くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ケープタウン」「闇を横切れ」「美貌に罪あり」

kurawan2014-09-05

ケープタウン
南アフリカケープタウンを舞台に、二人の刑事の活躍を描くシンプルな刑事物語である。しかし、舞台となるケープタウンの特殊な姿がちらほらとかいま見られ、緊張感が終始ゆるまないストーリー展開と、ふつうの刑事ドラマの裏にある、民族問題や、黒人問題、特殊な犯罪形態などがちらほらとかいま見られる映画でした。

一人の少年が窓から外を見て「父さん」と叫んでいる。外には大勢に取り囲まれ火だるまになっている男が一人。時は1978年である。

少年は、外の人々に見つかり逃げる。走る足がやがて、大人の足になり、その足は自宅でルームランナーにのっているカットへ。時は2013年に移る。

公園で一人の少女が撲殺される事件が起こり、黒人の刑事アリと白人のブライアンのコンビが捜査を始める。どうやら特殊な麻薬が絡んでいて、その麻薬を吸引すると暴力的になったり、自殺してしまったりする。

こうして、物語はこの麻薬の出所、その真相へと迫っていく展開へ。やがて、これは黒人をすべて排除するための化学兵器の開発の一端であるとわかり、複雑な展開に進んでいく。

当然、真犯人は突き止められ、黒幕も逮捕されるが、その逮捕劇の中でアリは殉職してエンディング。

冒頭の少年はアリであることは自明の理であるが、ストーリー展開や映像にわずかの隙を持たせずに、次々と先へ進む展開が、とにかくスピード感満点である。

確かに、名作と呼べる刑事ドラマに比べればきわめて凡作であるが、それでも飽きさせないおもしろさと、微妙に描かれるお国柄、その場にすむ人々の生き方などが、平凡な刑事ドラマより一歩踏み込んだ出来映えになっていることも確かな映画で、好き嫌いはともかく、まぁ、みて損をするほどの作品ではなかった。


「闇を横切れ」
脚本に菊島隆三を加え、音楽をいっさい排除し、地方の市長選にまつわる新聞報道と汚職の問題をサスペンスタッチで描いた社会ドラマで、もちろん女の物語は存在するものの、どちらかというと男のドラマとして描かれていく。

新聞社の編集長が口ずさむ口笛のみを
BGMにして、緊張感あふれるタッチで描いていく物語は、さすがに増村保造の世界でもある。

中盤で、スパイとなって敵側に情報を流している人物が誰かは見えてくるが、そこから一気に大団円になだれ込み、まるでフィルムノワールのようなエンディングで閉める脚本のおもしろさは、ちょっと他の増村作品と、色合いが違う感じがしないでもありませんが、ちらほらと女の存在を見え隠れさせのは、やはり彼の色でしょうか。

個人的には、胸焼けしそうになるほどの情念を描いた作品の方が好きですが、今回の一本も、増村保造の手腕を知る上では、必見の一本だった気がします。


「美貌に罪あり」
増村保造作品にしては、かなり緩い一本で、見終わった後の疲労感はほとんどなく、全体に増村作品と思えないといっても過言ではない映画でした。

ただ、ラストシーンの唇のアップやシュールな舞台での勝新太郎と山本冨士子の踊りの場面などは増村保造の世界ですね。

物語は、戦前は大地主でしたが戦後の農地改革で落ちぶれ細々暮らしている農家の娘たち、その周辺の男たちのドラマである。そこに、踊りの家元の話が絡んで描かれる男と女、さらには古きものから新しいものへの移り変わりを描いていく。

圧倒的な存在感の杉村春子、さすがと思える踊りのシーンを見せる勝新太郎の存在感が、増村作品常連の若尾文子たちを完全に食ってしまい。そのために本来の増村保造の世界が見えなかったといえるのかもしれません。

増村作品の中では中の下レベルの一本かもしれませんが、さすがにこれだけ俳優がそろうとそれだけでも見応えがあります。やはり日本映画黄金期はすばらしいですね。