くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」「痛くない死に方」

「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」

ベトナム戦争のアビリーン作戦で、敵に囲まれた米軍兵士を救助した空軍のピッツェンバーガーが、名誉勲章を与えられなかった真実を描いた実話を元にした作品で、非常に地味な物語ですが、キャストが往年の名優ばかりという豪華さに釣られて見に行きました。もうちょっと中心の話に力を注ぐ割合を上げればよかったのですが、全体に演出の力を振り分けたのでちょっとまとまりがなくなったのは残念。でもいい映画でした。監督はトッド・ロビンソン

 

国防省のエリートコースを進むハフマンのところに、かつてピッツェンバーガーという兵士が建てた勲功に、一旦は申請された名誉勲章の申請が却下された事件を調べるようにという命令が来る。といっても、一人の生き残りタリー軍曹が訴えてきたのを形式的に調べろということだった。

 

形だけこなして終わらせるつもりだったハフマンだが、当時の軍人たちに会い、調査するうちに、戦争の悲惨さのみならず、軍上層部の作戦に翻弄され命をなくしていった戦士たちの物語にのめり込んでいく。

 

出世の話を蹴った上で、なぜ申請書が消えたのかを調べ始めるハフマンは、今は上院議員となっているホルトにたどり着く、そしてゴルフに行っているホルトに直談判し、議会で名誉勲章の件を追及してもらうが、ライバル議員の妨害に遭う。一方、ピッツェンバーガーの父は癌で余命幾ばくもなかった。時を焦るハフマンは、マスコミを利用し、時のクリントン大統領を動かして、ついに名誉勲章を授与させることになる。授与式で集まったかつてのピッツェンバーガーの戦友たち、その家族の人々が集っての感動のラストシーンとなる。

 

演出の力の具合が均等すぎて、登場する戦友たちの個性が描ききれていないのが実に残念で、これだけの名優を殺してしまった感じになった。まあ、史実を伝えるという意味ではこれでよかったのかと思います。

 

「痛くない死に方」

これはいい映画でした。物語の組み立て、ストーリー展開のリズムが上手いので、ヘタをするとじめじめしそうな物語があっさりとユーモアを交えた仕上がりになっています。内容が内容なので手放しで好きな作品とは言えませんが、映画としていい仕上がりだったと思います。監督は高橋伴明

 

深夜、ある夫婦の寝室、携帯の呼び出し音が鳴る。出ないので、一旦切れて、固定電話がまた呼び出す。飛び起きた妻が夫に手渡す。在宅医療の医師をしている河田が電話の相手から間も無くですという連絡で飛んでいく。そんな主人に嫌気がさす妻。夫婦関係は完全に冷めていて、妻は離婚届を手渡す。そんな中、河田は、肺がんの末期癌の患者井上を担当することになる。井上の娘夫婦は献身的に必死で看病をするが、眼の前で苦しむ父の姿に疲弊していく。河田に電話をするも、河田も形式的に対応するだけで、娘は限界の中、悶え苦しむ父を看取ってしまう。ようやく駆けつけた河田に井上の娘は悪態をついてしまう。さまざまな補助がある中でこの仕事についたという河田の姿をもうちょっとしっかり描けば、後半がもっと生きたように思います。

 

落ち込んだ河田は先輩医師の長野に相談し、長野について、在宅医療の現場を勉強し始める。そして二年、今やそれなりに成長した河田は肝臓がんの患者本多を担当することになる。物語の中心はこの本多と河田のやりとりが中心となる。

 

エセ川柳でコミカルに過ごす本多に、河田も人生のいろいろを、医療のいろいろを勉強していく。やがて本多は理想的な死を迎える。河田は、井上の死後ずっと井上の墓参りを続けていた。自分が形式的な対応をしたことへの罪の意識だった。それを見つけた井上の娘は去っていく河田に深々と頭を下げる。

 

やがて、盛大に見送られて本多の葬式が執り行われる。映画はこうして終わっていくが、色々考えさせられる面もあるし、知らない知識も勉強になりました。映画としてのクオリティもなかなかですが、いろんな点で興味深い作品でした。