くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「GAGARINE ガガーリン」「ボブという名の猫2 幸せのギフト」「選ばなかったみち」

「GAGARINE ガガーリン

ファンタジックな映像表現がなかなか素敵な作品でした。無重力を描写する左右に傾くカメラアングルと、現実の物語ですがどこか幻想的な雰囲気と、何気なく展開する青春ラブストーリーも美しいちょっとした佳作です。監督はファニー・リアタール、ジェレミー・トルイユ。

 

宇宙飛行士のガガーリンガガーリン団地の植樹にやってくるモノクロフィルムから映画は幕を開けます。あれから数十年経ち、老朽化が目立つガガーリン団地は取り壊される方向で進んでいた。この団地に住む黒人のユーリは、なけなしのお金でさまざまな材料を集めては友人のフサームや密かに恋心を抱くディアナと団地内を修理して回っていた。しかし、政府の調査員が共用部分の調査に来て、結局、危険だということが判明し取り壊しが決定、半年の間に立ち退くようにという指示が出る。

 

次々と団地を去る人々を見送りながら、ユーリは、一人部屋に残っていた。そんな彼はディアナとモールス信号で会話をすることもしばしばとなる。ディアナはロマで、近くの空き地でキャンピングカー暮らしをしていた。やがて解体業者が入り、次々と室内が壊されていくがユーリは、宇宙ステーションの動画をもとに、部屋を打ち抜いて、植物を育てたり、水を確保したりして暮らし始める。そんな彼を見つけてフサームとディアナもユーリを応援するが、やがて解体の日がやって来る。

 

かつての住民たちが見守る中、爆薬が仕掛けられ、カウントダウンが始まるが、ユーリは一人宇宙服のようなものを着て屋上にいた。ユーリが残っているのを知るディアナは、爆破を止めようとするが、すでに誰もいないということでカウントダウンが進む。そして最後の最後。突然、団地の照明が点滅する。それはユーリが送ったSOSだった。ユーリは体調を崩して、脱出できず屋上に倒れていた。ディアナたちが駆けつけユーリを助け出す。そして、団地は解体される実際の映像が被って映画は終わる。

 

ユーリとディアナがクレーンの上に登る場面や、ユーリが無重力になったように団地内を浮遊する場面など、幻想的な映像も散りばめられ、現実の厳しさをファンタジーでオブラートに包んだようなとっても素敵な仕上がりになっていました。

 

「ボブという名の猫2幸せのギフト」  

これというものもない普通の感動物語。まあ、たまにはこういう毒も何もないほのぼのした作品に浸るのも息抜きになっていいかなという感じです。前作はそのオリジナリティで惹かれましたが今回は完全に二番煎じでした。監督はチャールズ・マーティン・スミス。

 

一冊目の本が売れ、出版社のパーティにジェームズがやってくる所から映画は幕を開ける。早々に引き上げてきたジェームズは、帰り道、ホームレスの男性が警官らに取り押さえられている現場に出会い、そのホームレスを助けてやる。そして、自暴自棄な言葉を吐くホームレスに、ジェームズはかつての最後のクリスマスの話を語り始める。

 

その日暮らしをしていた頃のジェームズは、愛猫のボブとストリートミュージシャンをしたり雑誌を売ったりして生活をしていた。動物福祉局の職員は、ボブが健康で暮らすのにふさわしい環境で飼われているか常に監視していた。物語は、クリスマスが近づいた頃、ボブとジェームズ経験した様々な不幸な出来事や、心温まる出来事を淡々と描きながら展開する。

 

そして、ジェームズは、福祉局に引き取ってもらう方がボブにとっていいのではないかと、引き渡す決心をするが、彼らの周りの人々はボブはジェームズと一緒の方がベストだと応援メッセージを送り、福祉局もそんな応援メッセージに応える。そして、現代のクリスマス。ホームレスの青年も一緒になってジェームズの家でクリスマスをするところで映画は終わる。

 

お決まりの展開で、特にオリジナリティもないゆるゆるの映画ですが、ほのぼのと劇場を出ることができました。

 

「選ばなかったみち」

なんとも鬱陶しい映画だった。結局、娘の人生さえもぶち壊していくボケ老人の後悔映画。最後は娘にも突き放されるという映像演出は面白いものの、そこに至る過程がひたすら後ろ向きのボケ老人の物語というのはたまらなく陰気でした。監督はサリー・ポッター。

 

モリーが、父レオを歯医者と眼科に連れていくために、電話連絡をしている場面から映画は始まる。いくらかけても電話口に出ず、やっと父の家に辿り着いてもドアも開けずにベッドで横たわっているだけというあり様。しかも、傍にかつての初恋の女ドロレスの幻を見ていた。

 

なんとかタクシーに乗せて、歯医者、眼科と回るが、レオは、何かにつけ過去の幻影の中に入り込んでしまう。一方、仕事を抜けてきたモリーは、父の世話を焼きながら仕事の連絡をとっていたが、とうとう、仕事をなくしてしまう。モリーは覚悟を決め、レオから離れることにする。

 

なんとか自宅に戻ったレオとモリーだが、モリーが帰ろうとすると駄々をこねるレオ。モリーは泊まることにするが、夜中にレオは街へ徘徊してしまう。警察に保護されて戻ったレオに、モリーはもう決意するしかないとレオの元を離れていく。レオの傍には幻影となったモリーの姿があった。こうして映画は終わる。

 

とにかく、過去の後悔をひたすら幻覚の中で生きるレオの物語がとにかく鬱陶しくて、さっさと死ねばいいとさえ思ってしまう。そして限界がきたモリーが去っていくラストはある意味当然の帰結で、レオに対する憐れみなど微塵も感じなかった。切なくも残酷な映画という感じの一本でした。