くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」

約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語

非常に物語の展開が平坦なので退屈になっておかしくない映画でしたが、それとなく最後まで見てしまいました。作品の出来映えは中程度だったかと思います。でも、見終わってそれなりに心に残る作品でした。

物語は単純。一人の男ソブランは葡萄畑で働く小作人の息子。今、彼は同じく葡萄畑で働く女性セレストと恋に落ち、結婚を考えています。しかし結婚に対する父の反対や至高の葡萄作りなどで悩んでいる。そんな彼の元にある夜天使ザスが現れます。そして、ソブランの思いに同情し、葡萄の苗木を与え、ふつうでは育たない一角に植えるように伝えます。そして、すべてがうまく行くであろう旨を語り、毎年同じ日にここで会うことを約束します。

やがて、ソブランは思いを寄せる女性と結婚、苗木も定められたところに植えますが、産まれてくる子供のためにナポレオンの軍隊に従軍します。ようやくの思いで帰ってきた彼には父の死が待っていますが一方で娘も生まれていました。
植えた苗木も徐々に大きくなってきていました。しかし二人目の男の子ニコライは病で死んでしまう。家族を守ってくれなかった天使にくってかかるソブランですが、天使はニコライが天国で楽しく暮らしていると告げます。

やがてソブランはその土地で次第にワインづくりの実力者となり、領主にも一目おかれる存在となる。そこへ領主の姪オーロラがやってくる。程なく領主が亡くなりその美しいオーロラが跡を継ぐことになり、オーロラは叔父の遺言通りソブランを雇い二人はこの上ないワインを作るために奮闘します。
しかし、ふとしたことで天使と仲違いをし、天使はいずこへともなく消えてしまう。時を同じくして葡萄畑の葡萄が病気で全滅。しかし、オーロラはくじけることなくもう一度苗木を植え、天使にも戻ってきてもらうようにソブランに訴える。

そして、再度戻ってきた天使がソブランに頼んだのは自らの羽を切って人間になるということ。その約束を果たし、人間になったザスとオーロラ、そしてソブランの家族と共に至高のワインを目指します。やがてソブランも老いて死の床でザスからできあがったワインを口にして死んでいきます。

物語はつまり一人の男ソブランの半生を描いているのです。緑を基調にした霞がかったような映像と、固定せずに手持ちでとらえるカメラワークが最初はどうも入り込みにくかったのですが、中盤から後半、次第にしっかりとした展開が見えてきて、ラストは淡い感動さえもたらしてくれました。