くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「セーラー服と機関銃」「ションベン・ライダー」

セーラー服と機関銃

セーラー服と機関銃
薬師丸ひろ子のアイドル映画の様相を呈している作品ですが、相米慎二監督らしいカメラワークを駆使した秀作の一本です。30数年ぶりに再見しました。

懐かしさもありましたが、相米監督の独特の映像世界に改めて驚嘆しました。

延々ととらえる長回しと歯切れの良いカッティング、そして背後に流す音響効果の独特の色合いにどんどんその魅力に引かれていきます。

黒フィルムを挿入してさりげないせりふをすっと挿入させて場面を切り替える妙味、いったいどこまでカメラが追いかけるのかと思わせるようなワーキング。

大仏の膝に座る星泉とその下で同級生と目高組の組員が取り留めのなくふざけている。カメラが引いて、泉がバイクに乗せてほしいと言って一人の組員がバイクに乗せてどんどん走っていくシーンまでノーカットで映す。

星泉とマユミがバーのカウンターで飲んでいる。ミラーに映る星泉のカメラが正面へさらにカメラが引いて窓の外にでる。いったいどんなトリック?と思わせられる。

物語の展開や背景がマンガチックなのは赤川次郎の原作によるところが大きいけれども、一つ一つのシーンからシーンへの展開のおもしろさと長回しのリズムのおもしろさで単純なアイドル映画に終わらせない魅力がある。

そして、改めて薬師丸ひろこの演技力と存在感、そのカリスマ的な魅力にも惚れなおしてしまいました。

ラストでテーマ曲が流れると懐かしさで涙があふれてしまった。年をとりましたね私も。

ションベン・ライダー
相米慎二監督独特の長回しとロングでとらえる映像はもちろん、シュールな笑いと演出で独創的なムードを生み出した初期の代表作。

ストーリーは単純ながら、散りばめられた不可思議な演出世界がとにかく楽しい。一種、「自主映画的な若さあふれる映像」と呼べなくもないエンターテインメントが満載の一本でした。

夏休み直前のプール、補習で泳ぎの練習にきているブルース、辞書、ジョジョの三人の中学生に悪ガキのような集団がヤジを飛ばしながら騒いでいる。外にはバイクの音があふれ、それを制止する先生の声が響いている。そんな中、悪ガキにリーダーのような太った少年デブナガが突然やくざ風の男に車に拉致されつれさられる。その少年に仕返しをできなかった主人公たち3人はその少年を追って横浜、熱海と繰り出していく。

途中、警官が次々と走ってきてはシャボンの画面に埋もれていったり、一匹狼のチンピラ廠兵が仲間に入ったもののどこかコミカルな描写がなされたり、高層マンションの部屋のそとにあがる花火がいつの間にか室内にあがっていたりと摩訶不思議な映像世界が炸裂。

拉致された少年は最初は人違いだったようだが、拉致目的の本物の犯人に再度拉致される。二人のやくざ山と政がデブナガを拉致したまま親分との取引に使おうと話を進めていこうとしたり、ヤクザの島を横取りしようと財津一郎ふんする珍妙な親分が横槍をしてきたりとどんどん話が荒唐無稽に広がっていく現実的か非現実的かわからない展開が初々しいほどに新鮮なのです。これが相米慎二の魅力かといわれればそれまでだが、挿入歌があり、ダンスもあり、とにかくいき当たりばったりにどんどんどん展開するバイタリティあふれるストーリーに引き込まれてしまう。

結局、一夏が終わり、無事救出されて、なるようになって元のさやに収まる。一夏の一瞬一瞬の出来事を鮮烈な映像とシュールなショットでとらえていく描写にわくわくしてしまうのである。一つ一つの個性的な演出を語りつくせないほど多種多様なテクニックと破天荒な展開がとにかく過ぎ次と物語を推し進めていくのです。

エンディングになって赤い点で暗転するのは「セーラー服と機関銃」のエンディングの赤い丸と共通する物がありますね。終盤になってやや展開がくどいように思えなくもないのですが、自由奔放な演出の妙味に踊らされるという感じです。

残念ながら色あせが激しいためにロングの多いシーンでは登場人物がぼやけてしまうのが非常に残念でした。