くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「NINE」

NINE

イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督による不朽の名作「8 1/2」を元に描いた名作ミュージカルをロブ・マーシャルが映画化。期待に胸を膨らませて見に行った。

ちょっと気負いすぎた感じがしないでもないが、冒頭の美女総出演のオープニングから一気に作品に引き込まれてしまう。
物語としては「81/2」とかわらないので必然的にあの名作がダブらざるを得ないが、あくまでフェリーニの独特の感性で作られた幻想世界とは別物であると納得させながら見た。

次から次に繰り広げられる美女と主人公グイド(ダニエル・デイ・ルイス)の情欲世界は時として舞台に繰り広げられる濃艶な美女の輪舞シーンと交互に描かれ、いやおうなく幻想的な世界に引き込まれる。

さらにモノクロームやトリック撮影で消えたり出たりを繰り返すテクニカルな場面を頻繁に用い、その上、主人公がまだ少年時代の物語も挿入する懲りようで、現実とも幻想とも似つかぬ映像芸術の洪水の中でもがく結果となる。

妻役のマリオン・コテイヤール、愛人役のペネロペ・クルスニコール・キッドマン、そして母親役の大女優ソフィア・ローレン、そして衣装担当で出演のジュディ・デンチなど豪華絢爛。これだけ囲まれると結局ダニエル・デイ・ルイスが影が薄くなっても仕方なかったでしょうね。

もがき苦しむグイドの姿が美女たちの中でこれでもかと描かれ、にぎやかなミュージカルナンバーが繰り返される展開は見所十分ですが、いまひとつ舞台から逃れられないうえに、原案がもつ幻想的なイメージに違和感があります。

そして、映画を撮ることをあきらめ、セットを壊したあたりではちょっとしんどさが気になってきたのです。
ところがそこで一気にクライマックス。そして大団円。ああ危なかった。あのままだれてしまったら完全な駄作になるところでした。

総じて、期待しすぎたとはいえ、期待以上ではなかったです。