くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「扉をたたく人」

扉をたたく人

最初4館で公開されたのに、口コミと批評家の絶賛で拡大公開された秀作「扉をたたく人」
期待通りのすばらしい作品でした。そして一方で、いかにまだまだ自分が無知であるのかを思い知らされました。

物語を伝えてくるという映画の一つの面白さをまざまざと見せ付けられ、9.11テロ事件以降のアメリカの現状を目の当たりにされ、さらに一歩踏み込んで、人間に対する人間としての余裕がなくなってしまっているアメリカの人たちの苦悩さえも見せ付けられました。

すでに妻を亡くし、惰性に近い形で毎日の人生を送る日々の主人公ウォルター(リチャード・ジェンキンス)。しかしそこに現れる不法入国した一人のシリアからの移民タレクそしてその恋人ゼイナブ。

この出会いから、ウォルターがジャンベという太鼓に魅せられて、公園でふっ切れる場面までが実にすがすがしいほどにほほえましい。そして、このハッピーな展開から一転してタレクの逮捕、拘束、そして・・・と物語りは前半から中盤、後半へと次々とのその姿を変貌させてくるのです。

ジャンベのリズムと音楽効果が作品にバイタリティを与え、ぐいぐいと画面に引き込んでくる。一方でタレクの母が登場する中盤以降にまた、ささやかなロマンがほのめかされるとともに、拘束されるタレクのなんともいわれない運命さえもが、さらに作品に深みを与えてくる。

惰性で生きてきたウォルターの人生観に対するドラマのように見えながら、移民国アメリカの独特の国柄と、テロに対して異常に弱くなったアメリカ国民のもがきさえも見えてきて、ラストシーンの地下鉄のシーンがなんともいえないむなしさをかもし出してくるのには胸が熱くなってしまいました。

本当にいい映画でした。そして本当に考えさせられる映画でした。ぜひ見てほしいですね