くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サロゲート」

サロゲート

冒頭、いきなり14年前、11年前、・・・と現代までのいきさつ、主要人物の紹介、そしてこの物語の見所ともいうべき問題点が手短なカットで描かれ、背後のテンポの速い効果音楽と共に一気に物語の本編へなだれ込むファーストシーンは見事である。

この導入部分で引き込まれた私たちは、これから、生身の人間ではなくサロゲートと呼ばれるアバターロボットが生活する近未来の世界へほうり込まれる。
ところが、さまざまな矛盾や問題点が噴出してきていて、いまや一触即発の状態。これがこの映画の舞台である。

背景の危うさを映し出すかのようにジョナサン・モストウ監督はほとんどのシーンをまっすぐなカメラアングルではなく、やや斜めに構えた不安定な画面で演出していく。
細かなカット、シーンのつなぎによる緊迫感と、この構図の不安定さが、この映画のサスペンス色を盛り上げていることは確かであるが、優れた導入部にもかかわらず本編に入るといまひとつ物語が盛り上がらない。
もちろんはでなアクションやらは登場するし、人間に瓜二つのサロゲートというロボットが次第に物のように見えてくる演出は見事であるのに、サスペンスの見所がいまひとつ、平坦なのである。しかも、アメリカ映画お得意の主人公夫婦の仲はいまや不安定というお決まりドラマでもお茶を濁している。

結局、この映画の中心の物語である「ロボットをその人間もろとも殺してしまう武器」の真相と、それを作った犯人を見つける謎解きまでもがどうもすんなりと解決してしまうのがもったいない。

ラストシーンもなるべくして予想していたとおりのエンディングで、クライマックスのはらはらも手に汗握るほどの緊迫感が生まれてこない。
1時間30分弱といまどきの映画にしては短いが、それならもっと充実度のある脚本として完成させるべきだろうと思う。

トップスター、ブルース・ウィリスと「ターミネーター3」のジョナサン・モストウ監督を従えてのB級映画の超大作というったイメージだった。