くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ソハの地下水道」「コンシェンス裏切りの炎」

ソハの地下水道

ソハの地下水道
いったいいつまで描かれるのか、ナチスユダヤ人迫害。この映画はポーランドを舞台に、下水修理t泥棒を仕事にしていた主人公ソハがユダヤ人を地下水道にかくまう話である。実話のリアリティを縦横に走る狭い地下水道を丹念なカメラワークでえがいていくアグニュシュカ・ホランドの演出は時としてこちらまで息苦しくなる迫力がある。

全編、暗い汚い世界なので気持ちがどんどん沈んでいくのが自分でもわかる。しかも、人間ドラマに抑揚を持たせた演出をしていないので、ひたすらこの人間味あふれるソハが利益のためにユダヤ人をかくまう姿を切々と描いていく。

一方のユダヤ人もソハをあがめるわけでも頼るわけでもなくどこかに疑念を持ちながらの俗っぽい描写を徹底するので、今までのユダヤ人迫害映画に比べ逆に暖かみを感じさせてくれるのも事実です。

そして、クライマックスは雨水におぼれるユダヤ人たち。それを助けに必死で向かうソハの姿から終戦、明るい世界に生き残ったユダヤ人がでてきて一気に画面は明るい日差しの中に解放あれる。その解放感のあとテロップでその後のソハの不幸な死とそれぞれの人たちのその後が流れてエンディング。

見応えのある作品で、光と狭い空間をうまく利用したカメラを効果的に利用して一瞬の好きもなく緊迫感がラストまで途切れない。そして最後の最後の映像の解き放ちで観客を自由にしてしまう。しんどい映画ですがレベルの高い一本だった気がします。

「愛の渇き」
以前、ヌーヴォーで見ていたのですが、別の題名と間違えて再度見てしまいました。しかし、この映画は何度見てもすばらしい。

蒸せ返るような妖艶な官能の世界、色ぼけした女の情念、音と映像のテンポといい、二度めながらやはり傑作である。改めてこの映画の湾ランク飢えの映像芸術の世界に酔ってしまいました。


「コンシェンス 裏切りの炎」
「密告・者」のダンテ・ラム監督作品。香港警察映画お得意の裏切り者パターンであるが、素直におもしろい。全く香港映画というのは面倒な前置きとか背景とかそっちのけでどんどん物語が本編に入っていって展開していくからいいね。それでいて、しっかりと起承転結で締めくくってくれる。

この映画も作品としての完成度うんぬんよりもとにかくおもしろい。映画が始まるとモノクロのストップモーションで、地下道で警官が撃たれているシーン、娼婦が客に馬乗りになるシーン、警察署で押収された麻薬がおかれているシーンなどがどんどん映されていく。何のことかわからないままにメインタイトル、そして本編が始まる。

そして、物語の中で冒頭のストップモーションのシーンがひとつひとつ明らかになっていくという仕組みになっている。その鮮やかさはなかなかの者で、導入部分、人物の名前に翻弄されていたのがなんとなく頭に入って物語が見えてきて、霧が晴れるような構成になっているのは見事なものです。もちろん、秀でたような画面や演出はないのですが、よく考えるとたわいのない悪徳警官の物語に引き込まれている自分がいる。

悪徳警官になったケイという男のその動機もはっきりしないし、悪者組織の背景も今一つ見えない。ただ、悪者と警官がいて情報を流す悪徳警官と正義の警官がいる。この正義の警官も過去に妻を殺された暗い面があるが、それもエピローグで初めて明らかになる。

つまり、登場人物の面倒な人物描写は無視して進むストーリーが爽快なのである。ただ、楽しんでもらうことを最優先にした映画作り。これが香港映画の醍醐味ですね。楽しめる一本、それにつきる映画でした。

そうそう、ケイのフィアンセ役にビビアン・スーがでていました。