くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「しのび逢い」

しのび逢い

太陽がいっぱい」のルネ・クレマン監督、ジェラール・フィリップ主演のラブコメディ。

もともと、好みのジャンルではないのですが、これもまた傑作という紹介でしたので見に行きました。洋画のクラシックをスクリーンで見る機会は少ないので、こういうチャンスは生かさないとと思うしだいです。

この映画、さすがに素晴らしいです。鏡を小道具にして、主人公リポア(ジェラール・フィリップ)の姿を映し出して、現実と正反対の虚構の自分に悩む姿を演出したかと思うと、口説こうとする女を巧みに鏡の中に配して複雑な心理状態を描くという手の込んだテクニックを駆使しています。さらにドアの縦の枠を画面に生かし、女をだましながらいわゆるプレイボーイに甘んじる主人公のコミカルな行動を見せる。

テンポの良い画面転換をさまざまな小道具で見せていくルネ・クレマンの演出はさすがに、平凡な監督と一線を隔したものであることが読み取れます。

物語は自分の妻と不仲になったところへ現れた妻の友人パトリシアを口説きながら、これまでの自分の女性遍歴を語るというもので、コミカルな中に、どこか主人公のむなしさも垣間見えて、単調なラブコメディに終始していない。そんな複雑な主人公を好演するジェラール・フィリップの演技力もさることながら、前述のさまざまな演出を組み合わせたルネ・クレマンの力量も見事なものです。

事の顛末は、女遍歴を繰り返した罰なのかあっけないラストシーンで、むなしさが頂点に達した後で、さらに一工夫した笑のシーンを挟み込むエンディングはなんともうなりますね。
確かに紹介どおり傑作ですが、どうも好みのジャンルではないせいか、途中何度か退屈なところも無きにしも非ずでした。