くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ビッグゲーム大統領と少年ハンター」

kurawan2015-08-20

どういう経緯で輸入されたのかと思うくらい、つかみどころのない映画だと思い、疑心暗鬼に見に行ったのですが、これが結構面白かった。監督はヤルマリ・ヘランダーという人です。

一昔前の娯楽映画のセオリーを踏襲した演出で、どこかノスタルジックな空気が漂います。ジョン・フランケンハイマーアメリカ映画的な色合いと言うのでしょうか。

映画は、北欧フィンランドのどこか寒々とした山脈を捉え、ドーンという感じで赤文字で「BIG GAME」と出る。どこか懐かしいクレジットショットに、なんか嬉しくなる。

誕生日を前に、一人の少年オスカリが儀式とやらで、一人山に入り狩をしに行かんとするシーン。何事も頼りないオスカリの描写の後、エアフォースワンと中に乗るアメリカ大統領のシーン。一方、山岳ツアーで山間に入ったテロリストたちが、エアフォースワンを撃ち落とす計画を準備するシーン。そして、エアフォースワンが攻撃されるという警報と、大統領たちが脱出するくだり、黒幕のボディガードのリーダーのカットと、スピーディに展開。そして、脱出して大統領のポッドをオスカリが見つけ、テロリストたちから逃げる本編へ行くが、単なるアクションに止めず、大統領を追跡するアメリ国防省での展開で、犯人たちの素性も、持って回ったこともせず、どんどん明らかにしていくのです。

一見、よくあるストーリーなのに、そこかしこに、オーソドックスなセオリーを盛り込み、ありがちな展開をありがち以上に使い切った演出が見事。

クライマックスの湖に沈んだエアフォースワンのカットも映画的な絵になっているし、爆弾のセット、大爆発、テロリストたちの死、大統領とオスカリの脱出と、手際よく処理した脚本のうまさに、もう終わったの?と思えるほど、あっという間なのです。

しかも、国防省で最初に次々と的確に判断するCIAの局員が、実はさらに栗幕と気づく副大統領が、トイレで詰め寄ると、見事に返り討ちされ、CIA局員はまんまと真相がばれずにしゃあしゃあと去っていく、というエピローグも、秀逸。
傑作と呼ぶまでは行かないまでも、このオーソドックスな巧みさに拍手したくなる映画でした。