「パシフィック・リム アップライジング」
前作はもっと面白かった気がするのですが、今回はなんとも雑な物語だった気がします。ストーリーに工夫がないというか、人間描写が希薄というか、悪役に魅力がないというか、ただロボットと怪獣の戦いを描くためだけの映像に終始したのがなんとも平凡。監督は前作に変わりスティーブン・S・デナイト。
前回の戦いから十年後が舞台となり、まだまだあちこちに戦いの跡が残り、イェーガーの残骸も散らばっている。そのイェーガーの部品を盗み小さなイェーガーを作り上げたアマーラにジェイクが出会うところから物語が始まる。アマーラが作った小振のイェーガーがもっとコミカルに愛くるしかったら面白かったかもしれないが、ただ小さいだけとしか見えないのが残念。
中国の企業が無人のイェーガーの開発を進め、完成したら世界中にイェーガーを配置し、再度裂け目から怪獣が出てくるのに備えられるという。しかし、そのイェーガーが暴走、なんとか残った有人のイェーガーで迎え撃つ。
なんと暴走の正体は、ニュートン博士が怪獣のとシンクロしているうちに毒されてしまい、裂け目から怪獣を呼び出すために無人イェーガーを操る。しかし無人イェーガーはあっけなくプログラムを停止させられ、なんとか飛び出した三体の怪獣と有人イェーガーが戦うクライマックスとなる。のだが、実にしょぼいのです。
完全にCG頼みの映像で、これという演出に工夫もないバトルシーンは、さすがに、この手のものに慣れっこになった現代では通用しません。ロボット対怪獣のありきたりの派手なバトルでエンディング。ニュートン博士の存在感も今ひとつ面白くないし、ヒーロー側のドラマも今ひとつ盛り上がらない。結局、ギレルモ・デル・トロが監督に入らなかったのと脚本の弱さでしょう。
「黒い天使」
非常にあっさりとした強引なストーリーのフィルムノワール。監督はロイ・ウィリアム・ニール。
ストリートの看板のアップ、一人の男マーティンがマンションを見上げる、その視点に沿ってカメラがある一室に入っていく。そこにはマーティンの妻マーロウがいる。マーティンが部屋に入ろうとすると、守衛に、マーロウから入れるなと言われてエイルと止められる。そこへ入れ替わりに、マーロウの浮気相手カークが部屋に入るのだが、入ってみると、マーロウが殺されている。
こうして映画が始まる。カークは犯人の最有力とされ、逮捕され、裁判ののち死刑が確定する。
夫の無実を信じる妻のキャシーは、マーティンと真相を究明に奔走するのが本編。
キーになるのはマーロウが持っていたはずのブローチなのだが、どうも怪しいダンスホールのオーナーに目をつけ、マーティンとキャシーがピアニストと歌手としてそのホールに入り込み、なんとかオーナーの金庫に近づき中を見るがブローチはない。
いつしか二人は惹かれ合い、マーティンは、キャシーに愛を告げ、このまま二人で生活しようと迫るも、キャシーは拒絶。自暴自棄になったマーティンは酒に酔い、バーで、自分が一人の女にブローチをやったことを思い出してしまう。そのまま泥酔して病院へ担ぎ込まれる。
そして、そこでマーティンは酒に溺れ、すれ違いになっていた妻マーロウを勢い余って殺したことを思い出す。つまり、アルコールのせいで記憶が飛んでいたという真相。カークの死刑執行の時間が迫る中、真相が明らかになり、映画が終わる。
これという映像演出もない普通の作品です。こういうたわいのない一本もフィルムノワールの面白さかもしれません。
「脱獄の掟」
普通の映画というか、一番癖のないフィルムノワールという感じの映画でした。監督はアンソニー・マン。
刑務所にいる主人公ジョーが恋人のアンの面会を受けている場面から映画が始まる。いかにも清純で真面目な女性というイメージのアンは、ジャックのことを待っていると告げる。入れ替わって面会に入ったのはパットという女性で、ジョーは間も無く脱獄し、分け前の五万ドルを受け取る計画があり、その手はずを暗にパットの指示していた。
そして、なんとか脱獄するが、車の故障で街をすぐに出ることはできず、ひとまずアンの家に逃げ込む。自首するように説得するアンも車に乗せて三人でまんまと検問を抜けて街を出る。
ジョーが脱獄したことで、彼を裏切ったリックらは返り討ちにするべく待ち構える。途中でアンを解放し、パットとジョーは船に乗り込もうとするがリックたちがアンを拉致し、ジョーをおびき寄せようとする。
アンを助けるため乗り込んだジョーはそこで銃撃戦となり、リックたちはもちろんジョーも命を落とす。オープニング同様の通りのカットとパットの一人セリフで映画が終わる。侘しいラストですが、典型的な映画的なエンディングだった気がします。
霧や街灯の明かりなどを有効に使ったモノクロ映像が実に美しい作品で、構図もしっかりしていて、やはりアンソニー・マンの力量を感じさせる一本でした。