「旅立ちの島唄〜十五の春〜」
ゆっくりゆっくり、先品のテンポが実に緩やかに流れる。わずか一年間の一人の少女優奈の物語なのに、個の不思議なまったり感はなんだろうと感じながら、物語を追っていくといつの間にかラストシーンになるのです。
南大東島を俯瞰で移すファーストショットが実に美しく、カメラがナレーションの後に、今まさに行われているボロジノ娘のコンサートの場面に移ると、このゆっくりしたときの流れの中に引き込まれてしまう。
主人公優奈は14歳、今夜は彼女の先輩が15歳で本当の高校への旅立ちの時の最後のコンサートである。この島には高校がないので、15歳になると本当へ移らざるを得ない為に、必然的に別れがくるのである。
優奈の母親は本当に移り住んで久しくなる。姉が突然帰ってくる。北大東島の青年が優奈に告白するが遠距離恋愛の上に、彼氏の家庭の事情でいつの間にか切ない別れへと流れていく。
母親には恋人ができたようである。一人また一人自分から遠くなっていく気がする優奈の寂しさが後半まで描かれていく。それでも、島の人々は誰もが顔見知りで家族のようである。
やがて優奈も15歳別れのコンサートがやってくる。母は恋人と別れ手伝いにやってくる。それでも父とは離婚するという。姉夫婦は離婚するのかと思いきや、夫が姉を迎えにやってきて、また家族は一つになる。優奈本人は父を残して本土で一人暮らしするために旅立とうとしている。
南大東島を離れる船のシーンでエンディング。これといった驚くような演出も映像もない。ただ、さりげないほどに温かい人間の生活の物語が語られていく。
夫婦、兄弟、恋人、親、そんな言葉の上のつながりではない本当に人間同士の心のつながりをさりげなく映像で語りかけてくる、そんな不思議なまったり感のある映画でした。
「箱入り息子の恋」
センスのいい人が作れば、とってもしゃれたコメディになりそうな題材なのに、今一歩リズムに乗りきらずに終わってしまった残念な一本でした。
まず最初に気になったのが、カメラ。
「今日はいい天気ね」というせりふが頻繁にでてくる、しかも土砂降りの雨のシーンも繰り返されるにも関わらず、晴れた日の画面がどんよりと曇ったまま。これは色彩演出の悪さか、カメラの特性を理解し切れていないのか、どうみても曇り空である。さらに、風船にカメラをつけたようにふらふらと横に上に漂う手持ちカメラが妙に気になる。長回しをしたいのはわかるが、どうも目について仕方ない。もちろん、こういった色彩にせよカメラワークにせよ、わざとならわざとでもいいが、それが作品のムードづくりになっていない気がする。
さらに、キャラクターの描き方である。前半ででてくる、役所でヤリマンといわれている女と主人公健太郎との飲んだくれるシーンの意味?この人物は必要?そして、最初の見合いでぼろくそに言われた健太郎が自宅で突然切れて暴れ回る。後半で、牛丼やで奈穂子を見かけた健太郎が会社に戻って暴れる。このキャラクターの非統一性はなにかな?最初の登場シーンで、ひたすらゲームをする。無表情で画面に向かう彼のキャラクターで始まるショット。なぜ切れるの?
さらにそれぞれの親の描き方も統一性にかける。
映画は35年間、彼女もいず、ひたすら役所勤めで、昼は自宅でご飯を食べる主人公のロボットのような姿から始まる。さらに、そんな息子が心配で代理婚活に出かける両親のシーン。このファンタジックな映画的な導入部が実にいい。
さらに、買い物に母と出かけた奈穂子が土砂降りの雨に遭う。母が車を取りに行っている間、じっと待つ彼女の前を傘を差した無表情の健太郎が通る。目の見えない奈穂子は健太郎をじっとみているように見える。気になる健太郎は彼女に傘を貸す。
後日、奈穂子の母がその傘を自宅で発見、健太郎と見合いすることにする。
この下りも本当にファンタジックでほほえましい。少々テンポが悪く切れがないためにだらだらと見えるが、それをさしおいても映画的なのです。
ところが、デートの途中ですぐに二人はSEXへすすむ。これもまた余りに稚拙な展開である。
さらに、奈穂子の母が傘のことを映画の中盤で奈穂子に話す。奈穂子も知っていたという。ネタバレ早すぎ。このあたりから、脚本のセンスの悪さが顕著になってくる。
そして後半、奈穂子を助けるために事故にあった健太郎。けがが完治してもなかなか会えない。
終盤で奈穂子の部屋のベランダにあがってくる健太郎。「ロミオとジュリエット」であるが、それもあまり作品のおもしろさを生み出してこない。蛙の使い方も中途半端。
結局、奈穂子の部屋で再びSEXしているところで両親に見つかり、健太郎はベランダから落ちてまたまた怪我。そして病室から点字の手紙を奈穂子に送り、それを読む奈穂子のショットでエンディング。
う〜ん、あまりにもものたりない。今一歩、もっと最後まで手を抜かないで練りに練っていい作品にしてほしかったというのが感想です。残念。