「君と歩く世界」
事故で両足を亡くした女性の感動の人間ドラマかと思っていたら、何の、もっと奥の深い物語でした。しかもマリオン・コテイヤール扮するステファニーはどちらかといえばわき役に近く見えるのです。監督はジャック・オーディアール。
映画が始まると、水の中の息苦しいシーン、そしてタイトル。画面が変わると、一人の男アリが息子のサムとヒッチハイクをしているシーンに始まる。彼らは姉の所でやっかいになるためにやってきたのだ。
こうして物語は始まるが、このアリという男の物語が中心に流れていく。
映像のテンポがすばらしく、背後に使う音楽のセンスも見事で、どんどん映像の中に引き込まれていく。
ディスコの用心棒をしていたアリは、そこでステファニーと知り合う。しかし、深い仲になるわけでもなく別れたが、その数日後ステファニーは事故で両足をなくす。
このマリンワールドでのシーンも非常にリズム感あふれる映像で、盛り上がる客席、テンションのあがるシャチのショーのスタッフ、そして突然の事故、へとつながっていきます。
数ヶ月後、自宅に引きこもっていたステファニーは、以前聞かされていたアリに電話をして再会。アリはステファニーを浜辺に連れ出すのだが、そこでステファニーは久しぶりに海にはいるのだ。両足のないステファニーが泳ぐシーンを、きらきらと光るフィルターをかけての撮影のまぶしいこと。
こうして二人は恋人でも友人でもない関係が始まる。アリは闇の格闘で金を稼ぐようになり、そこにステファニーもついていくようになる。格闘に夢中になるアリを見て、次第にステファニーも勇気がわいてきて、義足をつけるようになり、かつてのマリンワールドの仲間にも会いに行く展開が本当にすがすがしい。
一方、スーパーなどに監視カメラを違法に設置する仕事をしていたアリは、そのカメラで首になった姉から追い出され、アリは息子をおいて一人まっとうなボクシングの試合にでるべく旅立つ。
このあたりの展開がちょっと唐突であるが、そこから一気にラストかと思いきや、アリに会いに来た息子サムと凍った湖で遊んでいて、サムが氷の割れ目に落ちるシーンへと、さらなる物語が展開。
一命を取り留めたサム、ボクシングの試合でチャンピオンになったアリ、そして、彼はステファニーに愛していると告げる。
全体の映像のリズムがすばらしいし、最初にも書いたが、組み立てたカットやアングルのテンポが抜群で、ストーリーテリングもリズム感に富んでいるので、終盤の荒い展開も気にならずにラストシーンを迎える。なかなかの秀作でした。
「男たちの挽歌Ⅱ」
ご存じ、「男たちの挽歌」の続編で、監督はジョン・ウー。
即興に近い演出でどんどん撮影していくストーリー展開は、ある意味かなり荒っぽいし雑である。しかし、映画の導入部とクライマックス、ラストシーンをきっちりと締めるあたりのうまさは、やはり一見の価値があると思う。
前作で死んだマイクとうり二つの弟ケンを登場させて、前作と同じキャストを配置、今回は男のドラマというより復讐劇であるが、おきまりの二丁拳銃による乱射、派手な爆薬シーン、撃たれても撃たれてもなかなか死なない主人公たちの演出が、なんとも香港映画的で楽しい。
決して、一級品の出来映えではないものの、なんか見終わって、おもしろかったなとにんまりできる典型的な香港映画でした。