くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シュシュシュの娘」「スパイラル ソウオールリセット」

「シュシュシュの娘」

典型的なインディーズ映画ですが、単純に面白さのエッセンスをかき集めた感が最高の一本。少々、移民反対を糾弾するという偏ったメッセージが見え隠れしないわけではないけれど、痛快なアクション映画というか、マカロニウエスタン調というか、遊び心も堪能できる一本でした。監督は入江悠

 

田舎の小さな街、遠景からカットを繋いである一軒の家、テンポの良い曲に合わせて、一人の女性未宇が軽いダンスやらをしている。彼女は市役所に勤めているがうだつが上がらず目立たない。両親はいなくて祖父吾郎の面倒を見ながら毎日を送っている。この日、市役所の先輩間野が吾郎の元をおとづれていた。吾郎はかつてジャーナリストで、市長が進める外国人排除の条例に反対をしていて市役所では疎まれていた。

 

間野は上層部から公文書の改竄を強制されていて、それを悔いた間野は市役所の屋上から飛び降りる。未宇は泣きながら帰るが、途中青年会のリーダーでもある司と会い、送ってもらう。間野の死を聞いた吾郎は、未宇に、間野が隠した公文書偽造の証拠動画を奪取するように言う。実は未宇の家系は代々忍者だった。とまあ驚きの展開。未宇は早速忍者衣装を縫う。これも笑う。そして、何か道具はないかと吾郎に聞くが、秘伝書は大空襲でほとんど焼かれたという。そして、未宇が目立たないのはそれが特技で、ちくわが好きなので、吹き矢を作ることになる。遊ぶ遊ぶ(笑)

 

そして忍者衣装で間野の家にやってきたが、すでに役所の事務員が来ていた。事務員はまんまと動画のUSBを盗み、上司の車に乗る。上司と事務員はできていて、早速カーSEXを始める。未宇は吹き矢でパンクさせようとするがうまくいかない。そこへもう一人の忍者がやってきて吹き矢で車をパンクさせる。その隙に、未宇はUSBを盗む。ってあの忍者は誰?は置いといて、吾郎がUSBを開こうとするとパスワードが入っている。未宇は、近所の外国人労働者が働く産廃業者へ行く。そこでは市役所職員だからと断られるが、一人の外人が間野から預かったというメモを渡す。そこにパスワードが書かれていた。なんとも簡単。

 

で、吾郎はそれで動画を開き、クラウドにアップしてマスコミに広めようとする。やたらデジタルに詳しい吾郎がまた笑う。一方、未宇は密かに惹かれ始めていた司にデートに誘われ、帰りに神社の境内でカーSEXをする。ところが戻ってみると家が荒らされ、USBが盗まれていた。吾郎は病院へ入る。どうやら自警団のような集団も暗躍しているのを知る。親友からも司とやったことがバレて絶交になった未宇は、山にこもり、毒薬を作る植物を手に入れ調合、一方体も鍛える。親友も、司は実はヤリチンの最低野郎だと仲直りする。

 

自警団や市長らが集まる居酒屋にやってきた忍者姿の未宇は、次々と吹き矢で倒していく。そして、全員退治してバイクで帰ろうとするが、ガス欠になり歩いていると、もう一人の忍者が現れる。実は司だった。未宇は躊躇うことなく吹き矢で司も倒し、悠然と夕日の中に歩き去って、カット編集で遠景になって映画は終わる。背後にウエスタン調の曲がかかる。

 

たわいない小品ですが、限られた予算で楽しめるように作り上げた典型的なインディーズ映画。でも、カット割やカメラワークはしっかりしてるので、十分に見れる一本です。遊び心満載の楽しい映画でした。

 

「スパイラル ソウオールリセット」

無理矢理なんの意味もない惨殺シーンを繰り返し、犯人に繋がるサスペンスも工夫もないただのスプラッターホラーという感じの作品で、「ソウ」とのつながりの理由もないし、途中で犯人は大体分かるほど脚本も普通やし、期待はしてなかったとはいえ、目を背ける残酷シーンだけで眠くならなかった感じの一本でした。監督はダーレン・リン・バウズマン

 

賑やかなお祭り騒ぎの中、一人の男ボズ刑事が歩いている。横をひったくりが通り抜け、前の女のカバンを持って走るので、ボズは後を追って地下道へ。そこで何者かに拉致され、目覚めると舌を挟まれ、地下鉄の坑道に吊るされていた。目の前にあったテレビから画像が流れ、舌を抜いて逃げるか、地下鉄に轢き殺されるか選択しろという。そして、地下鉄に轢かれて、映画は、警察署へ。

 

かつて、悪徳警官を報告したために署内で嫌われている刑事ジークは、若い相棒ウィリアムをつけられ、不機嫌なまま地下鉄での事件へ向かう。ジークの父は元署長で、彼が署長時代に好き放題に行った警官の不正の結果、殺人事件こそ減ったが、一般市民は容赦なく抹殺されたりしていた。ジークの相棒ピートも、証人を強引に銃殺した過去があった。フラッシュバックで描かれるこの辺のシーンはかなりしつこい。

 

ジークに届いた動画に、裁判所に書かれたスパイラルの落書きがあったので、そこへいくと、ボズの舌が置かれていた。さらに、ジークに協力してこない刑事たちは次々と惨殺され始める。彼らはかつて、不正行為を普通に行なってきた悪徳警官でもあった。しかも、ウィリアムさえ殺されてしまう。

 

追い詰めていくジークは突然拉致され、気がつくと、手錠でパイプに繋がれているという「ソウ」第一作へのオマージュへの後、今は警官もやめたピートが吊るされている現場に出くわす。そして、結局ジークはピートを助けられず、数日前から行方不明の父マーカスがいる場所へ向かう。そこにいたのは死んだはずのウイリアムだった。彼はピートに証拠隠滅のために殺された証人の息子だった。ウィリアムはジークに一緒に悪徳警官を退治しようと提案するがジークは拒否。しかも、マーカスは血を抜かれる装置の中で吊るされていた。ここまで来るとなんでもありです。

 

ウィリアムは緊急連絡でSWATを呼び、ジークに最後の選択を迫るが、結局、ジークはウィリアムの仲間になることを拒否し、マーカスを助けようとするが、ウィリアムともみ合っているうちにSWATが突入してきて、マーカスは撃ち殺されてしまう。一方、ウィリアムはまんまと脱出し映画は終わっていく。

 

ウィリアムが犯人だというのはすぐにわかってしまった。彼だけが過去の悪徳警官の類ではないのに殺されるのがおかしいのだから、さすがに脚本が甘い。さらにやたら凝った殺戮の装置がどうやって作られていくのか全く描写のない雑さ。ソウシリーズを再開するなら、もうちょっと工夫して練り込んだ脚本と演出が見たかったです。