くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヘイトフル・エイト」「女が眠る時」「特捜部Q キジ殺し」

kurawan2016-02-29

ヘイトフル・エイト
クエンティン・タランティーノが描く西部劇、懐かしいスタイルで描いた作品だが、その物語はミステリーである。しかも、少々長い。確かに入り組んだ展開と、得意の流血シーンがタランティーノらしいのだが、いかんせん、長いのだ。

映画は昔懐かしいワイドサイズの70ミリの横長の画面に広がる雪原のカットから始まる。レッドブロックという町に向かう最後の駅馬車、背後から吹雪が迫っている。その駅馬車の前に一人の黒人ウォーレス少佐が立ちはだかる。彼は賞金稼ぎで、獲物を運ぶために載せてくれという。駅馬車には、お尋ね者の人殺し女デイジーを手錠でつないで連れて行くジョンが乗っている。

とりあえず乗り込んだウォーレス少佐たちの前に、レッドブロックで新任の保安官になるというクリスが乗ってくる。

として、途中のミニーの服飾店にたどり着く。ところが店に入ると男たち四人がいて、ミニーたちがいない。とりあえずウォーレス少佐達はその店に入るのだが、どうもおかしい。ミニーたちがいた気配がいたるところにある。ウォーレス少佐は実はミニーたちは先にいた男たちに殺されたのだろうと推理、次々撃ち殺すが、床下にいた男にウォーレス少佐は股間を撃たれる。

そして、明かされるのは、実はデイジーを助けるために待ち伏せした弟たち一味だったのだ。そして、誰も彼もが撃たれ殺されてエンディングを迎えるのだが、台詞の応酬の中に二転三転するストーリー展開と、真実が嘘に変わる面白さを織り交ぜているのが見所なのだが、とにかく三時間近い長尺が長い。

音楽にエンニオ・モリコーネを起用し、特撮にジョン・ダイクストラを配し、70ミリフィルム撮影というこだわりで美しい画面を作り出している。

台詞のリズム感、画面切り替えの面白さは、さすがだが、もう少し畳み掛けるテンポがあればもっと面白かったような気がするのですが、いかがだろう。


「女が眠る時」
観念的なストーリーで、幻想的な物語であるが、さすがにウェイン・ワン監督の感性は確かなものである。斜めに動かすカメラワークを多用し、主人公をじっと捉える視点が、現実と幻想の狭間を見事に描いていく。その不安定さに後半は酔いしれてしまいました。

映画はホテルのプールサイド、作家であるが、最近新作が途絶えている健二と編集者の妻綾が座っている。綾の促す方を健二がみると、中年の男と若い女性が親しげに話している。親子でもなくて恋人というわけでもない不思議な姿に興味を持った健二は、ある夜、佐原と呼ばれる男と会話を交わす。佐原は連れの女性美樹を幼い頃からビデオに撮り続けているのだという。しかも眠る姿だけ。

健二はことあるごとに二人の行動に興味を示し、部屋に勝手に入ったり、彼らが写っている美樹の少女時代の写真を見つけたりする。一方で妻の綾との関係がやや疎遠になり、さらに、余計な邪念さえ健二の心に生まれてくる。

ある日、美樹が行方不明になる。警察が捜査を始めるも、佐原という存在自体が現実にいたのかどうかさえ定かでなくなってくる健二。

画面には、佐原と美樹がなにやら諍いを起こしているかのショットや、佐原が美樹を殺そうとしているなどの会話が挿入される。さらに、終盤、カメラが斜めに変化したりしながらの独特のカメラワークで語られ、物語は、まるで健二の頭の中の世界なのではないかとさえ見てくる。

やがて、妻は妊娠、新作も書きあがった健二たちがレストランで食事をしていると、店の中に佐原の姿を見かけた健二が後を追いかける。交差点で振り返った佐原は健二に微笑む。

まるで、小説の新作の構想に行き詰まった健二の頭の中に住み着いた幻影としての佐原と美樹の姿だったのではないかと思ってしまうラストシーンである。

凡作ではないし、ある意味、ちょっと面白い映画だった。こういう偏執的な人物というと必ず西島秀俊ではないかとさえ思ってしまう典型的な配役ですが、見て損のない一本でした。


「特捜部Qキジ殺し」
シリーズ第2作目、北欧映画らしい、ちょっと暗いムードの中でミステリーが展開する。

映画が始まると、いかにも殺人が行われているという緑の映像、続いてタイトル。過去の未解決事件を扱う特捜部Qの描写から、主人公カールのところに一人の老人が、近づいてきて、ある事件を再捜査してくれという。しかしカールは無視したところその老人は二時間後に自殺。この老人は元警部で息子と娘を殺された過去があり、その事件の再捜査を依頼してきたのである。

こうして物語がスタート、カール達が事件を追い詰めていく過程が本編で、独特の陰影で描かれるミステリーがいい雰囲気を生み出してきます。

犯人は経済界の大物になっていて、その犯人が学生時代に起こした事件を敏腕の弁護士が解決したことが明らかになる。一方当時共犯で主犯の恋人だった女性が事件の目撃者で、彼女を確保するという展開と、この女性が恋人に受けた仕打ちに対する復讐の物語が並行して展開。

最後は、この女性がかつての恋人を焼き殺し、自分も焼身自殺して大団円である。

まぁ、ある意味普通の刑事ドラマである。それが北欧という空気が独特の色合いを生み出すのが面白い一本です。前作同様、それなりに面白かった。