くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロボット」「女ばかりの夜」

ロボット

「ロボット」
そのはちゃめちゃな展開が話題のインド映画です。オリジナルは3時間を超えるらしいですが、海外版は二時間半に短縮。たぶんダンスシーンが大幅にカットされたのでしょうが、映画ファンとしてはちょっと残念。でも期待の一本
を見てきました。

ギャグとエンターテインメントの壁が次々と破壊されていく展開、ばかばかしくてやってられないと思いながらも爆笑する訳ではなく、その吹っ切れたシーンの連続に見入ってしまう。全く、インドという国は不思議な映画感覚を持っているものだと感心してしまいました。

オープニングタイトルもやたら長いのですが、エンドクレジットもとにかく長い。ここまでするならカットするなよといいたいくらいである。

見るからに着ぐるみのロボットが主人公バシーガラン博士の研究室に入ってくるところから映画が始まる。今にも一体の人型ロボットが完成を待っている。できあがったロボットはバシーガラン博士とうり二つで、ものすごい力と記憶力を持っている。名前はチッティと名付けられる

博士の上司、ボラ博士がこれをねたみ、政府の承認をとにかく妨害する。バシーガラン博士には魅力的な恋人サナがいる。ある日、異常分娩の処置をこなした(いいのか??笑い)チッティはサナに喜びのキスをもらう。それをきっかけに、感情をプログラムしかけていたこともあってチッティに感情が芽生える。そしてサナを愛し始めるのだが、そのために蚊と話をするエピソードなどばかばかしいシーンもあるものの、バシー博士との三角間家の中でチッティはバシー博士に壊され、捨てられる。粗菓氏、バラバラになったチッティは自分でゴミ捨て場でよみがえり、ボラ博士によって悪のプログラムを組まれ破壊活動を開始。ボラ博士を殺し、自分と同じロボットを大量に作り、磁気モードで合体して球体になったり巨人になったりして軍隊と台場とるを繰り返すシーンが最大の見せ場です。ここからが後半部分のはちゃめちゃな展開が炸裂。

とはいえ、さすがにこのへんになると慣れてきてしまってやや退屈を感じはじめてくる。ストーリーに格段の工夫が少ないという欠点が出始めた感じですね。でもあれよあれよとばかばかしいほどのバトルシーンが炸裂。バシー博士の策略で何とか危機を切り抜け、ロボットを倒し、チッティを元のプログラムに戻す。

結局、政府判断でチッティを破壊することになり、バシー博士の目の前でチッティ自ら自分を分解していくという涙のエンディングになる。20年後、博物館に飾られたバラバラのチッティを見学する学生たちのショットでエンドタイトルである。

どこかで見たようなストーリー展開ではありますが、吹っ切れてしまうアイデアとリアリティとかどうとかを無視してひたすら突っ走るシーンの連続、さらにインド映画お得意の集団ダンスシーンも交え、楽しめる二時間半でした。ただ、これがオリジナル版だとしんどかったか、かえってダンスシーンで息抜きしてよけい楽しめたかは疑問ですね。香港映画にはない別種類のエンターテインメント映画という感じの一本でした。

「女ばかりの夜」
田中絹代さんの監督五作目です。
昭和33年の売春禁止法施行後、不法に売春を繰り返す女性たちを逮捕し厚生施設で補導し世の中にもう一度送り出す施設を舞台に、まともにいきようとすればするほどに再び引き戻されていく現実を描いた社会ドラマです。

厚生施設の寮長が淡島千景。映画はその寮からなんどかふつうの仕事に就くためにでていくものの、そこで様々な差別に出会い、戻ってくる邦子の物語が中心である。

特に際だった映像も演出も見られないものの、酒屋の店員、工場の工員、バラ園の手伝いと転々と変わる仕事の中で根強く残る人々の視線をシリアスにとらえて描かれていく。

冒頭、婦人会の女性たちが厚生施設白菊寮を訪れるところから始まり、そこでの女性たちの姿を描写した後に物語の中心が一人の模範的な女性邦子へと集約していく語り口になっている。

冒頭の婦人会のメンバーの一人で一番物わかりの良い志摩夫人のバラ園に最後の最後に邦子は就職する。そこで出会う好青年早川にプロポーズまでされる。しかし早川の実家の親に反対され、それを志摩夫人が邦子に納得させるという場面で結局、理解のありそうな志摩婦人でさえも邦子にたいし一部でそういう視点を持っているということを描写するあたりの残酷さは田中絹代の視点でもあるように思える。

結局、自ら身を引き海女さんになって暮らす邦子のシーンでエンディングである。今の物語なら当然早川とハッピーエンディングなのだろうが、さすがに世間の考え方もこの映画の中の志摩夫人のレベルが限度であったという時代色がまざまざと感じさせられる一本でした。