くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「地獄でなぜ悪い」「ティファニーで朝食を」

地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い
園子温版”映画に愛を込めて”。
とにかく、映画が始まって、観客はスタートラインにたたされ、よーいどんの合図で一斉に走り始める。ゴールは百メートル先の短距離。あれよあれよとめまぐるしいほどに展開する、なんでもありの奇想天外な映像世界に飛び込んでいくのである。

そして、クライマックス、笑いが一気に沈黙に変わり、その後、スクリーンに釘付けになり、気がついたら平田がフィルムを抱えて夜の町を奇声を上げながら走ってくる画面を目にしてふと我に返るのだ。

映画はかわいい少女が歯磨きのコマーシャルを歌っているシーンから始まる。実はこの少女武藤組の一人娘で、母の静恵が女優にすることを夢に見ている。

映画は10年前に。
八ミリを勝手にめったやたらと映画を撮りまくっている主人公平田。訳も分からず、言いたい放題にカメラを回しているスタッフと走り回っていて、学ランを着た男たちの喧嘩に出くわし、そこにカメラを向けていく。そこで知り合ったのがブルース・リーかぶれの佐々木。

冒頭の少女が家に帰ると、そこは血の海で、一人の男池上が血塗れで隅に倒れている。その男に駆け寄る少女。武藤組と池上組の抗争がやくざ戦争として続いている。背後に仁義なき戦いのテーマが流れタイトルが物々しくでる。

武藤組の組長の妻しずえが殴り込んできた池上らやくざ四人を包丁で滅多付きにし、警察に捕まり尋問を受けている。過剰正当防衛で10年の服役になったことで、人気子役になりかけていた娘のミツコのCMもなしになる。

これらのシーンが交錯し、めまぐるしくナンセンスな映像とシーンが細かいカットの編集で展開していく。

やがて10年がたち、しずえが出所してくる。すっかりミツコは大女優になっていると信じているしずえを落胆させるために武藤組組長の大三が知恵を絞り始める。

一方の平田等は相変わらず映画を撮ろうとしているが、アジトにしていた映画館は閉館、スタッフたちも年を食って、佐々木は愛想をつかせている。

ミツコは交際していた男に逃げられ、武藤組に捕まっているが、池上組の殴り込みに乗じて逃げ出し、途中でしがない青年橋本と逃避行する。橋本はかつてテレビでミツコのCMをみて惚れ込んでいた。

しずえの出所が迫って、武藤大三はこれから池上組に殴り込む手配を進め、それを映画にしてミツコを主演にしてでてきたしずえに見せることを決意する。そして、橋本は映画の神様のほこらに投げ込まれていたかつての平田の手紙を見て平田等を誘い、殴り込みシーンを映画にすることに。

武藤組が撮影機材をそろえ、かつて少女時代のミツコに助けられそれ以来ファンの池上の事務所へ。こうして怒濤のクライマックスのお膳立てがそろう。とにかくはちゃめちゃで、手もカメラを駆使した細かいテンポで走り抜けていく映像に翻弄されるのだが、ここクライマックスではさらに園子温色がスケールアップしていく。

最初は東映やくざ映画のごとく剣劇がスタートするが、次第にエスカレートし、首は飛ぶは、手足は乱れ飛ぶは、もうは並のスプラッターのレベルを超えていく。ここまで若干笑いながらみていた観客は次第に無口になってい、次にスクリーンにのめり込んでしまう。全く園子温は恐ろしい監督だと思う。

武藤第三の首は飛ぶは、橋本の頭に刀が刺さるは、ミツコも踏み込んできた警察の機関銃で蜂の巣になるは、めちゃくちゃ。主要なキャストがすべて死んでところで、平田が起きあがり、カメラのフィルムや録音テープを抱えて、「傑作ができた」と奇声を上げながら夜の町へ飛び出して走り抜けてエンディングと、まぁ、やりたい放題にやったなぁという印象の怪作でした。

血しぶきや、グロテスクなシーンは当然のごとく画面を覆っていくし、誰が主人公かわからないほどに好き放題に振り回すカメラワークがめまぐるしいし、テンポよいというより、飛び跳ねるようなリズム感で突っ走っていく。あっと言う間にラストシーンでほっと一息してエンディングというより、平田の駆け抜け終わったところに「カット」の声がかぶったりと、もう好き放題である。楽しいという言葉がやや語弊がある暗いのひとときを体験しました。


ティファニーで朝食を
ブレイク・エドワーズ監督全盛期の名作中の名作。というかヘンリー・マンシーニの「ムーン・リヴァー」を知らない人はおそらくいないでしょう。

このレベルの名作になると、どこがどうという具体的なことはほとんど書けない。とにかく見てください。それだけである。

ニューヨークの町に黄色のタクシーがすーっと入ってくる、そしてジバンシーの服に身を包んだオードリー・ヘップバーンが降り立ち、宝石店ティファニーの前でパンと飲み物を食べるファーストシーンから、雨の中、一度は捨てた野良猫を探し、見つけて抱き上げ、ポールと抱き合ってキスをするラストシーンまで、まさに”スクリーンの向こうにロマンが見える”という言葉がぴったりの夢のようなシーンが続く。

もちろん、本編は、金持ちを渡り歩きながら生活する貧しい主人公ホリーが、やがて本当の愛を知ってハッピーエンドになるお話である。

大好きなシーンは、宝石店ティファニーで、お菓子のおまけの指輪に「イニシャルを彫りましょう」と快く請け合う店員の対応のシーン。

はじめてみたのは40年ほど前になるので、名シーン以外はほとんどおぼえていなかったけれど、やっぱりオードリー・ヘップバーンが大スクリーンに映し出されると、映画を見ているなぁと感動してしまいますね。