くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「日本のいちばん長い日」(岡本喜八版)「パージ」

kurawan2015-07-21

「日本のいちばん長い日」(岡本喜八監督版)
圧倒される。2時間40分があっという間に終わってしまった。まるで、終戦のその日に立ち止まっているような臨場感と緊迫感、そして、サスペンスフルなストーリー展開、迫真の登場人物の迫力、鬼気迫るリアリティ、もう、身動きできなかった。

映画は、日本列島を俯瞰するカットから始まる。終戦直前までの流れを手短にナレーションで処理し、物語は、徐々に、8月15日を迎えるほんの数日前になる。そして、日本最大の緊迫した一日の始まりが迫ってくる。

ストーリー構成と展開のサスペンスは橋本忍ならではの脚本の見事さであるが、それ以上に、ほとんど男だけの登場人物それぞれの俳優の、もの凄い演技合戦である。

一つ一つのせりふ、一つ一つの挙動すべてが、物語を張りつめさせ、ほんのわずかに気を抜いただけで切れてしまうような怖さを見せてくれる。もちろん、岡本喜八ならではの演出の冴えもみごとで、クローズアップと場面転換のリズム感のうまさ、建物内部の閉息感の緊張など、巧みに織り交ぜた演出が、この歴史の一瞬をスクリーンに映し出していきます。

日本が負けたということに、日本中が疑心暗鬼になり、強行派の軍人たちは、本土決戦するために、玉音放送を阻止しようとする。追いつめられた若い兵士が、次第に狂っていく怖さ、下から突き上げられ上から責められる上層部の幹部たちの苦悩、次の原爆をおそれ、一瞬も待てない時間との戦い。何もかもが、わずか二時間あまりの瞬間に描かれていく様は、もう言葉を越える迫力です。

まもなく、リメイク版が公開されますが、この歴史の一場面を再現してくれことを祈ります。

全く、見事な傑作でした。


「パージ」
うって変わって、典型的な駄作にであった。B級映画だと納得すればそれまでだが、何の工夫もない一本。監督はジェームズ・デモナコである。

一年に一日だけ、殺人などの犯罪が許されるパージと呼ばれる一日が存在する近未来を舞台に、ある家族が遭遇する恐怖を描く。

パージの日の約一時間前から物語が始まる。防犯システムの販売で裕福になったサンディン家族、近所からはねたまれ、娘ゾーイの彼氏は、ゾーイの父親、つまりジェームズ・サンディンにつきあいを反対されていて、ジェームズを恨んでいる。

息子のチャーリーがパージの夜、逃げていた黒人を助けて家に入れたことから、暴徒がサンディンの家をおそってくる。というのが本編。いかにも適当な導入部と、軽い展開、例によって、ちょっと頭が悪いのは女性という設定もありきたり。

結局、恐怖の一夜があけてエンディング。ただそれだけのたわいのなさすぎる物語と、何の面白味もない演出に辟易してしまった。

イーサン・ホーク主演というだけだったが、なんとも陳腐な映画だった。