くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鉄砲伝来記」「虹いくたび」

kurawan2016-01-19

「鉄砲伝来記」
若尾文子アンコールの一本、監督は森一生。とにかく大映末期のゆるゆるの歴史悲恋物語。これでもかというほどにくどい展開なので、一体何時間の映画かと思うほど長く感じた。

種子島ポルトガルの船が流れ着くところから物語が始まり、その船長が持ってきた鉄砲を地元の刀鍛冶が作ることになる。その過程で、堺の商人の策略が絡み、刀鍛冶の娘、つまり若尾文子ポルトガルの船長が恋仲になるも、父の反対で、とりあえず、船長はポルトガルに帰る。

そして、鉄砲製造は成功し、織田信長が採用するくだりと、一方で娘にはポルトガル船長との間に子供ができていて、やがて、嫌気がさした刀鍛冶の父は鉄砲を作ることを断り、そんな折、ポルトガルの船長が戻ってくるが、若尾文子扮する若狭は崖から落ちて、時すでに遅し。

って、どんだけ、支離滅裂な展開かと思える映画。木から落ちかけた子供を助けに行った若狭が、足を踏み外し崖から落ちるに至っては、さすがに、もういいでしょうと思ってしまう。せっかくポルトガルから帰ってきたのだから、ハッピーエンドにしようよと訴えたくなる映画だった。これも古き日本映画の息吹ですね。脚本も演出も、平凡な一本でした。


「虹いくたび」
川端康成原作の映画というのははっきりわかるのですが、その微妙さが、逆に品のなさだけが表立ったような仕上がりになっている。つまり下品な映画なのです。川端康成の美学が再現されていない。監督は島耕二です。

物語は、母親が違う三人の娘の物語、しかも、一番上の娘には、戦時中の恋人との辛い思い出があり、今も、学生のような若い男性に慕われ、しかも子供まで身ごもっている。さらに、母が自殺したという過去もある。二番目の娘は、どちらかというと自由奔放で明るい。三番目の娘は京都にいて、上二人の娘とは疎遠である。どうやらお妾さんの娘であるかのような設定である。

京都と東京を行ったり来たりのストーリー展開で、つかず離れず、どこか俗っぽい演出で流れていくのだが、結局、ラストは三人の娘が一堂に集まって、父とも仲良くなって終わる。

合間合間のシーンの演出意図が見えないというのもこの作品の特徴で、川端康成の漂うような美学を描こうとして、描ききれず、もがくままに終わったという出来栄えでした。