くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブロークバック・マウンティン」

ブローバックマウンティン

とにかく冒頭シーンから美しい雄大な自然の景色が目に飛び込んできます。
これほどまでに息をのむような景色をスクリーンで見たのは「ディア・ハンター」以来ですね。

遙か彼方に広がる地平線、その上にまるで絵の具を流したように美しい空のブルー、そして白い雲。しばらくは見とれてしまうほどの感動です。
そして物語は一台のトラックが走っているところから始まります。ジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール)が車から降りてくる。一方でキャンピングカーのような事務所の前にイニス・デルマー(ヒース・レジャー)がいます。なぜか彼が気になるジャック、車のバックミラー越しに見ていたりする。

やがて二人は牧場の番を一緒にすることになります。こうして本編に入っていくのですが、それぞれのシーンの背景に見える山々、川、森、総てがとにかく美しくて、目を奪われ通し。そんな中を馬に乗った二人が駆け抜けたり、たき火をたいてくつろいだりするのです。淡々と進む物語。しかしいつの間にか二人には友情以上の感情が芽生えはじめるという設定ですが、さすがにこのあたりが日本人には入り込みにくいことはないでしょうか。実際、ある夜に突然、二人が抱き合うシーンはこの作品のポイントかもしれないのですが、入り込めませんでした。

しかし、この映画のすごいのはこうした二人の物語が何十年にもわたって描かれていることです。しかも別れた二人はそれぞれ所帯を持ち、子供も出来ているのですから、ただならぬ作品であることは事実であり、物語は全然違いますが昨年の「ミリオンダラー・ベイビー」的な静かな展開が進んでいきます。このあたり、優れた映画といわざるを得ないのですが、一方で、今年も「ミリオンダラー・ベイビー」的な作品をアカデミー賞が選ぶのかは疑問ですね。結果は作品賞を逃していますが、納得といえば納得です。

二人の人生の物語はブロークバック・マウンティンをテーマにじっくりと描かれていて、ともすると重く、暗くなるところを美しい景色がカバーしていくという物語展開。そして、決して異常な世界ではない二人の男たちの恋物語は、私個人としては好感度はもてないにせよ、景色同様美しく純粋なものであることが伝わってきます。

数々の映画賞を総なめにする作品であることは納得といえば納得ですが、絶賛するほどの傑作かというと、個人的には嫌いな作品ですね。話題性によって見に行ったと言うところでしょうか。

そうそう、アン・リー監督の演出はあの「グリーンデスティニー」で見せた流麗なカメラワークとはうってかわって、静止した落ち着いたカメラワークで見せていきます。このあたり彼の才能はなかなかのものですね。