くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ガールフレンド・エクスペリエンス」「ボローニャの夕暮れ

ガールフレンドエクスペリエンス

ガールフレンド・エクスペリエンス
シャープな映像である。ひとつひとつのシーン、ショット、画面それぞれが研ぎすまされている。
ほんのひとときの物語をばらばらにして、時間を前後させてつなぎ直し、ドキュメントタッチで映像を語っていくスタイルはフィクションでありながら直接訴えかけるリアリティを生み出しています。

ストーリーは主人公チェルシーがそのクライアントと週末すごそうと誘われ、一方の彼氏クリスは知人から男ばかりでラスベガスへ行こうと誘われている。プライベートジェットの中のシーンが時折挿入されながら、チェルシーがさまざまなお客と接するシーンやクリスとの会話するシーンなどか繰り返される。

有名ブランド店や高級レストランがさりげなく登場し、チェルシーの会話の中にも身につけているブランドの衣装がさりげなく語られる。洗練された会話と2008年当時のニューヨークの人たちの心の動きがちょっとした会話の中に生かされている演出が素晴らしい。

結局クリスはラスベガスへ、二人のマンションには二人の写真が残され、ジェニファーは週末を過ごすためクライアントより先にホテルへ行くが当の相手から家族のもとへ戻る決心をした電話が入る。
そしてチェルシーはとある宝石店のクライアントに抱かれて映画は終わります。

デジタルカメラでとらえた映像が非常にスタイリッシュにニューヨークを切り取り、高級コールガールの言動を通して語られる人々のドラマがモダンである。さらに恋人のいるコールガールとしてチェルシーとクリスの微妙な心の揺れ動きがさりげなく画面から漂い出てくる上にキュートで魅力的な主演のサーシャ・グレイはこの映画の見所といえます


ボローニャの夕暮れ
題名だけでは非常にのどかな映画のような印象を受けるが、何を思ってつけたのか、内容は家族の絆の物語を描いたドラマである。
監督のプーピ・アヴァーティという人はイタリアでは巨匠と言うことなのだが、残念ながら一本もこの人の映画を見たことがない。

さて、この映画ですが、全体をセピア調のモノクローム的な色彩で統一、序盤の血の赤や中盤の爆弾などの炎の黄色などをパートカラーのように採用して画面にこだわりを見せています。

物語は第二次大戦前夜の1938年イタリアのボローニャ、高校の庭を教師である主人公のミケーレと同じ高校に通う娘のジョヴァンナの姿が映し出されます。
娘のことを思うあまりよけいなことをした父ミケーレ、そのためにジョヴァンナは親友を殺してしまうことになります。そしてミケーレの妻デリアを含めた三人の家族は次第にぎくしゃくし始めます。

向かいに住むミケーレの親友である刑事がダンディでなかなかの好演。この人物を交えて、美人なのに、娘の犯した罪に異常に臆病になるデリア、執拗に娘をかばおうと必死になる父ミケーレ。バラバラになりそうで皮一つでつながったような家族の絆が、物語をぐいぐいと引っ張っていき、ジョヴァンナの個性的な神経症と潔癖さがストーリーにスパイスを与えて展開していく様は秀逸です。

物語は第二次大戦を挟んで精神病院に収容されたジョヴァンナと、彼女を支える父ミケーレ、耐えきれず離れていったデリア、彼らが再び一つになる様を描いているのですが、カメラが淡々ととらえているかのようでありながら、時に、大胆に人物の縫うようにとらえたり、後半、時の流れを速めるかのように暗転を多用した演出に変わっていったりと、作品全体に独特のリズムが作り出されています。

刑事の家族も戦火の中死に、一人残った刑事もやがてファシズムに荷担したとして銃殺され、戦後7年たち娘が病院から退院してきて、映画館で、別れていた母デリアと再会。娘に一緒に帰ろうと言われて、再び家族が一つになるところで映画が終わる。このさりげない感動が素晴らしい。