くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「都会のアリス」(2Kレストア版)「ベルリン・天使の詩」(4Kレストア版)「JOINT」

都会のアリス

40年前くらいに初めてみた時は16ミリフィルムのスタンダードサイズ、相当に画面の荒れた印象があったが、今回の2Kレストア版で、監督が当初考えていたワイドスクリーンサイズにし、美しく蘇った。不思議なくらいにこの映画は大好きな一本で、青年と少女の不思議な心の交流に引き込まれてしまいます。監督はヴィム・ヴェンダース

 

アメリカ、浜辺の桟橋の下でポラロイド写真を撮る主人公のフィル。アメリカでの取材と記事を書かないといけないが一向に進まず、ポラロイド写真ばかり溜まってしまっている。金もなくなり。故郷のドイツに帰ろうとするがドイツの空港がストで飛行機が飛ばない。アムステルダムまでの飛行機はあると空港で言われるが、たまたま同じくドイツに戻りたい母と娘の親子と遭遇する。

 

翌日の飛行機に乗るために三人はホテルに泊まるが、母は9歳のアリスを残し、アムステルダムで落ち合いましょうという手紙を残して出て行ってしまう。フィルはアリスとアムステルダムについたが、母親が来ない。悲しむアリスを連れてアリスの唯一の手がかりである祖母の家を探すことになる。

 

しかし、アリスののらりくらりした記憶では見つからず、フィルはアリスを警察に預ける。ところが、アリスは勝手に警察を抜け出しフィルのところにやってくる。アリスが持っていた祖母の家の写真を手がかりと警察で調べた地域を頼りにフィルとアリスは祖母の家があるらしいルール地方へ向かう。

 

しかし、ようやく見つけた家には2年前からイタリア人が住んでいた。金もなくなってきたフィルは自分の実家にとりあえず行こうと川を渡る船に乗るが、そこで行方不明になっていたアリスを探している警官と遭遇。既にアリスの母はミュンヘンに来ていて探しているという。アリスは警官と一緒にミュンヘン行きの汽車に乗ることになる。金もなくなっているフィルに、汽車賃をアリスはあげる。そして二人が列車に乗り、窓の外を見る場面でカメラは空に舞い上がり映画は終わる。

 

淡々としたロードムービーですが、おませなアリスが時折見せる悲しい表情と、次第にフィルと仲良くなって行くくだりのドラマがとっても素敵で、ラストシーン、離れたくない気持ちをさりげなく出すアリスには思わず微笑んでしまいます。大好きな映画の一本です。やっぱり良かった。

 

ベルリン・天使の詩

30年ぶりくらいの劇場見直し。やはりこの映画は唯一無二の作品だと思います。一人台詞で展開して行くので少々退屈と言えばそうなのですが、カメラワークで語って行くという演出の面白さと、モノクロとカラーを効果的に配した画面作りはさすがに名作と言える一本だと思いました。監督はヴィム・ヴェンダース

 

雲の切れ目から刺す光、ビルの屋上からベルリンの街を見下ろす天使の場面から映画は幕を開ける。彼の名は天使ダニエル。この世界には彼のような天使がたくさん存在し、時に人間に寄り添って癒しの気持ちを与えたりしている。人間の心の声を聞きながらベルリンの街を飛び回る天使たちの映像が一人称カメラを多用したカメラワークで展開する。

 

ダニエルは、あるサーカスで天使の姿で空中ブランコに乗る美しい女性マリオンを見つける。何かにつけ彼女のことが気にかかるダニエル。彼はまた、世界が生まれる頃から存在している自分という影のような存在のあり方にも疑問を持っている。ここにアメリカから映画のロケで来ている俳優のピーターがいる。彼はダニエルが見えないのだがその存在を感じることができて話しかけてくる。

 

天使の姿は子供たちには見えるのだが大人には見えない。天使の同僚のカシエルはそんなダニエルの姿をじっと見つめている。映像はほとんどがモノクロームだが時にカラーになる瞬間があり、ダニエルがかすかに人間に傾いた時のような気がする。マリオンのサーカス団はこの夜を最後に解散が決まっていた。ダニエルはカシエルと並んで歩いている時、カシエルはダニエルに足跡がついているのを見つける。次の瞬間、ダニエルはその場に倒れ空から鎧が降ってきて目を覚ます。ダニエルは人間になったのだ。

 

画面はオールカラーとなり、ダニエルは颯爽と人間になったことに嬉々とし、鎧を売って金を作り、ピーターの撮影現場に行くと、ピーターもかつて天使だったのだと告白する。ダニエルは、マリオンの行方を探し、夜の街を彷徨う。やがてとあるバーでダニエルはマリオンと出会う。かねてから存在を感じていたマリオンはダニエルとキスをして映画は終わって行く。

 

今回のレストアで、初公開時に十分な色彩を再現できなかった画面を再現できたそうで実に美しく蘇っていました。ちょっと退屈な映画ではありますが、流麗なカメラワークがとっても美しく、映画が一つの詩篇のようになっているのが素晴らしい。やはり名作です。

 

「JOINT」

よくある話とはいえ、展開は面白いのですが、映画のなんたるかが全くわかってないのと、キャラクターの演出が一貫していない上に、クローズアップのみの映像と真っ暗な画面で何が何か最後までわからなかった。観客を無視した絵作りは最低の出来栄えの一本でした。監督は小島央大。

 

半グレの石神が刑務所を出てくるところから映画は幕を開ける。名簿ビジネスに手を染めるのだがふとしたことからカタギのITビジネスに投資して、ヤクザ組織から関係を絶とうとするが、弟分が殺されたことからその復讐のために外国人犯罪組織や指定暴力団との関係を取らざるを得なくなって行く。結局、韓国へ脱出して映画は終わるのですが、物語はこんなものなのかわからないし、それぞれのエピソードも上滑りで雑。ただ、リアリティを求めたやりたい放題の素人映画作りのバイタリティが見え隠れするのが唯一の救い。まあ、お金を払うほどの作品ではなかった。