くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「姑獲鳥の夏」

映画「姑獲鳥の夏」OFFICIAL BOOK
映画「姑獲鳥の夏」OFFICIAL BOOK

ベストセラーである京極夏彦の「姑獲鳥の夏」を昨日観てきた。
京極作品というのはその独特の文体、やたら登場する漢字ワールドに閉口するほどの凝った文章の伝奇推理ドラマであるが、果たして映像化されたときにあの独特の世界が具現できるものかが最大の焦点であった。

ただ、期待は監督の実相寺昭雄。彼が監督するならおそらくこの原作を見事に映像の世界に作り上げて再構築してくれるであろうと期待十分であったのだ。

結果は、期待通りのできばえでした。
実相寺昭雄の画面構成は独特である。極端に斜めの構図を多用し、さらにセットとロケを巧みに組み込んでの物語構成は観ているものを虚構の世界に誘うのに十分であったのです。

物語背景は戦後間もない日本、舞台は旧家の医院、CMのキャッチフレーズ通り、おなかに20ヶ月近くも身ごもっていることができるのか?という奇怪なお話を中心に妊娠と同時に疾走した妊婦の夫の消息を探すのが物語となります。

推理ドラマであってホラーのようでもあり、その何ともいわれない不思議な世界は眩暈坂でのスポットライトの使用や、大きくパンしたり倒れるほどの斜めの構図を作ったり、俯瞰で撮ったりの繰り返しで、観ている私たちでさえめまいを覚えるような錯覚を覚えてしまう。

そんな画面の中で個性的な俳優陣が各自の個性を最大限に発揮しながらの演技派まさしく圧巻といわざるを得ません。
原作を知らないものには、もしかしたら難解でわかりづらい映画であったかも知れませんが、非常に原作の味を引き出していることは確かであり、さすが実相寺監督というべき映画でした。

4062638878
文庫版 姑獲鳥の夏
京極 夏彦

関連商品
魍魎の匣―文庫版
文庫版 狂骨の夢
文庫版 鉄鼠の檻
文庫版 絡新婦の理
文庫版 塗仏の宴―宴の支度