらのシーンにでてくる脇役の面々の描き方も的を得た見事なポイント演出で紹介してくれる。物足りなくもなく、しつこすぎず、それぞれの登場人物が生き生きと画面の中で活躍しているのです。

もちろん、主人公はユアン・マクレガースカーレット・ヨハンソンであるが、彼らの魅力ももちろん、脇ででてくる友人役のマック(スティーブ・プシェミ)の変に頼りになる存在感。
ラスト近くでその存在感を一気に噴出させる射撃部隊のリーダー、ローラン(ジャイモン・フンスー)などどれをとっても生き生きしているのである。しかも主人公達を食っているわけでもない。

マイケル・ベイ監督は映像派の監督といわれ、「パールハーバー」でも多用したスローモーションと短いカットのテンポの撮り方など、「アイランド」でもしっかりと、いやさらに完成された映像演出の力量を発揮しているのである。おそらくこれまでのマイケル・ベイ監督作品の中では最高傑作ではないかと思いました。