くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「欲望のあいまいな対象」「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」「アウトサイダー」(タル・ベーラ監督版)

「欲望のあいまいな対象」

一人の女に翻弄されていく男の姿を描いて、男が女に持つ欲望をアイロニー溢れるタッチで描いていく一品で、コミカルな一方で非常に毒のある展開が面白い。しかも背後に、テロなど不安定な社会情勢を織り混ぜ、一人の女性を二人の女優が演じるというシュールさも面白かった。ルイス・ブニュエル監督の遺作。

 

一軒の家、部屋の中が荒らされていて、執事が中を片付けると、下着や血のついた布などが出てくるが、主人のマチューは心配ないと言う。そしてマチューは旅行社に行ってパリ行きのチケットを買う場面から映画は幕を開ける。列車に乗り込んだマチューは、同じ席に、近所の母と娘、判事、心理学者の教授が乗り込んでくる。

 

まもなくして一人の女が列車のところにくるが、マチューはバケツの水を浴びせる。女の名はコンチータと言い、彼女もまた列車に乗り込む。マチューは同席の人たちに、何故水をかけたのか、そしてあの女とのこれまでの物語を語り始める。

 

マチューの家に新しくきたメイドのコンチータにマチューは一眼で惹かれてしまう。そして夢中になって彼女を追うが、翌日、コンチータは仕事を辞めて行方をくらます。スイスに行ったマチューはそこでコンチータと再会し、さらにコンチータの住むパリの家にもいくようになる。

 

コンチータは二言目にはマチューを愛しているのだと言うが、いざとなると、最後の一線を越えさせてくれない。しかも、マチューを焦らすような行動ばかり繰り返す。次第にいらつくマチューだがコンチータを忘れられず、とうとうコンチータに一軒の家を買ってやるが、そこでも、コンチータはマチューの目の前で若い男と愛し合う。とうとう切れたマチューは家に帰る。

 

庭でくつろいでいると、コンチータが現れる。マチューはコンチータを部屋に引っ張り入れ、必死で謝るコンチータを殴る蹴るの暴行をする。冒頭の荒れた部屋ができる場面である。そして列車の中、話終えたマチューの前にバケツを持ったコンチータが現れる、マチューに水をかける。二人は列車を降り、駅を出る。そうして映画は終わっていく。

 

一見ブラックユーモアのように繰り返される展開がシュールな中にとっても面白い。個性の溢れる一本でした。

 

ブルジョワジーの秘かな愉しみ

アイロニーの塊が繰り返され、夢と現実を交錯させて、ブルジョワジーをこけ下ろしていくような辛辣なメッセージが見え隠れするオリジナリティ溢れる傑作。これこそブニュエルの世界と言わんばかりの映画でした。監督はルイス・ブニュエル

 

一軒の家にミランダ国の大使であるラファエルとその妻、デブノ夫妻がやってくる。ところが、招待したのは明日だと言われ、仕方なく外食しようと出かけるが、デノブ行きつけのレストランはオーナーが変わったと言う。とりあえず入ったものの、店の主人が先ほど亡くなり、遺体があるので、ラファエルたちは外に出る。こうして物語は幕を開ける。

 

あとは、晩餐に招かれては突然邪魔が入っていつまで経っても食事が始まらない不条理さを繰り返しながら、夢の世界やら、昔話が語られたり、シュールな物語が繰り返される。そしてようやく食事にありついたかと思いきや、銃を持った男たちが飛び込んできて全員殺されるが、それも夢だった。いつまでも食にありつけず、あてもなく歩くラファエルたちの姿で映画は終わる。

 

幼い頃に両親を殺した軍人の話や、テロを企む女の話、麻薬取引で大金を手にする話、いつも同じ時間に現れる巡査の亡霊、6年前に死んだ亡霊を見る話、など、幻覚か現実か混濁するようなエピソードが次々と挿入され、しかも、晩餐の場がいつまでも前に進まない不条理の連続。これこそルイス・ブニュエルらしさ爆発の不可思議な映像世界です。楽しい映画でした。

 

アウトサイダー

なんとも退屈な映画でした。クローズアップのフィックスの画面で延々と語るまるでドキュメンタリーのような映像だけで続いていく物語にため息が出ます。しんどかった。監督はタル・ベーラ

 

精神病院の病室でバイオリンを弾く看護師のアンドラーシュの場面から映画は幕を開ける。日頃の素行が悪いということで首になり、転職の必要がでてくる。一方、前妻アンナとの間に子供がいて養育費を払わなければならない。そんな彼は新しい恋人カタができて結婚するが、生活は苦しいままで、そんな生活をダラダラと続けるアンドラーシュに妻のカタは辟易としてくる。

 

そんな彼に徴兵の通知が来る。子供が欲しいと言うカタの言葉も聞く耳持たず、話していたレストランを出ようと言うアンドラーシュ。そのレストランでパーティをしていた一団の場面から、演奏をする楽団の場面で映画は終わっていく。

 

要するに社会に適応できない一人のミュージシャンの物語なのだろうが、とにかく退屈極まる映画でした。