くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グレートデイズ!夢に挑んだ父と子」「青空娘」「暖流(増

kurawan2014-09-02

「グレートデイズ!夢に挑んだ父と子」
いわゆる、障害者を扱った感動ものである。空撮を多用した解放感のある画面づくりと、クローズアップに息づかいを交えた緊迫感のあるシーンを挿入し、爽快なリズム感を生み出した映像演出がとても好感な作品でした。

映画は、空撮で今にもスターとしようとして海岸に集まっているアイアンマンレースの選手たちをとらえるショットから始まります。そして、その中にいる一組の親子のカット、タイトル、一年前にさかのぼって本編へ。

山で仕事をする、主人公ジュリアンの父ポールのカット、ヘリコプターでポールが家に戻ってくると、そこに足の不自由な、車いすに乗る息子ジュリアンがじっと見つめている。

失業したポールは、今までないがしろにしていたジュリアンとなかなか心の交流我もてないが、そんな父の心を気遣ってか、ある日、障害者の子供と親のアイアンマンレースの記事を父親に見せる。

最初は、拒み、母も反対するが、熱意で納得させたジュリアンはポールと練習を始める。スタートまで8ヶ月しかないのである。

しかし、雄大に広がる山々をバックに描く練習シーンは本当に爽快で、さりげなく周辺の人々の応援する姿もしつこくなく、あくまでジュリアン親子に焦点を絞った演出が美しい。

そしてレースの当日、スタートからゴールまで、淡々とカメラが追いかけ、常道として、見事ゴールインしてエンディング。しかし、広がる山々や、空、海、山道、夕方からゴール前の夜景をとらえる画面がとっても美しく開放感にあふれているために、見ている自分たちも、しんみりとするより、どんどん未来がその先に見えてくるように感じる。

よくある話といえばそれまでだが、本当に爽快な映画でした。


「青空娘」
増村保造監督特集でみる。
デビューから二本目の作品だが、さすがに女を描かせると、増村はうまい、そう呼ぶにふさわしい一本でした。

物語はたわいのない話で、女子校を出た主人公有子が、実は本当のお母さんが東京にいると聞き、東京の父のところへいく。しかし、有子の母は、父が妻がいたにも関わらず交際した会社の女性で、当然、本妻やその娘たちから疎まれる。

しかし、持ち前の明るさで、どんどん自分の道を切り開いていく姿を名優若尾文子が見事に演じる。

増村作品らしく、男は誰もがふがいないところが実にユーモア満点にスクリーンを彩り、次々とオーバーラップするように映像が切り替わり、せりふが切り変わるリズム感がとっても心地よい。

冒頭、東京にでてきた有子に、駅前で、次々と話しかけてくる人々のシーンから、迎えの女中につれられるまでが小気味良い導入となり、その後のリズムを見事に構築していく。

結局、有子は家を出て、本当の母を見つけ、フィアンセもできてハッピーエンドなのだが、こんなたわいのない話をテンポよく仕上げる手腕はさすがだと感心してしまう。

とっても、心地よい作品でした。


「暖流」
吉村公三郎作品を増村保造監督がリメイクしたもの。

さすがに増村保造監督が描くと、女の情念が絡み合う中に男の権力意識が錯綜し、見事な社会ドラマとなって完成されている。いや、社会ドラマというよりやはり人間の情念のドラマかもしれない。

病院を舞台に、その経営再建に乗り込んでできた男と、看護婦、病院長の娘、出来の悪い息子などのエピソードが縦横無尽に絡んでくる。

人間関係を赤裸々に描いたという言葉がぴったりの作品で、その隙間のないくらいのストーリー展開の緻密さは、増村作品ならではの醍醐味である。
左幸子扮する看護婦の、男への極端な思いこみを見せる演技、一見普通ながら、したたかに自立する院長の娘、いかにもドラ息子だが、それが義母と似通って描かれる存在感、そして、主人公がいとも簡単に権力によって排除されるラストシーンにいたっては、現代においてもふつうに通ずる迫力が見受けられる。

手前にどんと人物を配置し、奥の深い構図で、背後から視線を送る人物を配置する独特の構図も多用し、増村保造監督らしい映像演出でスクリーンから訴えかけてくる。

まさに増村監督初期の秀作をまざまざと見せつけられた思いでした。