「古都」(Yuki Saito監督版)
8年間、ハリウッドで勉強してきたという鳴り物入りの監督の作品ですが、なんともカメラなどスタッフとの息があっていないのか、妙に良くない。さらに、川端康成の原作というが、原作のその後の物語であり、しかも、川端康成の空気が全く伝わってこないのは、感性の不足か、映像センスがないのか、いったいこの監督何者だという感じである。
映画は、京都の老舗の呉服店の店主千重子を中心に描かれる。娘の舞は店の後を継ぐことに悩んでいる。一方北山杉の里に住む双子の妹苗子の話も描かれるが、こちらが非常に雑に描かれていて、どうも盛り上がらない。彼女にはフランスで絵を勉強している結衣が居る。彼女もまた、スランプ状態である。
二組の親子の話が交互に描かれるがまま、京都の侘び寂びの世界が映像から漂ってこないし、川端康成の情緒的なムードも画面に映し出されない。それなら完全に、現代版にして中途半端に京都にこだわらなければよかったのではないかという感じである。
習字の先生に請われて、フランスに同行することになった舞、教会へ入って行くとそこに結衣が居る。お互い知らないのだが、ただ目を合わせて見つめあってエンディング。
凡作ではないが、普通の作品に一歩足りない。テレビドラマでもいいかもしれないレベルでした。
「海賊とよばれた男」
さすがに面白い。山崎貴監督、百田直樹原作の実話ものである。出光興産の創始者の話を、偉人伝のごとき正当な描き方で見せて行く。繰り返されるフラッシュバック映像で、主人公国岡鐵三の若き日と現代、つまり第二次大戦直後の世界を描いて行く。得意なCGシーンもふんだんに取り入れ、さらにリアリティをました画面は、まるで、主人公の時代に放り込まれたような迫力、そして、グイグイと前進のみで生き抜いて行く国岡鐵三の若きバイタリティに圧倒されてエンディングまで引き込まれてしまいました。
第二次大戦末期、日本が大空襲を受けている特撮場面から映画が始まる。迎え撃つべく、迎撃機を飛ばそうとする乗組員たちの前に、燃料不足を訴える工員たちの声。そしてタイトル。
焼けて行く市街を眺める国岡鐵三のカットから物語は本編に入って行く。
あとは、若き日の国岡鐵三の破天荒な行動力とアイデアの描写、立ち上げた会社が、その行動力でどんどん大きくなり、やがて第二次大戦が起こり、日本の大手メジャー会社との丁々発止の展開から、やがて戦後、GHQを巻き込んで、どんどん成長して行く。
クライマックスは、アメリカ大手の石油会社からの石油輸入を拒否され、瀕死の状態になった国岡鐵三らが、イランに向けて、死を覚悟した輸入作戦に出る。そして、イギリス海軍のフリゲート艦との一騎打ちから、最後は国岡鐵三の死の床でエンディング。
定石通りのストーリー展開ですが、非常にドラマティックな展開になっているし、映画として面白い。しかも岡田准一の熱演もあって、登場人物にどんどん引き込まれて行く魅力もある。商業映画としては一級品の完成度になっている。本当に考えさせられ、勇気をもらえる映画でした。良かったです。