どういう経緯で輸入されたのかと思うくらい、つかみどころのない映画だと思い、疑心暗鬼に見に行ったのですが、これが結構面白かった。監督はヤルマリ・ヘランダーという人です。
一昔前の娯楽映画のセオリーを踏襲した演出で、どこかノスタルジックな空気が漂います。ジョン・フランケンハイマーのアメリカ映画的な色合いと言うのでしょうか。
映画は、北欧フィンランドのどこか寒々とした山脈を捉え、ドーンという感じで赤文字で「BIG GAME」と出る。どこか懐かしいクレジットショットに、なんか嬉しくなる。
誕生日を前に、一人の少年オスカリが儀式とやらで、一人山に入り狩をしに行かんとするシーン。何事も頼りないオスカリの描写の後、エアフォースワンと中に乗るアメリカ大統領のシーン。一方、山岳ツアーで山間に入ったテロリストたちが、エアフォースワンを撃ち落とす計画を準備するシーン。そして、エアフォースワンが攻撃されるという警報と、大統領たちが脱出するくだり、黒幕のボディガードのリーダーのカットと、スピーディに展開。そして、脱出して大統領のポッドをオスカリが見つけ、テロリストたちから逃げる本編へ行くが、単なるアクションに止めず、大統領を追跡するアメリカ国防省での展開で、犯人たちの素性も、持って回ったこともせず、どんどん明らかにしていくのです。
一見、よくあるストーリーなのに、そこかしこに、オーソドックスなセオリーを盛り込み、ありがちな展開をありがち以上に使い切った演出が見事。
クライマックスの湖に沈んだエアフォースワンのカットも映画的な絵になっているし、爆弾のセット、大爆発、テロリストたちの死、大統領とオスカリの脱出と、手際よく処理した脚本のうまさに、もう終わったの?と思えるほど、あっという間なのです。
しかも、国防省で最初に次々と的確に判断するCIAの局員が、実はさらに栗幕と気づく副大統領が、トイレで詰め寄ると、見事に返り討ちされ、CIA局員はまんまと真相がばれずにしゃあしゃあと去っていく、というエピローグも、秀逸。
傑作と呼ぶまでは行かないまでも、このオーソドックスな巧みさに拍手したくなる映画でした。