「拾った女」
監督名から独特の映像かと思ったが、意外に普通のフィルムノワールでした。時代色が濃厚なサスペンス映画というタッチの一本。監督はサミュエル・フラー。
地下鉄の映像から映画が始まる。一人の女、それを見つめる二人の男、その女に一人の男スキップが近づき、カバンから財布を抜き取る。監視していた男はすぐ追いかけるが、逃げられる。
早速、警察ではスリを特定するために、タレコミ屋の女モーを呼ぶ。その手口で見事にスキップの仕業と見ぬいたモーは金をもらって居場所を警察に教える。
一方スキップは女からすった財布の中に一枚のフィルムを見つける。そして彼の周りに執拗にすったものを手に入れようとする人々の影が見え始め、そのフィルムの値打ちが見えて来る。そしてスキップに迫って来たのはすられた女キャンディだった。
どうやらこのフィルムはスパイがその親玉に渡すためにキャンディを利用したらしく、そのスパイであるジョーイも組織からせっつかれていた。
そして、ジョーイはキャンディからモーの居場所を聞き、モーが口を割らないので殺してしまう。
キャンディはスキップからフィルムを奪い警察に持ち込み、それをえさにジョーイに近づくが、一コマ外されていて、その一コマのためにジョーイがキャンディを襲いすんでのところで警察が駆けつける。なんとか逃げたジョーイは結局捕まり、映画はスキップとキャンディのハッピーエンドで幕を閉じる。
まさにプログラムピクチャーという一本で、スリの話にスリと女の恋物語、さらに東西冷戦の絡んだスパイ合戦が組み合わされて行くが、全体が整理されているようで混沌としている。単純に展開だけを追っていって楽しむ映画で、難しいことを考える作品ではない娯楽映画という感じでした。
「醜聞殺人事件」
リタ・ヘイワースの映画、彼女を見せるのみの映画というイメージで、お話は、どこか抜けた展開。これもまた東西冷戦を扱っている物語ですが、時代色ですね。監督はヴィンセント・シャーマン。
南米トリニダード、アメリカから歌手としてやって来た主人公クリスの舞台シーンから映画が幕を開ける。そして、夫が殺されるところからが本編。どうやら、殺人事件らしく、そこへアメリカから夫の兄がやって来て、事の真相をクリスと一緒に暴いていこうとする。
どうやらクリスの夫は何やら秘密の軍事兵器に関わっていて、大金持ちの男で、国際的なスパイ組織の男に近づいて行く。
あとは、ハラハラドキドキになりそうだが、途中でリタ・ヘイワースの歌うシーンが延々と流れたり、明らかにストーリーよりも彼女という感じの映像作りがなされています。でも、その空気感がなんともノスタルジックで懐かしい映画黄金期を感じさせるのが素敵。
結局ラストは国際スパイ団のボスも死んでしまい、ハッピーエンド。これもまたプログラムうピクチャーの一本、楽しかったです。