「珍遊記」
ギャグ漫画の実写化なので、ぶっ飛んで遊んでくれればいいのである。オープニングから前半は、それなりに楽しく見せてくれるのだが、途中からどんどんテンポが悪くなってくる。脚本にキレがないのである。監督は山口雄大。
中国の伝記「西遊記」とは全く関係がないといテロップから、あとはバカバカしい展開で主人公が登場、安っぽいCGを使った特撮と、ノリだけの台詞の応酬、そして、下品なカットが満載でストーリーが始まる。
孫悟空をパロった山田太郎が玄奘法師と天竺へと旅立ち、とある村で大暴れするくだりまでが描かれる。とにかく、後半が良くない。ノリと下品なギャグで突っ走るなら突っ走ればいいのだが、そんな毒が後半はほとんど出てこない。しかも、バトルシーンも普通、セクシー度も中途半端、結局、軽く楽しむにしてもやたら長く感じてしまいました。
駄作とは言いませんが、一歩手前でした。残念。
「犬神家の一族」(1976年版)
角川映画流行のきっかけを作った市川崑監督による旧作の方をようやくスクリーンで見ることができました。ずっとワイドスクリーンの映画だと思っていたのですが、なんとスタンダードサイズでした。
犬神家の当主の死の床の場面から始まり、市川崑得意の細かいカット編集からタイトル、金田一耕助の登場と、とにかくストーリー展開が実にスピーディ。しかも、一昔前の那須の街並み、瓦屋根、いたるところに血を思わせる赤の小道具など、市川崑の映像へのこだわりも見られる。さすがに傑作である。
物語の本筋は横溝正史の原作があるので大差ないのだが、短い展開で進む二時間半は見事と呼ぶほかないストーリーテリングである。
そして、素晴らしいのはラストの処理。誰もかれもが金田一耕助を駅に見送りに行くというのを巧みにかわしての駅のシーンでのエンディング。このシーンで一気にこの物語が非現実の世界だと観客に思わせ、映画の醍醐味を植え付けるのである。
遺作になったリメイク版にも、オリジナル版の映像処理のシーンが使われているが、やはり、役者の貫禄も含め、こちらが名作と言わざるをえません。