くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「家族はつらいよ2」「ちょっと今から仕事やめてくる」「美

kurawan2017-05-30

「家族はつらいよ2」
さすがにこれほどの脚本がかけて、ここまで職人技のような演出ができる監督は、現在山田洋次を置いて他にいないだろう。それほど非常に練りこまれたセリフの数々と、さりげない細やかな演出が見せる絶妙のホームドラマだった。できれば、もっと自由に山田洋次に映画を取らせたら日本映画史に残る傑作が次々と生まれるだろうに、松竹が許さないのだろうか。本当に残念です。

物語は本当に素朴な話。やたら頑固で、息子たちのいうことも聞かない父親周造、いい年をして車を運転するが、車は傷だらけなので、免許を取り上げようという話から物語が始まる。

そこへ、父親の小学校の頃からの幼なじみ丸田と偶然再会し、久しぶりに仲良し同級生できる酔いしれ、周造の家に一晩泊まったものの、翌朝死んでいるのが見つかる。

事業に失敗して一人ぼっちだった丸田の死を通じて家族の暖かさを映し出して行くという展開は、いまどきありきたりかもしれないが、細かいセリフの端々に非常にうまい言い回しが散りばめられているし、タイミング良いさりげない演出で笑いを生み出す演出力はさすがで
山田洋次監督は嫌いとはいえ、脱帽せざるを得ない完成度を見せる。

どうもこの手の映画は苦手ながら、映画の出来栄えは納得せざるを得ない一本でした。


「ちょっと今から仕事やめてくる」
監督が成島出と見た時点で唖然としてしまった。なんせ、物語の構成が実に良くないし、見せるべき部分を当たり前のように画面に登場する安易さ、さらに先が読めてしまう演出
これが成島出だったかと思ってしまった。それほど普通の映画だったし、正直終盤は退屈に近かった。原作が弱いというのもあるのかもしれない。

ノルマで追い回される主人公隆は、疲れ切って、帰り道のホームで、気を失いかけ転落しそうになる。そこに飛び込んできたのが関西弁でやたら陽気なヤマモトという若者。同級生だというヤマモトと意気投合した隆は一緒に飲み、やがてその影響もあって仕事に活気を取り戻して行く。しかし、ふとしたことでヤマモトは三年前に自殺した若者だと知る。

このあたりからはファンタジーであり、フェイクのシーンが散りばめられるが、その演出が実に平凡でつまらない。最初から、どこか違うなと思ってしまうのである。さらにヤマモトの吹っ切れたようなキャラクターが今ひとつ面白みが足りない。

そして、一旦明るくなった隆も再び落ち込んで、今度は本当に自殺しようとしたところをヤマモトが駆けつけて助ける。そして、隆は仕事を辞める決心をする。

直後、ヤマモトは隆の前から姿を消すのだが、隆が調べてみれば、三年前に自殺したのは自分の前に現れたヤマモトとの双子の兄弟であることがわかり、孤児院で延々とその経緯が説明される。このあたりからがとにかくくどいのだ。

南のある孤島でボランティアをするヤマモトとの元に、隆がやってきて一緒に活動を始めるというエンディングもありきたりすぎて、畳み掛けるような演出もなされていない。どうも成島出監督が、おかしいなと思える一本でした。


「美しい星」
三島由紀夫原作の奇妙な話という前宣伝と大好きな吉田大八監督作品というだけで見に行ったが、正直奇妙な映画だった。おそらく原作の味がもともと奇妙というのもあるのだろうし、現代に設定を移したことで、伝奇的なムードがなくなったのかもしれないが、原作を読んでいないのでなんともいえない。ただ、いつもの吉田大八監督の色は冒頭の部分のみで、リリー・フランキーも今一つ面白みもないし、あまりいい映画ではなかったという印象です。

人気のお天気キャスター、フリーターの息子、女子大生、平凡な主婦というよくある家族。ところが突然何かにつかれたかのように、キャスターは火星人に、息子は水星人に、娘は金星人だと言い始めるし、彼らに近づく人たちも奇妙。

で、何が起こるかと思えば、地球温暖化を食い止めないといけないとか、人間は自然の一部だから、環境が変化するのも人間のせいではなく地球がそもそも営んできた自然の一部なのだというものやら、娘は金星人の子供を妊娠するなどの展開になる。唯一の地球人であり妻は妙なネズミ講の水を売り始めたりする。

結局何もかもが破綻し、水はまがい物だとわかり、地球温暖化の話もうやむやと消え、キャスターは末期の癌で、娘も巧みに男に騙されて妊娠させられただけというクライマックスだが、なぜかキャスターの男は宇宙船に乗せられ地球を後にする。

見下ろすと美しい地球に家族が見送っている姿が映りエンディング。って、なんのことやらである。三島由紀夫原作という鳴り物入りがあるので、余計に訳が分からず終わった。未だにわからない映画だったな。