くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「太陽がいっぱい」「憂愁平野」

太陽がいっぱい

太陽がいっぱい
何度かスクリーンで見たこともある大好きなサスペンス映画の一本。今回、見直してみてそのストーリー構成の緻密さに感嘆してしまいました。
大まかなストーリーは今更なのですが、トムがフィリップを殺してからの展開が実に綿密に練られていて、全く退屈しない。しかも、二転三転していく展開がラストシーンまで観客を離しません。

まず、フィリップになりすます序章、マルジュの叔母にばれかけて転居する序盤から第二の殺人を犯すまでの中盤。さらにそのカモフラージュと最後の目的であるマルジュを手に入れようとする後半から、一気に終盤、そしてなにもかもてに入れたラストから地獄へ堕ちるエンディングへ。なんどみてもあのラストシーンは背筋が寒くなりました。やはり名作ですね。


「憂愁平野」
森繁久彌追悼番組で本日見たのは豊田四郎監督作品。山本富士子最後の映画出演作品である。

まず、映像美がうっとりするほどに美しい。
映画が始まってすぐに窓の外に真っ赤に映る花(彼岸花?)、さらに遠ざかる汽車の煙が夕日を受けてほんのりと赤みを帯びている遠景、そのほか、至る所に芸術的ともいえる景色や色彩を見事に画面の中に取り込んだ映像が続きます。まさにこれが豊田四郎の世界ですね。

物語は浮気を重ねる会社重役の夫(森繁久彌)に詰め寄り嫉妬する妻(山本富士子)を主人公に、森繁の浮気相手に新珠三千代が扮し、三人の確執を描きながら、仲代達矢扮する新珠のいとこを冷静な第三者に配置した現代劇です。
新珠三千代扮する美沙子は女学生時代からの理想を追い求める当時の今風女性を演じています。

たわいのない浮気物語ですが、妙に亭主関白的な森繁扮する賢行のふてぶてしいまでの行動にストレスを募らせる妻亜紀がうっとうしいまでに森繁を追いつめ、美沙子に食い下がる様子は当時としてはかなりモダンな展開だったのかも知れません。
ただ、そうした物語よりもとにかく映像が美しく、軽井沢の霧に煙る森のシーンや古風なたたずまいのホテルの姿、さらに車が走るシーンさえも芸術的なまでにうっとりしてしまいます。

物語の好みは好き嫌いもありましょうが、この映像を楽しめただけでも十分堪能できる一本でした